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ep.6
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今日は久しぶりに青空が見える。
「いい天気だなぁ」
こっちの気候は晴れるとカラッとした心地よい風が吹き、気温が上がっても過ごしやすい。
リビングの窓を開け空気の入れ替えをしようかと思っていた時、アダムが起きてきた。
「あ、アダムおはよう」
「おはよう、なつ…Oh,Jesus.」
アダムは窓の外を見て信じられないものを見たというような顔をしている。
「ど、どうしたの?」
「大変だ!夏樹、今から出かけるぞ。メインストリートパークへ行くんだ。コーヒーなんか飲んでる時間はない」
「え、え、パーク?公園?なんで」
「いいか夏樹、天気が良いと太陽が出る。太陽の光を浴びると人間の身体はビタミンDを作る事ができるんだ」
「うん、そうだね…?」
「人間の身体は自然にビタミンDをつくる事ができない。足りないと骨折しやすくなったりする。だからイギリス人は太陽が出てきたら仕事を止めて太陽光を浴びにいく。みんな太陽を求めているんだ」
「うん、うん?」
ビタミンDについて捲し立てられたが、自他共に認める出不精なアダムをここまで動かす事ができる太陽の力は偉大すぎる。
あっという間に準備をしたアダムに付いてメインストリートパークへ向かった。
「わぁ、街にこんなに人が居るの初めて見たかも…この辺りに人って住んでたんだ…」
「みんな太陽光を浴びにきているんだ」
メインストリートパークは日本の公園とは全く異なり、どちらかと言うと広場に近く、だだっ広い芝生の真横に雑木林、獣道、野生のリスがいる。
昼間でも肌寒くなってきているのに半袖短パンで寝転がったり、ウォーキングしたりしている人が多い。
犬を連れている人もいて、大小様々なもこもこの犬達が走り回っていて可愛い。
主人を追いかけてすぐ横を歩くふわふわの犬に思わず笑みが溢れた。
「気持ちいいな」
「そうだね」
相変わらずアダムは無口だけど、この時間が心地良い。
「あ、リスだ」
最初こそリスやうさぎを見かけて写真を撮りまくっていたが、ダウンタウンから離れた場所は野生動物が普通に居る。
狐が普通にゴミを荒らしているのを見た事があるし、ここからもう少し田舎の方へ行けばグリズリーが人里へ降りて畑を荒らしたりする。
「夏樹、もしラクーンや狐を見つけても可愛いからって近寄ってはだめだよ」
「ラクーン?ってアライグマだっけ」
「俺の父親が子供の頃飼っていた子犬を食べられた事がある。あいつらは肉食なんだ。人間も襲う」
「真顔で言うの怖いって…」
少し散歩をして、途中で買ったコーヒーを飲みながら芝生に座った。
「僕、こっちに来てこうしてどこか出かけたの初めてかもしれない」
気づけばずっとイライラして、部屋に引きこもるか大学に行くだけだった。
天気の悪さも相まって余計に鬱屈としていた。
「ビックベンやバッキンガム宮殿は?」
「子供の頃行った事あるし」
「湖水地方は?」
「多分行ったと思う。…もし行ってなくても天気も悪いし遠出する気になれなくて」
久しぶりにこんなに伸び伸びと休日を過ごした気がする。
「ビタミンDが足りてないんだ。家にビタミンのタブレットがあるから摂るといいよ。オメガ3,6,9もある」
「あははっ!何だよそれ!…はは、あれ?」
夏樹の瞳からポロポロと涙が零れ落ちた。
「ごめん、なんでだろ…涙、止まんなくて…」
上手く誤魔化していたつもりだったけど、自分は思っていたより精神的に参っていたようだ。
想像していたような生活ができなくて、街中では一枚の紙で隔たれたような差別の目があって、心から安心できる場所なんてない。
じわじわと精神が削られて、それでも頼れる人はいないからその不安は隠すけど消えた訳じゃない。
アダムが抱き寄せ肩を貸してくれる。
「我慢するより、泣いた方がスッキリするっていうから、たくさん泣いて、水を飲んで、また泣けばいい」
アダムがぎこちなく、だけど優しく夏樹の背中を撫でるから余計に感情が抑えきれなくて嗚咽を漏らして泣き出した。
「うっ…ひっく…うぅ…」
夏樹が泣き終わるまでアダムは優しく撫でてくれた。
ひとしきり泣いたら落ち着いてきたしスッキリした。
小腹も減った気がするし、空も曇りつつある。
「はぁ…目も腫れてぶっさいくだろうからあんま見ないで」
アダムが頬に手を添え、親指で涙を拭われる。
「…こんなに綺麗な涙、見た事ない」
アダムの唇が瞼に触れた。
「……!ごめん」
「あ…うん」
「……」
「……ねえ」
今度は夏樹がアダムの口にキスをした。
肩に手を添え、分厚くて弾力のある唇を啄むようにすると、アダムはカチコチと固まってしまった。
「外でするのマズかった?」
「いや………」
「……」
「帰ろう」
「そうだね…」
女性が苦手だって言うからもしかしたら?と思ったけど童貞にはまだ早かったか…
帰り道、アダムは目を合わせてくれなかった。
「いい天気だなぁ」
こっちの気候は晴れるとカラッとした心地よい風が吹き、気温が上がっても過ごしやすい。
リビングの窓を開け空気の入れ替えをしようかと思っていた時、アダムが起きてきた。
「あ、アダムおはよう」
「おはよう、なつ…Oh,Jesus.」
アダムは窓の外を見て信じられないものを見たというような顔をしている。
「ど、どうしたの?」
「大変だ!夏樹、今から出かけるぞ。メインストリートパークへ行くんだ。コーヒーなんか飲んでる時間はない」
「え、え、パーク?公園?なんで」
「いいか夏樹、天気が良いと太陽が出る。太陽の光を浴びると人間の身体はビタミンDを作る事ができるんだ」
「うん、そうだね…?」
「人間の身体は自然にビタミンDをつくる事ができない。足りないと骨折しやすくなったりする。だからイギリス人は太陽が出てきたら仕事を止めて太陽光を浴びにいく。みんな太陽を求めているんだ」
「うん、うん?」
ビタミンDについて捲し立てられたが、自他共に認める出不精なアダムをここまで動かす事ができる太陽の力は偉大すぎる。
あっという間に準備をしたアダムに付いてメインストリートパークへ向かった。
「わぁ、街にこんなに人が居るの初めて見たかも…この辺りに人って住んでたんだ…」
「みんな太陽光を浴びにきているんだ」
メインストリートパークは日本の公園とは全く異なり、どちらかと言うと広場に近く、だだっ広い芝生の真横に雑木林、獣道、野生のリスがいる。
昼間でも肌寒くなってきているのに半袖短パンで寝転がったり、ウォーキングしたりしている人が多い。
犬を連れている人もいて、大小様々なもこもこの犬達が走り回っていて可愛い。
主人を追いかけてすぐ横を歩くふわふわの犬に思わず笑みが溢れた。
「気持ちいいな」
「そうだね」
相変わらずアダムは無口だけど、この時間が心地良い。
「あ、リスだ」
最初こそリスやうさぎを見かけて写真を撮りまくっていたが、ダウンタウンから離れた場所は野生動物が普通に居る。
狐が普通にゴミを荒らしているのを見た事があるし、ここからもう少し田舎の方へ行けばグリズリーが人里へ降りて畑を荒らしたりする。
「夏樹、もしラクーンや狐を見つけても可愛いからって近寄ってはだめだよ」
「ラクーン?ってアライグマだっけ」
「俺の父親が子供の頃飼っていた子犬を食べられた事がある。あいつらは肉食なんだ。人間も襲う」
「真顔で言うの怖いって…」
少し散歩をして、途中で買ったコーヒーを飲みながら芝生に座った。
「僕、こっちに来てこうしてどこか出かけたの初めてかもしれない」
気づけばずっとイライラして、部屋に引きこもるか大学に行くだけだった。
天気の悪さも相まって余計に鬱屈としていた。
「ビックベンやバッキンガム宮殿は?」
「子供の頃行った事あるし」
「湖水地方は?」
「多分行ったと思う。…もし行ってなくても天気も悪いし遠出する気になれなくて」
久しぶりにこんなに伸び伸びと休日を過ごした気がする。
「ビタミンDが足りてないんだ。家にビタミンのタブレットがあるから摂るといいよ。オメガ3,6,9もある」
「あははっ!何だよそれ!…はは、あれ?」
夏樹の瞳からポロポロと涙が零れ落ちた。
「ごめん、なんでだろ…涙、止まんなくて…」
上手く誤魔化していたつもりだったけど、自分は思っていたより精神的に参っていたようだ。
想像していたような生活ができなくて、街中では一枚の紙で隔たれたような差別の目があって、心から安心できる場所なんてない。
じわじわと精神が削られて、それでも頼れる人はいないからその不安は隠すけど消えた訳じゃない。
アダムが抱き寄せ肩を貸してくれる。
「我慢するより、泣いた方がスッキリするっていうから、たくさん泣いて、水を飲んで、また泣けばいい」
アダムがぎこちなく、だけど優しく夏樹の背中を撫でるから余計に感情が抑えきれなくて嗚咽を漏らして泣き出した。
「うっ…ひっく…うぅ…」
夏樹が泣き終わるまでアダムは優しく撫でてくれた。
ひとしきり泣いたら落ち着いてきたしスッキリした。
小腹も減った気がするし、空も曇りつつある。
「はぁ…目も腫れてぶっさいくだろうからあんま見ないで」
アダムが頬に手を添え、親指で涙を拭われる。
「…こんなに綺麗な涙、見た事ない」
アダムの唇が瞼に触れた。
「……!ごめん」
「あ…うん」
「……」
「……ねえ」
今度は夏樹がアダムの口にキスをした。
肩に手を添え、分厚くて弾力のある唇を啄むようにすると、アダムはカチコチと固まってしまった。
「外でするのマズかった?」
「いや………」
「……」
「帰ろう」
「そうだね…」
女性が苦手だって言うからもしかしたら?と思ったけど童貞にはまだ早かったか…
帰り道、アダムは目を合わせてくれなかった。
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