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初めての茶道②
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「では早速ですが、私が点ててみますね。皆さんが良くイメージされるお抹茶は薄茶と言い、飲みやすい濃さのものになります。」
桐生がお抹茶茶碗を乗せたお盆を移動させた。
「本来なら夏の今の時期は平茶碗が良いんですが、お椀型の方が点てやすいんです…とすみません、また話が長くなってしまいました。川瀬さんって真剣に聞いてくれるからつい色々教えたくなってしまって…」
「いえ!どんどん教えてください!!とても興味深いですし聞いていて楽しいです。僕、仕事でもこの仕事は何のためにするのかって分かった方がモチベーション上がるタイプで…って今は仕事関係ないですよね。」
「川瀬さんって上司に可愛がられてそう。教えるの楽しいんじゃないかな…じゃあ、ここからは一度最後まで見ていてください。」
桐生のお点前はそれはそれは素晴らしく美しいものだった…と思う。
多分何かすごい技術があるんだろうけどよく分からなかった。が自分の本音であり感想だ。
次に自分がやる時に少しでも覚えていようと瞬きも忘れて見つめていたのだが、あっという間に次の工程へ進み目の前にお抹茶茶碗が勧められていた。
「今回は、マナーを忘れて飲んでみてください。どうぞ。」
「いただきます…。」
差し出されたのはベージュのお椀に鞠の絵が描かれた器だった。
暖かいお椀に口をつける。
「…!!」
ふんわりきめ細やかな泡の乗った、初めて飲むお抹茶は全く苦味がなくまろやかで甘ささえ感じた。
「お抹茶ってこんなに美味しいんだ…」
思わず言葉にする。
抹茶は苦くてまずいイメージだったのだが、あっという間に飲み干してしまった。
「すごい…すごく美味しかったです!!えっと…こう言う時って結構なお点前で…って言うんでしたっけ?」
「そうですね、あとは他の流派は分かりませんが、結構なお服加減でございます。とかお服具合って言いますね。」
「そうなんだ…じゃあ結構なお服加減でございます!」
その言葉に桐生は目を細める。
「では次は川瀬さんの番ですね。」
その言葉に汗ばんだ手を握る。
「最初なんですから、完璧にやろうとしなくて大丈夫ですよ。まずは楽しんでいただければ。」
そうは言っても憧れている人の前で情けない姿を見せたくないんだよなぁ…。
そう思いながら玲はグッと腹に力を入れた。
ーーーー
お盆の上にずらりと並べられた茶器は壮観だった。
それぞれの名称や置く位置の決まりがあるのだが、一回で全て覚えるなんて難しいから先ずは感覚で。何度も聞いてください。と桐生に言われる。
「本当は帛紗で棗や茶杓を清めるんですが今回は省きましょう。」
さっき桐生が点てている時に行っていた意味があるかよく分からない、帛紗で拭く行為だ。
これがマナーなのかと突っ込み出したらきりがないしな。
カトラリーだって使おうと思えば全ての料理は一組で食べる事ができるわけだし…。
「まず茶碗にお湯を入れて器を温めてください。茶筅も一緒に少し回してお湯はこの建水に捨ててください。」
「はい。」
「水気を布で軽く拭いたら、棗の蓋を開けてください。ここにお抹茶の粉が入っています。あ、蓋は裏返しに置いたりせずお盆の縁に立てかけるようにしてください。」
「はい。」
「茶杓でつの字を書くようにお抹茶を掬ってください。思ったより多めで、あ。もう少しいいですよ…はい、それくらいです。これを二杯分入れたら茶杓で縁を軽くトンとしてください。」
「えっ、トン?…はい。」
「ではいよいよお抹茶を点てていただきますね。お湯は理想は50ccくらいでいいですが目分量で大丈夫ですよ」
「はい……!」
言われるがままだ。自分が何をしているのかよく分からない。だがようやくお湯を入れ、点てる所まで来た。
少しワクワクする。
「私は川の字でと習いましたがやりやすい方法で大丈夫です。力まず手首のスナップを意識してください。」
先程見た桐生をイメージして点ててみる。しかし…
「なんか…全然泡立たないです。」
使っているのは同じお抹茶とお湯のはずなのに緑の液体が揺れるだけで全く美味しそうに感じない。
「泡はそんなに気にしなくていいんですが…もう少し手首のスナップを早くしてみましょう。おおぶくになったら茶筅の先で泡を潰すようにしてください。」
結局最後まであまり泡立たないお抹茶が出来上がった。
▼▼▼▼▼▼
帛紗:和柄の布みたいなやつ。ハンカチ代わりと考えたら分かりやすい。
古帛紗:帛紗より分厚めの和柄の布。器を運ぶ時に使っていました。最近ではコースターに使う人もいるらしい。
わの向き:二つ折りにして折った側の事
茶筅:お抹茶を点てるのに使うあれ
棗:お抹茶ケース
茶杓:お抹茶を掬う耳かきみたいな形の棒
桐生がお抹茶茶碗を乗せたお盆を移動させた。
「本来なら夏の今の時期は平茶碗が良いんですが、お椀型の方が点てやすいんです…とすみません、また話が長くなってしまいました。川瀬さんって真剣に聞いてくれるからつい色々教えたくなってしまって…」
「いえ!どんどん教えてください!!とても興味深いですし聞いていて楽しいです。僕、仕事でもこの仕事は何のためにするのかって分かった方がモチベーション上がるタイプで…って今は仕事関係ないですよね。」
「川瀬さんって上司に可愛がられてそう。教えるの楽しいんじゃないかな…じゃあ、ここからは一度最後まで見ていてください。」
桐生のお点前はそれはそれは素晴らしく美しいものだった…と思う。
多分何かすごい技術があるんだろうけどよく分からなかった。が自分の本音であり感想だ。
次に自分がやる時に少しでも覚えていようと瞬きも忘れて見つめていたのだが、あっという間に次の工程へ進み目の前にお抹茶茶碗が勧められていた。
「今回は、マナーを忘れて飲んでみてください。どうぞ。」
「いただきます…。」
差し出されたのはベージュのお椀に鞠の絵が描かれた器だった。
暖かいお椀に口をつける。
「…!!」
ふんわりきめ細やかな泡の乗った、初めて飲むお抹茶は全く苦味がなくまろやかで甘ささえ感じた。
「お抹茶ってこんなに美味しいんだ…」
思わず言葉にする。
抹茶は苦くてまずいイメージだったのだが、あっという間に飲み干してしまった。
「すごい…すごく美味しかったです!!えっと…こう言う時って結構なお点前で…って言うんでしたっけ?」
「そうですね、あとは他の流派は分かりませんが、結構なお服加減でございます。とかお服具合って言いますね。」
「そうなんだ…じゃあ結構なお服加減でございます!」
その言葉に桐生は目を細める。
「では次は川瀬さんの番ですね。」
その言葉に汗ばんだ手を握る。
「最初なんですから、完璧にやろうとしなくて大丈夫ですよ。まずは楽しんでいただければ。」
そうは言っても憧れている人の前で情けない姿を見せたくないんだよなぁ…。
そう思いながら玲はグッと腹に力を入れた。
ーーーー
お盆の上にずらりと並べられた茶器は壮観だった。
それぞれの名称や置く位置の決まりがあるのだが、一回で全て覚えるなんて難しいから先ずは感覚で。何度も聞いてください。と桐生に言われる。
「本当は帛紗で棗や茶杓を清めるんですが今回は省きましょう。」
さっき桐生が点てている時に行っていた意味があるかよく分からない、帛紗で拭く行為だ。
これがマナーなのかと突っ込み出したらきりがないしな。
カトラリーだって使おうと思えば全ての料理は一組で食べる事ができるわけだし…。
「まず茶碗にお湯を入れて器を温めてください。茶筅も一緒に少し回してお湯はこの建水に捨ててください。」
「はい。」
「水気を布で軽く拭いたら、棗の蓋を開けてください。ここにお抹茶の粉が入っています。あ、蓋は裏返しに置いたりせずお盆の縁に立てかけるようにしてください。」
「はい。」
「茶杓でつの字を書くようにお抹茶を掬ってください。思ったより多めで、あ。もう少しいいですよ…はい、それくらいです。これを二杯分入れたら茶杓で縁を軽くトンとしてください。」
「えっ、トン?…はい。」
「ではいよいよお抹茶を点てていただきますね。お湯は理想は50ccくらいでいいですが目分量で大丈夫ですよ」
「はい……!」
言われるがままだ。自分が何をしているのかよく分からない。だがようやくお湯を入れ、点てる所まで来た。
少しワクワクする。
「私は川の字でと習いましたがやりやすい方法で大丈夫です。力まず手首のスナップを意識してください。」
先程見た桐生をイメージして点ててみる。しかし…
「なんか…全然泡立たないです。」
使っているのは同じお抹茶とお湯のはずなのに緑の液体が揺れるだけで全く美味しそうに感じない。
「泡はそんなに気にしなくていいんですが…もう少し手首のスナップを早くしてみましょう。おおぶくになったら茶筅の先で泡を潰すようにしてください。」
結局最後まであまり泡立たないお抹茶が出来上がった。
▼▼▼▼▼▼
帛紗:和柄の布みたいなやつ。ハンカチ代わりと考えたら分かりやすい。
古帛紗:帛紗より分厚めの和柄の布。器を運ぶ時に使っていました。最近ではコースターに使う人もいるらしい。
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茶筅:お抹茶を点てるのに使うあれ
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茶杓:お抹茶を掬う耳かきみたいな形の棒
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