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初めての茶道③
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「出来上がったら柄が手前…相手側に柄が見えるようにお出しするんです。飲む時は柄が口に来ないように回すんですが、とりあえず今回は大丈夫です。」
よくテレビとかで見る、器を回すやつか。
細かい動き一つ一つにも作法があり意味がある。
「せっかく初めて川瀬さんが点てたお茶ですから、ぜひご自身で飲んでみてください。」
「はい…では、いただきます…」
……。
………。
うっ…想像してたけど苦くてえぐみがあって美味しくない。
多分使っているのは高級なお茶なんだろう。かろうじて飲めるといったくらいだろうか。
桐生と同じものを使ったはずなのに何故こんなに違うのか。
出来上がったものに不満そうな玲に気づいたのか、私もいただいてもいいですか?と声をかけてきた。
えっ?
間接キスにならない?桐生さんって気にしない人なのかな。
でも、飲まなきゃ味は分からないし、真剣に教えようとしてくれてるのに一人で勝手にドキドキして意識してしまって恥ずかしい!
その後の調べで茶道では回し飲みは普通にやる事だと知るのだが、慣れない玲は邪な気持ちが湧き上がりいい歳して間接キスとか言い出すなんて…と人知れず恥じていた。
桐生は玲の点てたお茶を飲み頷いた。
「初めてなのに、ダマになっていないし川瀬さんの真面目さが伝わってとても良いと思います。私が初めて点てたものは水っぽくてとても飲めませんでしたから。」
自分が失敗だと思っていたもののよい部分を見つけ出し褒められるという事が慣れていなくて気恥ずかしい。
「実際やってみてどうでした?」
「難しかったけど…すごく、楽しかったです!自分が知っていたものはほんの一部だと分かったし作法やルールがたくさんあってまだまだこれからですが、知って行くのが楽しみで。何より桐生さんの点てたお茶がすごく美味しかったです。」
「良かった…煩わしいと思われるんじゃないかと心配していたんです。特に最近の若い人なんかは効率を優先するからこういった動作を無駄と捉えるのではないかって。」
「若い…って言っても僕もう30歳ですけどね。会社では威厳がないから新卒に同世代だとよく勘違いされます。」
「そんな!38歳の僕からしたら全然お若いですよ。とは言え僕もまだまだこっちの世界では若造ですが、大学生の従兄弟がいるんですがおじさんって思われてるなーと感じながら会話してます。」
38歳だったのか。若々しい見た目に反して通りで落ち着いているとは思っていた。
浮世離れしているこの人は、僕の知らない経験を色々積んでいるんだろうな。
「でもそれこそ38歳でこんな立派なお店を経営していて凄いですね!お茶はどうして始められたんですか?」
「祖母に勧められました。体力がないから荷物を運ぶの手伝ってと言われてじわじわと引き込まれてしまって。」
お婆さんは残念ながら3年程前に亡くなってしまったようだ。
「このお店も祖母から引き継いで改築したんです。どうせなら自分が好きなようにやりたいなって。」
「へぇ…凄い。こういうのって国から補助金とか出たりするんですか?」
3年前なら桐生は35歳で一人で店を持つにはまだまだ若い。ましてや都内で、こういった改装は費用が馬鹿にならないのは良く知っている。
玲の考えが顔に出ていたのか、桐生が答えた。
「普段は株をやっていて…はっきり言ってこのお店は赤字なんですけど。まあ、趣味みたいなもんです。」
デイトレの桐生が想像つかない。
「がっかりしました?」
悪戯っぽく顔を覗き込まれてドキッとする。
「い、いえ!そんなまさか!!秘密基地を独り占めできるみたいで嬉しいです!!!」
秘密基地!とくすくす笑う桐生に思わず赤面する。
その後も二人は時間の終わりまで穏やかな会話を楽しんだ。
よくテレビとかで見る、器を回すやつか。
細かい動き一つ一つにも作法があり意味がある。
「せっかく初めて川瀬さんが点てたお茶ですから、ぜひご自身で飲んでみてください。」
「はい…では、いただきます…」
……。
………。
うっ…想像してたけど苦くてえぐみがあって美味しくない。
多分使っているのは高級なお茶なんだろう。かろうじて飲めるといったくらいだろうか。
桐生と同じものを使ったはずなのに何故こんなに違うのか。
出来上がったものに不満そうな玲に気づいたのか、私もいただいてもいいですか?と声をかけてきた。
えっ?
間接キスにならない?桐生さんって気にしない人なのかな。
でも、飲まなきゃ味は分からないし、真剣に教えようとしてくれてるのに一人で勝手にドキドキして意識してしまって恥ずかしい!
その後の調べで茶道では回し飲みは普通にやる事だと知るのだが、慣れない玲は邪な気持ちが湧き上がりいい歳して間接キスとか言い出すなんて…と人知れず恥じていた。
桐生は玲の点てたお茶を飲み頷いた。
「初めてなのに、ダマになっていないし川瀬さんの真面目さが伝わってとても良いと思います。私が初めて点てたものは水っぽくてとても飲めませんでしたから。」
自分が失敗だと思っていたもののよい部分を見つけ出し褒められるという事が慣れていなくて気恥ずかしい。
「実際やってみてどうでした?」
「難しかったけど…すごく、楽しかったです!自分が知っていたものはほんの一部だと分かったし作法やルールがたくさんあってまだまだこれからですが、知って行くのが楽しみで。何より桐生さんの点てたお茶がすごく美味しかったです。」
「良かった…煩わしいと思われるんじゃないかと心配していたんです。特に最近の若い人なんかは効率を優先するからこういった動作を無駄と捉えるのではないかって。」
「若い…って言っても僕もう30歳ですけどね。会社では威厳がないから新卒に同世代だとよく勘違いされます。」
「そんな!38歳の僕からしたら全然お若いですよ。とは言え僕もまだまだこっちの世界では若造ですが、大学生の従兄弟がいるんですがおじさんって思われてるなーと感じながら会話してます。」
38歳だったのか。若々しい見た目に反して通りで落ち着いているとは思っていた。
浮世離れしているこの人は、僕の知らない経験を色々積んでいるんだろうな。
「でもそれこそ38歳でこんな立派なお店を経営していて凄いですね!お茶はどうして始められたんですか?」
「祖母に勧められました。体力がないから荷物を運ぶの手伝ってと言われてじわじわと引き込まれてしまって。」
お婆さんは残念ながら3年程前に亡くなってしまったようだ。
「このお店も祖母から引き継いで改築したんです。どうせなら自分が好きなようにやりたいなって。」
「へぇ…凄い。こういうのって国から補助金とか出たりするんですか?」
3年前なら桐生は35歳で一人で店を持つにはまだまだ若い。ましてや都内で、こういった改装は費用が馬鹿にならないのは良く知っている。
玲の考えが顔に出ていたのか、桐生が答えた。
「普段は株をやっていて…はっきり言ってこのお店は赤字なんですけど。まあ、趣味みたいなもんです。」
デイトレの桐生が想像つかない。
「がっかりしました?」
悪戯っぽく顔を覗き込まれてドキッとする。
「い、いえ!そんなまさか!!秘密基地を独り占めできるみたいで嬉しいです!!!」
秘密基地!とくすくす笑う桐生に思わず赤面する。
その後も二人は時間の終わりまで穏やかな会話を楽しんだ。
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