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本編 第一部 ~騎士の娘は茶会にて~
もう私、貴方の正体分かっていますから!
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暫くするとキースランド伯爵令嬢は、王宮にあるゲスト用の控え室へと王宮メイドに運ばれて行った・・・。
心配でついて行きたい気持ちも有ったが、自分が本日の茶会の主役である事から、王宮庭園に踏みとどまった。
その後は、殿下の影武者と一緒に挨拶巡りをし、本来あるべき婚約者の姿に戻った私は、何とか茶会を恙無く終わらせる事が出来た。
お開きのスピーチを終えた影武者と、あの控え室へと戻れたのは、もう空がオレンジ色に染まり始めた頃の事だったーーー。
「チッ、チッ、チッ」
時計の秒針の音が気になる位、私は焦っていた。何故ならば、目の前の影武者と2人きりで早く話さなくてはいけない事が有るからだ。
(怒りに任せて今日のバトルに巻き込んでしまったけど・・・、流石にアレを殿下に報告されるのは不味いのよね・・・!)
入れ替わり立ち代りに使用人がこの控え室に入って来ており、この〝影武者〟と話をしたいのに、出来ない焦りから私は今、かなりの冷や汗をかいていた。
(そろそろ迎えの馬車が来てしまう時間だわ・・・!)
今日の行動一つ一つに後悔は無いものの・・・影武者を寄越された怒りから、後先考えずに勢いで行動してしまった事に反省はしていると、ふと影武者と目が合った。優しく微笑み掛ける影武者は、最後まで殿下になりきっていて、もはや尊敬に値した。
(このまま貴方を殿下の元へ行かせる訳には、いかないのよ・・・っ!)
時間も差し迫っている事から、私はもう自力で〝二人きり〟を作り出すしか無いと腹を括り、小さく手を挙げた。
「殿下、我儘を1つ・・・宜しいでしょうか?」
「おや?殿下に戻してしまうのですか?ルークと呼んでくれて、構わないのですよ?フローラ」
(貴方は良くても、殿下はきっと良くないと思いますよ!!)
「おほほほ、お戯れを・・・。」
「僕は真剣ですよ?」
満面の笑みをこちらに向ける影武者に私は、確信した。
(この人・・・確実に今日の事を〝悪く〟殿下に報告するつもりだわ・・・っ!)
別に殿下にどう思われるか等は、この際どうでも良い。が!今日発言してしまった無礼な言葉の数々は・・・出来れば報告されたくない。
「でっ、殿下!本日は婚約発表の日だと言うのに、あまり二人きりでお話出来ませんでしたわね!」
(貴方は空気の読める人だと信じてるわよ・・・!さぁ、察して頂戴!!!)
「おや、愛称の話は何処へ行ってしまったのですか?」
(察 し ろ よ ・・・っ!!!!それに多分、貴方も殿下に怒られるわよ?!ルーク呼びを私に許可なんかしたら!)
「殿下・・・そのお話の続きは二人きりでしたいですわ。」
(もうこうなったら・・・何言われてもこの返答でゴリ押ししてやるわ!)
「まぁ、・・・そこま言うのなら分かりました。皆、退室する様に。」
影武者がメイドに視線を合わせると、メイドは全員、速やかに退室してくれた。もう少し〝二人きり攻防〟が続くと思っていた私は、ようやっと事態が進んだ事に安堵する。
「それで・・・二人きりなりましたよ?」
人の目が無くなった為か、少し砕けた体勢になった影武者は、長い足を組み肘を付いていた。
「ゴホンッ、私は・・・貴方の秘密に気付いています。でも、気付かなかったフリをしてあげてもかまいません。」
「・・・・・・・・・え?」
(ふふっ。まさか私が気付いてると思っていなかったのでしょうね・・・?素っ頓狂な声を出しちゃって・・・!こちとら、5回目なのよ!見くびらないで頂戴!)
「だから、本日の茶会での出来事は全て殿下に報告しないで欲しいのです。」
「・・・・・・・・・えぇ?」
(恐らく見た目だけなら区別がつかない位そっくりだから・・・今までバレた経験が無いのかしら?さっきから固まってしまっているわ・・・!でも私の目は誤魔化せないわよ!相手が悪かったわね!)
「私も・・・貴方が影武者だと言うことは、墓場まで持って行きましょう。」
「・・・・・・え?!か、影武者っ?!!」
言い当てられた目の前の影武者は、思わずついていた肘から顔が外れてしまう程、驚いた様子だ。
「取り乱さなくても大丈夫です。誰にも言ったりしませんから。」
「フローラ・・・先程から何を言って・・・?」
私がここまで言葉を具体的に並べても、影武者は意味が分からないという感じで、困惑の表情を浮かべ続けている。余程バレない自信が有ったのか、それとも・・・バレると殿下からキツイお仕置でも有るのか、白状する様子が無い影武者の悪足掻きに・・・少しイラついている自分を頭の隅に何とか追いやる。
「とにかく!本日の茶会で起きた事は、全てここだけの秘密という事で、交渉成立ですわね?!」
「いや!フローラ・・・説明してくれないと・・・」
(バレたのが悔しいんだか、怖いんだが、知らないけど、もう本当に時間が無いのよ・・・!馬車が来ちゃうのよーっ!)
「だから!!もう私、貴方の正体分かっていますから!!観念しなさいと言っているのです!!!」
頭の隅に追いやっていたイライラが、時間がない焦りと相まって、余裕の無い大きな声と角のある言い方となってしまった。
「後、殿下から私達二人の関係をきちんと聞いておらず知らないのでしょうが・・・私に対して優しく微笑んだり、手を取りエスコートしてみたり、甘い言葉を囁いたり・・・有り得ませんから!!!殿下は絶対にそんな事しませんから!!!」
(言った・・・!言ってやったわ・・・!そうよ!こっちを散々振り回してくれちゃって!!危うく、殿下が私を好いていると勘違いしそうになってしまったわよ・・・!!)
「・・・・・・・・・それは、お互い様じゃないか。」
影武者が零したその一言は私の耳には届かなかった。何故なら、その言葉を掻き消す様に響いたノックの音に私は、上がってしまった熱を下げようと、目の前にあるティーカップに手を伸ばしてしまったからーーー。
心配でついて行きたい気持ちも有ったが、自分が本日の茶会の主役である事から、王宮庭園に踏みとどまった。
その後は、殿下の影武者と一緒に挨拶巡りをし、本来あるべき婚約者の姿に戻った私は、何とか茶会を恙無く終わらせる事が出来た。
お開きのスピーチを終えた影武者と、あの控え室へと戻れたのは、もう空がオレンジ色に染まり始めた頃の事だったーーー。
「チッ、チッ、チッ」
時計の秒針の音が気になる位、私は焦っていた。何故ならば、目の前の影武者と2人きりで早く話さなくてはいけない事が有るからだ。
(怒りに任せて今日のバトルに巻き込んでしまったけど・・・、流石にアレを殿下に報告されるのは不味いのよね・・・!)
入れ替わり立ち代りに使用人がこの控え室に入って来ており、この〝影武者〟と話をしたいのに、出来ない焦りから私は今、かなりの冷や汗をかいていた。
(そろそろ迎えの馬車が来てしまう時間だわ・・・!)
今日の行動一つ一つに後悔は無いものの・・・影武者を寄越された怒りから、後先考えずに勢いで行動してしまった事に反省はしていると、ふと影武者と目が合った。優しく微笑み掛ける影武者は、最後まで殿下になりきっていて、もはや尊敬に値した。
(このまま貴方を殿下の元へ行かせる訳には、いかないのよ・・・っ!)
時間も差し迫っている事から、私はもう自力で〝二人きり〟を作り出すしか無いと腹を括り、小さく手を挙げた。
「殿下、我儘を1つ・・・宜しいでしょうか?」
「おや?殿下に戻してしまうのですか?ルークと呼んでくれて、構わないのですよ?フローラ」
(貴方は良くても、殿下はきっと良くないと思いますよ!!)
「おほほほ、お戯れを・・・。」
「僕は真剣ですよ?」
満面の笑みをこちらに向ける影武者に私は、確信した。
(この人・・・確実に今日の事を〝悪く〟殿下に報告するつもりだわ・・・っ!)
別に殿下にどう思われるか等は、この際どうでも良い。が!今日発言してしまった無礼な言葉の数々は・・・出来れば報告されたくない。
「でっ、殿下!本日は婚約発表の日だと言うのに、あまり二人きりでお話出来ませんでしたわね!」
(貴方は空気の読める人だと信じてるわよ・・・!さぁ、察して頂戴!!!)
「おや、愛称の話は何処へ行ってしまったのですか?」
(察 し ろ よ ・・・っ!!!!それに多分、貴方も殿下に怒られるわよ?!ルーク呼びを私に許可なんかしたら!)
「殿下・・・そのお話の続きは二人きりでしたいですわ。」
(もうこうなったら・・・何言われてもこの返答でゴリ押ししてやるわ!)
「まぁ、・・・そこま言うのなら分かりました。皆、退室する様に。」
影武者がメイドに視線を合わせると、メイドは全員、速やかに退室してくれた。もう少し〝二人きり攻防〟が続くと思っていた私は、ようやっと事態が進んだ事に安堵する。
「それで・・・二人きりなりましたよ?」
人の目が無くなった為か、少し砕けた体勢になった影武者は、長い足を組み肘を付いていた。
「ゴホンッ、私は・・・貴方の秘密に気付いています。でも、気付かなかったフリをしてあげてもかまいません。」
「・・・・・・・・・え?」
(ふふっ。まさか私が気付いてると思っていなかったのでしょうね・・・?素っ頓狂な声を出しちゃって・・・!こちとら、5回目なのよ!見くびらないで頂戴!)
「だから、本日の茶会での出来事は全て殿下に報告しないで欲しいのです。」
「・・・・・・・・・えぇ?」
(恐らく見た目だけなら区別がつかない位そっくりだから・・・今までバレた経験が無いのかしら?さっきから固まってしまっているわ・・・!でも私の目は誤魔化せないわよ!相手が悪かったわね!)
「私も・・・貴方が影武者だと言うことは、墓場まで持って行きましょう。」
「・・・・・・え?!か、影武者っ?!!」
言い当てられた目の前の影武者は、思わずついていた肘から顔が外れてしまう程、驚いた様子だ。
「取り乱さなくても大丈夫です。誰にも言ったりしませんから。」
「フローラ・・・先程から何を言って・・・?」
私がここまで言葉を具体的に並べても、影武者は意味が分からないという感じで、困惑の表情を浮かべ続けている。余程バレない自信が有ったのか、それとも・・・バレると殿下からキツイお仕置でも有るのか、白状する様子が無い影武者の悪足掻きに・・・少しイラついている自分を頭の隅に何とか追いやる。
「とにかく!本日の茶会で起きた事は、全てここだけの秘密という事で、交渉成立ですわね?!」
「いや!フローラ・・・説明してくれないと・・・」
(バレたのが悔しいんだか、怖いんだが、知らないけど、もう本当に時間が無いのよ・・・!馬車が来ちゃうのよーっ!)
「だから!!もう私、貴方の正体分かっていますから!!観念しなさいと言っているのです!!!」
頭の隅に追いやっていたイライラが、時間がない焦りと相まって、余裕の無い大きな声と角のある言い方となってしまった。
「後、殿下から私達二人の関係をきちんと聞いておらず知らないのでしょうが・・・私に対して優しく微笑んだり、手を取りエスコートしてみたり、甘い言葉を囁いたり・・・有り得ませんから!!!殿下は絶対にそんな事しませんから!!!」
(言った・・・!言ってやったわ・・・!そうよ!こっちを散々振り回してくれちゃって!!危うく、殿下が私を好いていると勘違いしそうになってしまったわよ・・・!!)
「・・・・・・・・・それは、お互い様じゃないか。」
影武者が零したその一言は私の耳には届かなかった。何故なら、その言葉を掻き消す様に響いたノックの音に私は、上がってしまった熱を下げようと、目の前にあるティーカップに手を伸ばしてしまったからーーー。
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