【完結】殿下、5回目の婚約破棄は私の方からさせて頂きます!~やりたい放題していたら、いつの間にか逆ハー状態でした~

ゆきのこ

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本編 第三部 〜乙女はアカデミーにて〜

殿下が生徒会長?!

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程なくして馬車はアカデミーの敷地内へと入った。
アカデミーの門番に指定された位置まで馬車がゆっくり進むと、完全に停止し御者が扉を開けてくれるのがいつもの流れだ。

「レディーファーストだからね。お先にどうぞ?」

お兄様からそう言われ開いた扉から馬車を降りた私は・・・その扉を開けてくれたのが御者じゃないとは夢にも思っておらず、二度見では足らず三度見してしてまった。




「でっ、殿下・・・?!!何故、こちらに?」




そこには、満面の笑みを浮かべて私を誘う婚約者・・・もといこの国の第二王子、ルークフォン殿下が居た。

同じアカデミーの生徒とは言え・・・この様な乗降広場など普段使わない殿下の姿に、周りの生徒達もざわめき出している。

「勿論、愛しい婚約者を迎えに来た・・・と言いたい所ですが、残念。生徒会長として新入生代表のフローラを御迎えに来ただけだよ。」



「せっせせ、生徒会長・・・?!!」



驚きの連続な私は、どんどん前のめりになってしまう。

でも私が驚くのも仕方無いと思うのだ。
過去4回やり直して来たが、アカデミーでの殿下と言えば、とにかく目立った行動を避けると言うか・・・忌み嫌っていて・・・、そんな人が生徒会長なんてーーー目立ちたいが為にやる様な役職に就いているだなんて、青天の霹靂なのだ。

(どどど、どう言う事なのかしら?確かに5回目にして初めての事はこれ迄も多々有ったけれど・・・ここまで変わってしまうとは・・・!)

「おや?フローラ・・・知らなかったのかい?」

「え・・・?!お兄様はご存知でしたの?! 」

私に続いて馬車から降りてきたお兄様は、殿下に丁寧な会釈を済ますと私が頭を悩ませている様子を見て逆に驚いていた。

「勿論・・・!とても話題になったからね。」

(ーーーえ?話題だったの?)

まさか婚約者である自分が全く知らなかったと言う訳にもいかず、思わず口を噤んだ。

そして、ふと彼女の存在が気になる・・・。

「あの・・・エレノア、いえキースランド伯爵令嬢は・・・生徒会役員では有りませんの?」

そう、前回までの私が入学した年の生徒会と言えば、エレノアもといキースランド伯爵令嬢が書記官で事実上のボスだった。
正にキースランド伯爵令嬢派閥で固められており、それはそれは恐ろしかったのだ。

「エレノア嬢なら書記官として共に頑張ってくれているよ?」

(あ。やっぱり、そこは変わらないんだ・・・。)

何となく安心した様な不思議な感覚に襲われた私は、一先ず目の前の事実を受け入れようと頑張る。

「えーっと・・・では、生徒会長?ご案内をお願いしても宜しいでしょうか?」

自慢の令嬢スマイルを久しぶりに使った私に、何故か殿下は「ぷっ」と小さく零して笑っている・・・全くもって失礼な奴だと少しギロりと睨むと、慌てて体制を整え直す殿下は、いつも通りと表現して差し支えないだろう・・・。

「勿論です、フローラ。ようこそ、我が学園へ!」



私の5回目の学園生活は、こうして幕を開けたーーー・・・



















「ーーー以上、新入生代表フローラ・アナスタシアの挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。」

私が首席挨拶を壇上で終えて一礼をすると、拍手がホールいっぱいに鳴り響いた。
その拍手を背に裏手へと私は歩いていく。

(何回やっても緊張するわね・・・この挨拶は、)

そう思いながらも大任から解き放たれた開放感に、壇上裏の廊下で思わず深く深呼吸をしていると後ろから聞き慣れた声がした。

「フローラ、とても素敵な挨拶でしたわ。」

「エレノア・・・!こんな所に居たのね!探していたのよ!」

思わず声が大きくなってしまった私の口を、美しく滑らかな人差し指で制したエレノアに同じ女性な癖にドキドキしてしまった私は、エレノアを凝視する事しか出来なくなってしまう。

「しーっ、まだ入学式は続いているのですから、お静かに・・・。」

「ご、ごめん・・・つい・・・。」

私とエレノアは、今や大の仲良しでおまけに周知の事実となりつつある。
と言うのも・・・エレノアが私が参加しないとパーティーや茶会、夜会の招待を受けないと言い出して、致し方なく私は大きなパーティー等にだけエレノアと繰り出ているという訳なのだ。

爵位を賜って日が浅かった事と、お父様が騎士団のお仕事でそんなに横の繋がりを必要としなかった為か、それまで招待状なんて皆無だった私の元に、エレノア効果で今では山の様な招待状が届いている。

(つまり・・・エレノアの荒療治のお陰で我が家は招待状を出すべきリストに晴れて載れたという訳なんだから、エレノアの計算高さには頭が下がるわ。)

この貴族界では最初のお誘いを頂く事が非常に難しいのだ。
その後は没落でもしない限り、勝手に毎回届くというのが一般的だ。
つまり・・・招待客リストなるものに名前を書いてさえ貰えれば、この先ずーっとご縁を頂けるいう訳なので、非常に有難い事なのだ。

エレノアは社交界での振る舞い方や、人を見る力など私が知らなかった色んな事を教えてくれる・・・今や良いお姉さん的存在になりつつある。

過去4回でされた色々な事を簡単に水に流せるかって言うと・・・やっぱりそう簡単には行かないけれど、エレノア自身から時折かいま見える申し訳無さそうに俯く表情を見れば、彼女自身が誰よりも反省していると馬鹿な私でも分かるので、私も過去の事は敢えて口にしないし・・・何よりエレノアの事が好きな私は、葛藤したものの彼女と一緒に居る事を選んだ。

「御迎えは殿下に取られてしまいましたから・・・この後のエスコートは私にお譲り頂きましたのよ?さぁ、フローラこちらへ・・・」

(お譲りでは無く・・・押し付けられたの間違いだと思うんだけど・・・気を遣ってくれてありがとう、エレノア・・・。)

「え、えぇ・・・宜しくお願い致します。」

 
彼女の気遣いに感謝しつつーーー
私は歩みを進めた。
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