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第8輪 色っぽい眼で焦らして
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数日後。グラキエスが捕らえた闇魔法結社の男の叫び声が城内に響いた。敢えて、遮断魔法をしていなかったようで、スッキリした顔で階段を上がってきたグラキエスと遭遇する。
尋問室は地下にあり、イグニスとグラキエスの団長室や自室は一階に集結しているのだが、此処まで聞こえてくるのは異常だった。
普段と変わらない表情のグラキエスは本当に聖女なのだろうかと疑問すら浮かぶ。だが、そんな聖女本来の仕事が舞い込んできたことで、イグニスはグラキエスを探していた。
「……どっちが悪人か分からねぇな」
「えー、ひどいなー。僕は男だけど、歴とした聖女だよー?」
「そんな聖女のてめぇに仕事だ。支度しろ」
未だに男の聖女がなんなのか分かっていない。ただ、この世界は魔力に満ちていて、生き物すべてが魔力を体内に宿していた。その中で人間は厄介な生き物で、体内に負の感情を蓄積する。少しずつ体内の魔力が淀んでいき、外へ放出されて外の魔力と合わさることで穢れが生まれていった。
聖女の長い歴史は過去の文献で書かれているが、男の記述は一切ない。
元気よく返事するグラキエスと別れて、支度を済ませていたイグニスは城外へ出て編成した団員の確認をする。
遅れてきたグラキエスを連れて、穢れの浄化作業へ向かった。
魔力による穢れは、色々な負の感情によって生まれる。そのため、いつどこで発生するか分からず、見つけ次第浄化を繰り返していた。
今回向かう場所はまさかの旧市街で、闇魔法結社が暴れた場所である。奴等は存在自体が負で塗れているため、要因になってるのか、はたまた旧市街で何かしようとしていたのかは謎だった。
「でも、野外じゃなくて良かったよねー」
「そうだな。外だと魔物の討伐までしなくちゃいけねぇ」
あからさまに面倒くさそうな顔をするイグニスは、隣で笑うグラキエスを睨みつける。本来なら王族と同じ位を持つ聖女にこんな態度を取ったら不敬罪にあたるが、二人は幼馴染であり家族だ。イグニスが十二のときに、間違われたグラキエスは誘拐される。その際、助けに向かったイグニスが瀕死の重体となり、聖女の力が目覚めるキッカケになった。
最初は戸惑ったイグニスへ、普通に接しないと王族と同じ権限で色々恥ずかしいことをすると脅されて現在に至る。
当時はまだイグニスに恋愛感情を抱いていなかったグラキエスがそんなことをしないのは分かった上で頷いた。
ただ、愛の告白をされたのも事件のあった数日後……。
部下にも同じことを言って怖がらせたグラキエスは、実質魔法騎士団にとって影の団長だ。
穢れは旧市街の外れに漂っている。魔力を宿す者は全員穢れを認識出来るが、発生源だけは聖女にしか見えない。
辺りの確認を終えて準備が整うと、すぐに浄化し始めるグラキエスの横顔は、普段と違って真剣でいて綺麗だった。
白い光に包まれる大地と反して黒い穢れがグラキエスの中に吸い込まれていく。少しだけ苦しそうな表情をしたあと、決まって笑顔を向けてきた。
聖女であることもあって毒される男たちもいるが、容姿と反した腹黒さによって次の日、記憶を忘れるほど痛い目を見る。
それが知らない間に広まったことで、口は悪いが男らしい中に華のある見た目をしたイグニスに的を変えた男たちが、最終的にグラキエスの逆鱗に触れて陰で粛清されていた。
浄化作業が終わってすぐ王城へ戻ったイグニスは、グラキエスの自室にやってくると無理矢理ベッドへ寝かせる。
「ちょっ……今回は大丈夫だって!」
「……駄目だ。てめぇは隠しているつもりだろうが、体調不良なのは見えてんだよ」
「えっ……。それって、僕の体はイグニスのモノってこと……」
「気色悪いこと言ってんじゃねぇ……」
なぜか男の聖女は穢れを祓うのに一度体内に入れる必要があるらしく、稀に量が多すぎると体調を崩して高熱を出して倒れることは分かっていた。
イグニス以外の人間には分からないほど体調不良を隠すのが上手いグラキエスは、諦めたようで苦しそうな呼吸へ変わる。
じわりと滲む額の汗に、グラキエス専属の侍女へ頼んでいた濡れタオルを乗せた。飲むための水を忘れていたことに気づいたイグニスが、ベッドから離れようとしたときだった。背後からローブを摘ままれて振り返る。
普段とは違って弱々しい手の力に思わず眉を寄せた。
「……そばに、いて欲しい」
「ハァ……仕方ねぇな」
グラキエスはその容姿もあって、徹底して弱みは見せない。最初はイグニスも気づかなかったが、男として好きな相手に弱みを見せたくないという強がりだった。
こんな状態でも意識を失わない限りグラキエスをどうこう出来る者はいない。イグニスも顔負けな精神力の強さと、男としての絶対的強さを持っている。
だから、弱っている姿を見られるのは自分だけだと優越感に似た感情もあった。
近くにあるイグニス専用の椅子を手繰り寄せて座ると、腕を掴まれて火照った頬に誘導される。
グラキエスと違って見た目から炎のような男は、体温も低くない。それなのに、冷たくて気持ち良いという。
どさくさ紛れで手の平に唇を寄せてくるグラキエスは本当に精神力が強かった。当然、触れる前に引っ込められる手を恨めしそうに追うグラキエスは、熱のせいで色っぽい眼を向けてくる。
瞬間ドキッと胸の高鳴りを覚えるイグニスは思わず首を大きく振った。
「……ふざけるな。こいつは正真正銘、男だぞ……」
「イグニス……? ねぇ、僕が眠れるように子守唄を歌ってよ」
「……子守唄だと? てめぇは脳みそまで熱に冒されやがったか」
「むぅ……そんなことないよ。イグニスが、アクアにしてあげてたの……羨ましかったんだから」
暫く考えたあと、頭を掻き乱すイグニスは要望に応えて子守唄を歌う。透明感のある低い声で紡がれる唄は耳に心地よく、ポンポンと優しく布団を叩く音で瞼を閉じたグラキエスはすぐに寝息をたてた。
尋問室は地下にあり、イグニスとグラキエスの団長室や自室は一階に集結しているのだが、此処まで聞こえてくるのは異常だった。
普段と変わらない表情のグラキエスは本当に聖女なのだろうかと疑問すら浮かぶ。だが、そんな聖女本来の仕事が舞い込んできたことで、イグニスはグラキエスを探していた。
「……どっちが悪人か分からねぇな」
「えー、ひどいなー。僕は男だけど、歴とした聖女だよー?」
「そんな聖女のてめぇに仕事だ。支度しろ」
未だに男の聖女がなんなのか分かっていない。ただ、この世界は魔力に満ちていて、生き物すべてが魔力を体内に宿していた。その中で人間は厄介な生き物で、体内に負の感情を蓄積する。少しずつ体内の魔力が淀んでいき、外へ放出されて外の魔力と合わさることで穢れが生まれていった。
聖女の長い歴史は過去の文献で書かれているが、男の記述は一切ない。
元気よく返事するグラキエスと別れて、支度を済ませていたイグニスは城外へ出て編成した団員の確認をする。
遅れてきたグラキエスを連れて、穢れの浄化作業へ向かった。
魔力による穢れは、色々な負の感情によって生まれる。そのため、いつどこで発生するか分からず、見つけ次第浄化を繰り返していた。
今回向かう場所はまさかの旧市街で、闇魔法結社が暴れた場所である。奴等は存在自体が負で塗れているため、要因になってるのか、はたまた旧市街で何かしようとしていたのかは謎だった。
「でも、野外じゃなくて良かったよねー」
「そうだな。外だと魔物の討伐までしなくちゃいけねぇ」
あからさまに面倒くさそうな顔をするイグニスは、隣で笑うグラキエスを睨みつける。本来なら王族と同じ位を持つ聖女にこんな態度を取ったら不敬罪にあたるが、二人は幼馴染であり家族だ。イグニスが十二のときに、間違われたグラキエスは誘拐される。その際、助けに向かったイグニスが瀕死の重体となり、聖女の力が目覚めるキッカケになった。
最初は戸惑ったイグニスへ、普通に接しないと王族と同じ権限で色々恥ずかしいことをすると脅されて現在に至る。
当時はまだイグニスに恋愛感情を抱いていなかったグラキエスがそんなことをしないのは分かった上で頷いた。
ただ、愛の告白をされたのも事件のあった数日後……。
部下にも同じことを言って怖がらせたグラキエスは、実質魔法騎士団にとって影の団長だ。
穢れは旧市街の外れに漂っている。魔力を宿す者は全員穢れを認識出来るが、発生源だけは聖女にしか見えない。
辺りの確認を終えて準備が整うと、すぐに浄化し始めるグラキエスの横顔は、普段と違って真剣でいて綺麗だった。
白い光に包まれる大地と反して黒い穢れがグラキエスの中に吸い込まれていく。少しだけ苦しそうな表情をしたあと、決まって笑顔を向けてきた。
聖女であることもあって毒される男たちもいるが、容姿と反した腹黒さによって次の日、記憶を忘れるほど痛い目を見る。
それが知らない間に広まったことで、口は悪いが男らしい中に華のある見た目をしたイグニスに的を変えた男たちが、最終的にグラキエスの逆鱗に触れて陰で粛清されていた。
浄化作業が終わってすぐ王城へ戻ったイグニスは、グラキエスの自室にやってくると無理矢理ベッドへ寝かせる。
「ちょっ……今回は大丈夫だって!」
「……駄目だ。てめぇは隠しているつもりだろうが、体調不良なのは見えてんだよ」
「えっ……。それって、僕の体はイグニスのモノってこと……」
「気色悪いこと言ってんじゃねぇ……」
なぜか男の聖女は穢れを祓うのに一度体内に入れる必要があるらしく、稀に量が多すぎると体調を崩して高熱を出して倒れることは分かっていた。
イグニス以外の人間には分からないほど体調不良を隠すのが上手いグラキエスは、諦めたようで苦しそうな呼吸へ変わる。
じわりと滲む額の汗に、グラキエス専属の侍女へ頼んでいた濡れタオルを乗せた。飲むための水を忘れていたことに気づいたイグニスが、ベッドから離れようとしたときだった。背後からローブを摘ままれて振り返る。
普段とは違って弱々しい手の力に思わず眉を寄せた。
「……そばに、いて欲しい」
「ハァ……仕方ねぇな」
グラキエスはその容姿もあって、徹底して弱みは見せない。最初はイグニスも気づかなかったが、男として好きな相手に弱みを見せたくないという強がりだった。
こんな状態でも意識を失わない限りグラキエスをどうこう出来る者はいない。イグニスも顔負けな精神力の強さと、男としての絶対的強さを持っている。
だから、弱っている姿を見られるのは自分だけだと優越感に似た感情もあった。
近くにあるイグニス専用の椅子を手繰り寄せて座ると、腕を掴まれて火照った頬に誘導される。
グラキエスと違って見た目から炎のような男は、体温も低くない。それなのに、冷たくて気持ち良いという。
どさくさ紛れで手の平に唇を寄せてくるグラキエスは本当に精神力が強かった。当然、触れる前に引っ込められる手を恨めしそうに追うグラキエスは、熱のせいで色っぽい眼を向けてくる。
瞬間ドキッと胸の高鳴りを覚えるイグニスは思わず首を大きく振った。
「……ふざけるな。こいつは正真正銘、男だぞ……」
「イグニス……? ねぇ、僕が眠れるように子守唄を歌ってよ」
「……子守唄だと? てめぇは脳みそまで熱に冒されやがったか」
「むぅ……そんなことないよ。イグニスが、アクアにしてあげてたの……羨ましかったんだから」
暫く考えたあと、頭を掻き乱すイグニスは要望に応えて子守唄を歌う。透明感のある低い声で紡がれる唄は耳に心地よく、ポンポンと優しく布団を叩く音で瞼を閉じたグラキエスはすぐに寝息をたてた。
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