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第32輪 一線を越えて芽生える恋心
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初体験をしてしまってから翌日。震える体で一人自室に戻ってくるとベッドへ倒れ込んで悶えていた。体は節々が痛くて悲鳴を上げている。こんな状態じゃ、さすがに公務に支障をきたすため、張本人であるグラキエスへすべての仕事を丸投げした。
転がってから体感一時間が経って漸く痛む体を起こす。当然痛みは下半身に集中していて、昨晩の行為を思い出して顔が熱くなっていった。
自分の愚かさを自覚したイグニスは、ふらふらと立ち上がって浴室へ向かう。湯を張っていないからシャワーしか出来ず、部屋の中に水音が響き渡った。
「――俺は間違った、選択をしたのか……? 考えが甘かったのは確かだ……あんなに、あんなこと……」
再び自分の淫らな姿を思い出して下を向く。男同士で気持ち良くなることも、女のような艶めかしい声が出るなんて一ミリも考えていなかった。
「……どこから、あんな声が出てたんだ……」
喉仏に触れてから腹部を擦る。再び鮮明になる記憶を振り払い、シャワーを止めて頭からタオルを被った。初めてで心配だから後で見に行くと言っていたグラキエスは、しっかりと中出し後の対策をしている。聖女は便利だと思いながら、イグニスは再び顔を覆った。
体から滴る水を拭いながら、全面ガラス張りの浴室に映る自分を直視する。
引き締まった体は、少しだけ腹筋も割れていた。自惚ているかもしれないが、整った体は男らしい部分しかない。
執拗に揉まれた臀部も、引き締まった体の一部だ。ただ、臀部を掴まれて後ろから激しく突かれたときは狂いそうになったのを思い出す。
執拗に前立腺を刺激されて最初は何か触れているだけだった。何度も突かれていたら、違和感は強くなっていきグラキエスの寝たあとが一番辛くて長い時間だったと深く息を吐く。
しかも、無数につけられた赤い痕が生々しい――。
「あいつ……俺の体で好き勝手に……。何が、心も繋がってからしたかっただ……変態聖女」
無数に残された赤い花が、一線を越えたことを鮮明にさせた。それも執拗に性感帯や他の男が見たら萎えるだろう部分ばかり……。
粘着質な執着心が露わになっている。
「……こういうところは、子供だな」
自分が年上だということを実感しながら、重い腰を引きずるように綺麗な寝衣へ着替えてベッドに座った。
時間が経って、喉の痛みや掠れも気になってきた頃、扉を叩く音が聞こえてくる。朝まで起きていたことで、ウトウトしていたイグニスは自室なのに施錠をしていなかった。
反応する前に扉が開く音で意識を浮上させる。
「――不用心だよ、イグニス……」
耳心地の良い声が耳元で囁かれると、顔に熱が帯びた。いつの間にかベッドの前へ立っている近い距離の顔が更に近づいてくる。唇へ触れそうになったところで、思いきり顔を押し退けた。
「――てめぇ。調子に乗ってんじゃねぇ!」
「えー……昨日の今日なんだから。調子に乗らない方がおかしいよねー?」
「うぐっ……昨夜のことは忘れろ……」
衝撃的なことを言われたとばかりに面食らうグラキエスは、押し退けた手を掴んでくる。そして、卑猥な表情で見せるように舌を這わせてきた。思わず肩が揺れ、忘れようと努力していた朝までの行為を思い出させる。
「や……め……」
「……本当、カワイイんだから」
昨日の今日で体が反応しないはずもなく、掠れた声で抵抗した。次第に息が上がってきたところで、手が離される。
思わずギュッと体を抱きしめるイグニスは、視姦するような雄の眼差しに震えた。布団を羽織り、服も着ているのに一糸纏わない姿を上から眺められている気分だった。
一度でも抱かれたら精神的にも敗北するのかと、絶望へ染まる瞳に柔らかい感触が当たる。グラキエスの少し厚みのある優しい唇だった。
「そんな絶望しないでよ……無理矢理襲ったりは絶対しないからさ。ただ、戸締まりをちゃんとしてなかったから……お仕置き、かな?」
「…………気をつける」
しおらしくなって応えるイグニスは、グラキエスの手に持たれたトレイへ気づく。紅茶のセットに、果実水が入ったガラス瓶。病食のような軽食もあった。
「喉が辛いだろうから、水と……リラックス効果のある紅茶。何も食べてないだろうと思って。早く来られなくてごめんね?」
「ケホッ……別に、いい……」
ベッドから起きようとしたところへ今度は腰を抱かれて、ビクッと肩が揺れる。介助行為すら求めている体に再び顔は熱くなった。体からの精神はあるかもしれない……。意識しすぎて心臓も痛くなるほど音を立てている。
自分で出来ると、介助を拒むイグニスをだらしない顔が見つめていた。思わず腕を振り上げ殴ろうとして、腰が悲鳴を上げる。
「ほらぁ……沢山えっちしたんだから、ね?」
「くっ……てめぇが、挿れたまま寝たから――ゲホゲホ……」
「駄目だよ。喉も痛めちゃう……もう性的なことは、暫くしないから」
大きな手で優しく腰を擦られると先ほどまでと違う心地良さを感じた。それもそのはずで、痛みが消えていく。聖女の癒やしだった。
痛みがなくなったことで思った以上に自分は絆されているんだと自覚する。
女と付き合った経験や、本番も何度かしたが恋心を感じることもなかった。グラキエスに対しても好意を向けられているのは分かっていたが、年齢を重ねてきた。
「……年上、なのに……」
「ん? イグニスは、そればっかりだよね……。僕だって、本当はイグニスより年上か、同じが良かったんだよ」
ベッドに腰をつけて座ったまま上を向く。自然と下りてくる顔が近付いてきても避けることなく、目を閉じると優しく唇が触れた。
自分はこの男が好き……なのかもしれないと、自覚してしまった。
転がってから体感一時間が経って漸く痛む体を起こす。当然痛みは下半身に集中していて、昨晩の行為を思い出して顔が熱くなっていった。
自分の愚かさを自覚したイグニスは、ふらふらと立ち上がって浴室へ向かう。湯を張っていないからシャワーしか出来ず、部屋の中に水音が響き渡った。
「――俺は間違った、選択をしたのか……? 考えが甘かったのは確かだ……あんなに、あんなこと……」
再び自分の淫らな姿を思い出して下を向く。男同士で気持ち良くなることも、女のような艶めかしい声が出るなんて一ミリも考えていなかった。
「……どこから、あんな声が出てたんだ……」
喉仏に触れてから腹部を擦る。再び鮮明になる記憶を振り払い、シャワーを止めて頭からタオルを被った。初めてで心配だから後で見に行くと言っていたグラキエスは、しっかりと中出し後の対策をしている。聖女は便利だと思いながら、イグニスは再び顔を覆った。
体から滴る水を拭いながら、全面ガラス張りの浴室に映る自分を直視する。
引き締まった体は、少しだけ腹筋も割れていた。自惚ているかもしれないが、整った体は男らしい部分しかない。
執拗に揉まれた臀部も、引き締まった体の一部だ。ただ、臀部を掴まれて後ろから激しく突かれたときは狂いそうになったのを思い出す。
執拗に前立腺を刺激されて最初は何か触れているだけだった。何度も突かれていたら、違和感は強くなっていきグラキエスの寝たあとが一番辛くて長い時間だったと深く息を吐く。
しかも、無数につけられた赤い痕が生々しい――。
「あいつ……俺の体で好き勝手に……。何が、心も繋がってからしたかっただ……変態聖女」
無数に残された赤い花が、一線を越えたことを鮮明にさせた。それも執拗に性感帯や他の男が見たら萎えるだろう部分ばかり……。
粘着質な執着心が露わになっている。
「……こういうところは、子供だな」
自分が年上だということを実感しながら、重い腰を引きずるように綺麗な寝衣へ着替えてベッドに座った。
時間が経って、喉の痛みや掠れも気になってきた頃、扉を叩く音が聞こえてくる。朝まで起きていたことで、ウトウトしていたイグニスは自室なのに施錠をしていなかった。
反応する前に扉が開く音で意識を浮上させる。
「――不用心だよ、イグニス……」
耳心地の良い声が耳元で囁かれると、顔に熱が帯びた。いつの間にかベッドの前へ立っている近い距離の顔が更に近づいてくる。唇へ触れそうになったところで、思いきり顔を押し退けた。
「――てめぇ。調子に乗ってんじゃねぇ!」
「えー……昨日の今日なんだから。調子に乗らない方がおかしいよねー?」
「うぐっ……昨夜のことは忘れろ……」
衝撃的なことを言われたとばかりに面食らうグラキエスは、押し退けた手を掴んでくる。そして、卑猥な表情で見せるように舌を這わせてきた。思わず肩が揺れ、忘れようと努力していた朝までの行為を思い出させる。
「や……め……」
「……本当、カワイイんだから」
昨日の今日で体が反応しないはずもなく、掠れた声で抵抗した。次第に息が上がってきたところで、手が離される。
思わずギュッと体を抱きしめるイグニスは、視姦するような雄の眼差しに震えた。布団を羽織り、服も着ているのに一糸纏わない姿を上から眺められている気分だった。
一度でも抱かれたら精神的にも敗北するのかと、絶望へ染まる瞳に柔らかい感触が当たる。グラキエスの少し厚みのある優しい唇だった。
「そんな絶望しないでよ……無理矢理襲ったりは絶対しないからさ。ただ、戸締まりをちゃんとしてなかったから……お仕置き、かな?」
「…………気をつける」
しおらしくなって応えるイグニスは、グラキエスの手に持たれたトレイへ気づく。紅茶のセットに、果実水が入ったガラス瓶。病食のような軽食もあった。
「喉が辛いだろうから、水と……リラックス効果のある紅茶。何も食べてないだろうと思って。早く来られなくてごめんね?」
「ケホッ……別に、いい……」
ベッドから起きようとしたところへ今度は腰を抱かれて、ビクッと肩が揺れる。介助行為すら求めている体に再び顔は熱くなった。体からの精神はあるかもしれない……。意識しすぎて心臓も痛くなるほど音を立てている。
自分で出来ると、介助を拒むイグニスをだらしない顔が見つめていた。思わず腕を振り上げ殴ろうとして、腰が悲鳴を上げる。
「ほらぁ……沢山えっちしたんだから、ね?」
「くっ……てめぇが、挿れたまま寝たから――ゲホゲホ……」
「駄目だよ。喉も痛めちゃう……もう性的なことは、暫くしないから」
大きな手で優しく腰を擦られると先ほどまでと違う心地良さを感じた。それもそのはずで、痛みが消えていく。聖女の癒やしだった。
痛みがなくなったことで思った以上に自分は絆されているんだと自覚する。
女と付き合った経験や、本番も何度かしたが恋心を感じることもなかった。グラキエスに対しても好意を向けられているのは分かっていたが、年齢を重ねてきた。
「……年上、なのに……」
「ん? イグニスは、そればっかりだよね……。僕だって、本当はイグニスより年上か、同じが良かったんだよ」
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