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「やぁ、ミカエル。
今日は一段と顔色が良いな。」
「先生のおかげだよ。
それと……」
「アニエスの…だろ?」
ミカエルは頷き、どこか照れくさそうな笑顔を浮かべた。
意識を取り戻してからのセザールは、順調に回復していった。
十日も経った頃には、食事を催促するほどまでに食欲も出てきていた。
だが、脳に衝撃を受けたためか、セザールは記憶のほとんどをなくしていた。
言葉のやりとりに支障はなかったが、自分がどこの誰なのか、どんな所で育ち、どういう生き方をしてきたのか、彼はその記憶のすべてを失っていた。
そのことで錯乱したこともあったが、記憶が戻らないのは一時的なもので、いずれは戻るとの医師の言葉に、不安はありながらもやがてセザールは落ち着きを取り戻した。
名前がないと話をするのにもちょっとした不便が生じる。
本当の名前がわかるまで、彼は仮に「ミカエル」と呼ばれることになった。
一ヶ月もすると、彼は、村の再建を手伝うまでに回復していた。
村人達の中には若い者があまりいないため、ミカエルはとても重宝がられ、すぐに村人達とも打ち解けた。
彼は、バルバスの町の近くで発見され、密かに同行していたとエリックは語った。
それは、レスターから連れて来たというと、アニエスがエリックの言いつけを無視して彼を無賃乗船させたことがバレてしまうからだった。
年配の者の中には、そういうことを嫌うものが少なくない。
そういうことをエリックが配慮して吐いた小さな嘘だった。
「やぁ、ミカエル。
今日は一段と顔色が良いな。」
「先生のおかげだよ。
それと……」
「アニエスの…だろ?」
ミカエルは頷き、どこか照れくさそうな笑顔を浮かべた。
意識を取り戻してからのセザールは、順調に回復していった。
十日も経った頃には、食事を催促するほどまでに食欲も出てきていた。
だが、脳に衝撃を受けたためか、セザールは記憶のほとんどをなくしていた。
言葉のやりとりに支障はなかったが、自分がどこの誰なのか、どんな所で育ち、どういう生き方をしてきたのか、彼はその記憶のすべてを失っていた。
そのことで錯乱したこともあったが、記憶が戻らないのは一時的なもので、いずれは戻るとの医師の言葉に、不安はありながらもやがてセザールは落ち着きを取り戻した。
名前がないと話をするのにもちょっとした不便が生じる。
本当の名前がわかるまで、彼は仮に「ミカエル」と呼ばれることになった。
一ヶ月もすると、彼は、村の再建を手伝うまでに回復していた。
村人達の中には若い者があまりいないため、ミカエルはとても重宝がられ、すぐに村人達とも打ち解けた。
彼は、バルバスの町の近くで発見され、密かに同行していたとエリックは語った。
それは、レスターから連れて来たというと、アニエスがエリックの言いつけを無視して彼を無賃乗船させたことがバレてしまうからだった。
年配の者の中には、そういうことを嫌うものが少なくない。
そういうことをエリックが配慮して吐いた小さな嘘だった。
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