ミステリーSS集

レーゲの壺

２

「私、エリックがアリアナを誘拐したんじゃないかって思ってるの？
もしかしたら、エリックの屋敷に囚われてるんじゃないかって。」

 「それは十分有り得るな。
 警察には話したのかい？」

 「ええ、もちろんよ。
だけどね、驚いたことに、ちょうどアリアナが行方不明になった頃に、エリックは事故で死んだって警察が言うのよ。」

 「えっ！？そうなのか？
じゃあ、エリックは関係ないってことなのか？」

 「そうとも言い切れないと思うわ…」

クロエは、そう言ってそっと俯いた。



 「どういうことなんだい？」

 「実はね…私、ひとつだけ、気になることが有るの。」

そう言ったクロエの顔に、暗い影が差した。



 「……気になること？何なんだい？」

 「あなた…レーゲの壺って知ってる？」

 「レーゲの壺？いや、知らない。」

 「レーゲの壺は、ずっと昔に悪魔が作った壺って言われているもの…」

 「その壺がどうかしたのかい？」

 「都市伝説みたいなものなんだけど…
レーゲの壺にソリドゥス金貨を三枚入れて、願いを言えばその願いが叶うと言われていたの。
アリアナは、そのレーゲの壺をとても欲しがっていたわ。」

つまり、アリアナは、そのレーゲの壺を探して、エリックのことをなんとかしようとしたということなのか？



 「それで…レーゲの壺はみつかったのかい？」

 「それはわからない。
アリアナとは、それから連絡が取れなくなったから…」