タイムトリップはいかがですか?

神在琉葵(かみありるき)

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タイムトリップ

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聞けば、両親は亡くなり、今はひとりで住んでいるとのことだった。
確かにそうでなけりゃ、住所を渡したりはしないだろう。



「この部屋を使って。」

俺は、日当たりの良い部屋をあてがわれた。




「じゃあ、まず、家賃を決めようか。」

「いらないわ、そんなもの。」

「良いのか?そんなこと言って…後からやっぱり出してなんて言っても知らないぞ。」

「本当にいらない。」



前のアパートは6畳のワンルームだったから、ずいぶん広くなったっていうのに、家賃も払わなくて良いなんてそんなわけにはいかない。 
でも、もしも本当に受け取ってくれなかったら…生活費を出そう。
俺はそんな風に考えていた。



そもそも、お互いのことを良く知りもしない俺達が一緒に住むこと自体、とてもおかしな話なのだが、なぜだか、俺はそのことがさほど気にはならなかった。



「あ、それから…勝手な話かもしれないけど、一緒に住んでることはファンの子には…」

「わかってる。私、そんなこと、絶対に言わないわ。
だから…ライブに行くことだけは許してね。
ライブは私の楽しみだから。」



考えてみれば確かに大きな賭けだ。
ファンの女の家に転がり込んだなんてことがバレたら、大きなイメージダウンにはなるだろう。
だけど、あいつはそんなことを言いふらすような者だとは思わなかった。 
俺は、そのことを確信していた。
何の根拠もないのに…


思った通り、あいつは誰にもそんなことは言わなかった。 
一緒に住んでいる間に俺達は自然と深い仲になった。 
だけど、あいつの態度は今までと少しも変わらなかった。
万一、疑われたらまずいから…と、出待ちをしてプレゼントまで持ってくる始末だった。 
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