その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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トーリとコタ③

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『ミドリはコタが大事?』

その声のない問いにコクコクとただ必死に頷く。

そんなの当たり前だ。私の命なんかよりも大事で、本当は全てを投げ打ってでも隣に居たい。許されるならずっと貴方の隣で貴方を貴方と幸せを噛みしめて生きていきたい。

そんな気持ちが言葉にできないくらい溢れて、ただ頷くしかない私にトーリは『そっかぁ。』と嬉しそうにパタパタと足を遊ばせる。

歳のわりにあどけない表情。
あどけない言動。
でも、その瞳は何処までも真っ直ぐで芯があるように見える。

柔らかな線を描く紅茶色の瞳をゆっくりと閉じ、祈るように握った手に額を寄せる。
するとふわりと握られた手から蛍のような柔い光の粒はふわふわと上がり、その柔い光は私の身体の中に入っていく。

柔い光は春の日差しのような優しい温かさで、暗い闇の中でも寄り添ってくれるような優しさを感じた。

「トーリッ!!」

柔い光が身体に消えていった直後、サッと青い顔になったガウェインさんが彼の名前を叫び、必死にその身体を私から引き剥がし、グイッと肩を掴んだ。

「君はッ、君は自分が何をしたか分かっているのかい!?なんで魔力の譲渡なんてその危ない状態でッ。」

翠の瞳が不安に揺らぎ、ペタペタとトーリの身体に大事はないかと確かめながら叱る。その姿に少し困りながらも何処か嬉しそうにトーリは『大丈夫。』と口を動かした。

「大丈夫な訳ないでしょッ。君は一度魔力を無理矢理魂から引き剥がされて死にかけてる。なんとか残存した魔力で生活してる状態なのだから。」

「え!?それ、魔力譲渡しちゃ駄目じゃないですか!!」

『大丈夫。ちょっと分けただけ。』

ただでさえ、コタが魔力が無くて死に掛けているのを何度も見ている。
しかもどうやらこの青年、生命の根源たる魔力を引き剥がされるという恐ろしい目にあってるらしい。

そんなボロボロの状態で何故、その残り少ない魔力を私に分けたのか?
返そうとするがフルフルと首を横に振り、ダメだと拒否する。それは必要なんだ…と。

『それはコタとの繋がり。』

その言葉を聞き、「成程。」とガウェインさんは納得して頭を抱えた。呆れた顔でトーリを見て、それでもニコニコと笑っているトーリにぐっと言いたい事を飲み込んで、頭を撫でた。

「そうだね、トーリ。君はコタくんの召喚主だった子。君の魔力を持っていればコタくんと今の主人を繋ぐ魔力回路に干渉する事が出来る。少しの時間ならその小さな魔力繋がりでコタくんへの命令を妨害する事も可能…だねぇ。」

「君が…、君がコタの本来の…。」

無邪気なトーリは『ガウェインをいじめちゃダメだよ?』と私に釘を刺すとクワッと欠伸をしてうとうとし始めた。

とても眠そうなのにそれでもガウェインさんから離れたくない様子。ガウェインさんの手を握りながらテーブルに伏せてすぅすぅと寝息を立て始めた。

ポリポリと握られていない方の手でガウェインさんは自身の頰を掻き、困った表情を浮かべる。

その顔に、ああ。この人は自分が何故、こんなにも好かれているのか理解出来てないんだな。と思った。
私がトーリを不思議に思う以上にこの人はトーリが自身に向ける気持ちを不思議に思っている。

私は何となく、トーリが何故、ここまでガウェインさんを慕っているのか分かるけど。この人はきっとそれすら…。


その姿が少しおかしくて。
その関係がとても尊く感じてフッと顔が綻ぶ。

「ガウェインさん。全てが終わったら必ずトーリから借りた魔力は返します。それまでお借りしても構いませんか?」

「……いいんじゃないかな。トーリ自身がそれを望んでるしねぇ。」

「そうですね。……凄いですね、トーリは。」

トーリの魔力は優しさに満ちている。
自己犠牲も厭わず、誰かを想える優しさに満ちている。

その優しさは柔く温かく進むべき道を照らしている。
そしてその優しさに報いたいのなら今やるべき事は捨て身で敵陣に単身で突っ込む事じゃない。

魔族の国ヴラディアに戻ります。私は私が出来る最善を尽くします。」

コタを助けたいなら万全を期すべき。
パンっと頰を挟むように叩き、転移魔法を展開する。

幹部全員の協力は必須。
元老院も黙らせる必要がある。

ー 待っててください。必ず、迎えに行きますから。

だから、どうか無事でいて下さいと祈るように胸の中でふわふわと優しく光るトーリの魔力に触れた。
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