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今度、会えたなら(ミドリ視点)

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『陛下。陛下が良かれと思ってやってる事はただの逃げ…ですよ。』

終わりの見えない戦いの中。
走馬灯のようにパレスの言葉が頭に響く。

何度倒しても立ち上がってくる敵を伸し、魔法攻撃を避けるを繰り返す。勇者との喧嘩でかなり消耗していた体力も魔力も尽きかけ、ぐらりと意識が飛び掛ける。

『陛下は拒絶されるのが怖いだけでしょ。中途半端な覚悟だから傷付ける。』

その度に人族の城に乗り込む前にしたパレスとの会話が為すべき事を為せと言わんばかりに再生される。

何時ものように酔いどれではない、力強く睨むあの赤い瞳がこのまま倒れる事を許さない。

貫けないような王に忠誠を誓う気はない。がその覚悟を示せないのであれば、全てを壊すだけだ。』

元より自身が魔王になったらそのつもりだった。
そう赤い瞳の奥で燃える復讐の炎に私は少し気圧され、そして悟った。

今見ているこの姿こそがこの人の本性だと。
今見ているこの人の姿はきっと、コタを失った時に私が辿り着く姿なのだと。

『命は不意に尽きるもの。愛も永遠ではない。愛す事も愛される事も生きているうちだから出来る。後からあの時、ああしてればよかったと後悔したところで全てが遅い。』

ずっとこの人には試されている気がした。
ガウェインさんのように《期待》からくるものではなく、文字通り試されている。

相応しいか。相応しくないか。
使えるか。使えないか。


でも、そんな事はどうだっていい。
ただ、私はここまで言われないと自身の浅ましさに気付けない自身が情けなかった。


愛してるから身体を繋げた。
愛しているから失うのが怖かった。
何度振られてもこの想いを伝えるべきだった。


ー 会い…たいな。

もう一度、会えたら今度こそきちんとこの想いを伝える。
そう再度心に決め、意識が飛ばないように歯を食いしばり、拳を振るう。

目の前の操られた部下を伸すと、地面に倒れゆく部下の後ろから赫い刃が妖しく光った。


三日月型に歪んだ勇者の赫い瞳が視界に映る。
振り下ろされた赫い刃を捌く事も出来ず、ただ目で追った。


「弱ってる相手にイキってんじゃねぇよ。」

初めて会ったあの日のようにあの声が響く。
夜空色の髪をなびかせ、勇者の頭に飛び蹴りを入れた。
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