寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ

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身体、弱いんで

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「へぇー、シュネーくんとは二年前からの仲なのか。」

「ああ、弟の様に思って可愛がってる。」

「…あのエリアスに弟分ねぇー。」

事実無根の話が目の前で飛び交う。だが、それを止めるだけの勇気はなく、私はただ四人を眺めた。

丸いテーブルを野郎五人で囲んでいる筈なのに、その空間はむさ苦しくなく、キラキラな上にいい匂いがする。何故か全員もれなく恐ろしい程美形揃い、恐ろしい程権力者揃い。とても異様な空間に私は誰かさんの私情でぶっ込まれている。

何て場違いな所に呼んでくれたんだとエリアスには抗議したいが、正直抗議だとしてもこれ以上コイツと関わりたくない。それ程もうコイツの存在が嫌なんだ。

私の左に座る騎士団長の息子、シュヴェルト・デーゲン。何故か私の事を気に入ったようで先程から私の肩に腕を回しながら豪快に紅茶を飲む。まだ一言も言葉のキャッチボールを交わしてないので本当に何故出会って数分でこうなったかは分からない。シュヴェルトはとなりに座っていた宰相の息子、レオノール・シルトの肩にも手を回していたので彼は単にお調子者なのかもしれない。

逆にレオノールは慎重なタイプ。値踏みするようにこちらの様子を伺ってくる。眼鏡の奥に隠れたつり目で睨む様にこちらを見て来るので少々怖いがエリアスの底知れない怖さと比べれば可愛いものだ。

そしてリヒト・フォー・フォルメルン第二王子は王子なのに空気感がある。多分、リヒト王子の存在感が薄いのではない。他三人が濃すぎるのだ。決して彼が存在感が無いって事ではない。不敬罪にあたるので強く言っておくが。

そして問題のエリアスは、さも楽しそうに優雅にお茶を飲む。もしやお前が第二王子なんじゃないかという優雅さで。

まだ数分しか経っていないが、私はもう疲れてきた。もう解放してくれないかなと期待を込めてリヒト王子を見ると彼は明らかに作った笑みを浮かべて友人と会話していた。

王族の友人って、言葉通りのものじゃないんだなっと、そんな彼を見て思った。

第二王子という事は勿論、彼よりも王位継承権が高い第一王子がいる。幾ら同い年だと言っても何故、ここにこれだけの権力者の息子が集まるのだろう。確か第一王子の歳は第二王子の一つ上。宰相の息子であるレオノールは幾ら第二王子と同い年とはいえ、第一王子についていた方が自然な気がするが。

ー 何かきな臭いな。

「関わらないが吉だな。」と新たに関わりたくない相手を三人追加する。そう思いながら紅茶を飲もうとティーカップを持つともう中身が空に。侍従が気付いて先に空になったシュヴェルトのカップに紅茶を注ぎ、私のカップに注ごうとした。しかし、エリアスが私のカップの上に手を置き、制止する。

「ああ、シュネーには紅茶を用意しているんだ。そっちを淹れてもらえるかな。」

ゾワリッ

何だか嫌な予感がした。
これ程、『別の』という言葉に寒気を感じた事はない。何だろう。その紅茶、絶対飲みたくない。

「いや、これ以上お茶を飲むとちょっと胃が…。申し訳無いのですが、体調を崩してしまうので白湯でお願いします。」

「…白湯。」

自身でも随分と無理のある言い訳だと思う。しかし、「それならしょうがない…か。」と何だか納得してくれたのでかなり強引だが何とか回避成功。

「そんなに身体が弱いのか…。」

「…はい。」

シュヴェルトが同情の目を向ける。この人は私の言葉を本気で信じていて何だか罪悪感を覚える。しかし、飲む訳にはいかないのだ。絶対に。


入れてもらった温かな白湯を飲み、ホッと温まる。まだこのお茶会は終わらないのかと見ているが、全く終わる気配がない。寧ろ、チョコケーキが新たに出てきたので、まだ帰れないのだろう。

諦めて一口頂くと口の中で優しい甘さが広がる。それが何だか嬉しくて頰が緩む。

ー そういえば、甘いの久々に食べたな。

シュネーは身体が弱いからか食が細い。それでも食事は無理にでも食べるが、流石にデザートまでは入らない。 だからシュネーは自分が甘い物が苦手という事にして、デザートを回避している。本当は甘い物が大好きなのに家族に心配掛けたくなくて痩せ我慢してるのだ。

ー シュネー本人に食べさせたかったなぁ。

食べにシュネーの意識が出てきてくれないかと思ったが、出て来てくれなかった。まあ、エリアストラウマの権化がいる手前出てくる訳もないか。

「そんなに甘いの好き? 」

リヒト王子の優しい眼差しが私に注がれる。思った以上に表情が緩んでいた様だ。エリアスがニマニマ笑っていたのが目障りだが、美味しいんだもん。しょうがない。

「そんなに好きなら俺のもやるよ! 」

「えっ、…いや。」

シュヴェルトが自身のを私の皿に乗せてくる。エリアスに胃が弱いと言った手前もあるし。そんなに食べたら晩御飯が入らなくなるので遠慮したいが、シュヴェルトがあまりにも嬉しそうに頭を撫でてくるので断るに断れない。

「まぁ、俺と鍛えれば身体も強くなって胃も強くなるって。食べるのも鍛錬だ。」

「はぁ。」

ニシシッと愉快に笑う。
何か何時の間にかに一緒に鍛錬する事になっているが、何を言っても無駄な気がする。まぁ、元々シュネーが護身出来るように鍛えるつもりだったので、まぁ、…もう、しょうがない。この人とは関わるか。

諦めて、チョコケーキをまた一口食べるとガタンッと温室の勢い良く開いた。何かまた面倒ごとが増えるのかと諦め、気にせず食べていたら身体が急に浮いた。

「シュネー、帰ろうか。」

聞き慣れた声が耳元で聞こえた。
ここに居ない筈の人。

「兄上? 」

ー 何故ここに?

「ローレン…いや、第一王子に呼ばれてね。」

兄は何時ものように慈愛を帯びた優しい笑顔を向け、そして優しく私の頰に口付けした。

驚き、兄を見ると「ほっぺにクリームが付いてたよ。」っと笑った。

「そう…なんだ。」

小さく切って食べてたのにクリームが付いていたんだとかそもそも口で取る必要ある?  とは思ったが、兄が私を連れてこの空間から出てくれるみたいなので嬉しさが勝り頭からすっぽ抜ける。

「それではリヒト殿下、我々は失礼します。」

兄は私を抱えたまま、礼を取り、温室を後にした。




~~~~~~~

お気に入り登録ありがとうございます。一人見てくれれば万々歳だと思っていたので嬉しいです。

                                     P.S.吉雪
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