寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ

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信じてる

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「さぁて、どうすっかねぇ。」

このままじゃ、もしここが見つかって、攻められたら私達は本当に終わりだ。


リヒトが顎に手を当て考える。
そしてチラリと私とネズミ、キツネ、そしてカスターを見た。

「ねぇ、ネズミ。」

「なんでぃ? 」

「シュネーが拐われた時にあっちも『血染めの狼王』、カスターの襲撃でかなりの損害を被った訳だよね。」

「…そうだねぇ。毒使いの金の目の腕も食い千切ったし、大勢死んだって聞いたねぇ。」

「相手もかなり切羽詰まってない? あれから直ぐにあれだけの人員を足せる? 」

ネズミが「確かに。」と少し悪い顔をした。

「一人二人ならいけっけど、数十人となれば無理だねぇ。でもあっちにはあれだけ町を破壊せず、きちんとやる事はやるヒヒ系魔獣か数十匹いるんだろう? 」

キツネが顔を顰めた。
少し身体を震わせながらコクリと頷いた。

「ああ…、凶暴な上にヤケに統率が上手く取れてた。だから流石のクジャクも町民守るだけで精一杯で、俺も…俺も。」

「だ、そうだよぉ。リヒッちゃん。ヤマネコの奴、何らかの方法で完全にヒヒ系を掌握してるみたいでぃ。」

さぁ、どうする?
ネズミがリヒトを楽しそうにワクワクした表情で見つめる。何かを期待しているように。

するとリヒトはカスターを呼ぶように私に言う。言われた通りに呼ぶとカスターは私の元へ一目散にやってきた。その光景を見て、ネズミがヒュウッと口笛を吹いた。

「そこまで言う事聞くんだねぇ。スゲェや。」

「うん。おそらく、ヤマネコはシュネーがやった事と近い事をやったんじゃないかな。だったら僕達もその手を使おう。」

リヒトが私に身体をすり寄せるカスターの頭を撫でる。が、カスターは嫌そうな顔を浮かべた。

「まあ、そうだろうね。僕は君の恋敵だからね。でも、それも今日で終わりだよ。」

にっこりとリヒトが笑う。
あのカスターがその笑顔に少し怯える。

「今日から君は。君は息子だ。」

カスターが目を丸くする。
そして私をチラリと見た。
困惑している様子で。

「これを了承すれば今よりもっとシュネーと居られるよ? 何たってだからね。」

「ワ…ワフッ!? 」

「えっ!? ホント!! 」と言いたそうな顔でブンブン尻尾を振る。ペロペロと舌でリヒトの手を舐め、喜びを表現する。どうやら了承したらしい。

リヒトはその瞬間、ふと何かを感じ、驚愕の色を浮かべて私を見た。その目は私を問いただすように見ていた。

しかし私は全力でそっぽ向いた。
絶対その問いには答えない。

「ねぇ、シュネー? 」

「……。」

「今感じた。微弱にカスターに感じる繋がりは何? 君は僕に言ってない事があるんじゃないかな? 」

「……。」

「そう、だんまり。…ならそれを肯定の意と取るよ。後で布団の中で聞かせてもらおうかな。トロトロになった君に。」

「…名付けの影響だと思われます。ごめんなさい。」

「却下。」

素直に話して謝ったのにまさかの却下。

ネズミが哀れなものを見るような目で私を見る。したくてしてしまった訳じゃない。煽りたくて煽った訳じゃない。
だからその目で見るのをやめろ。

リヒトは溜息をついて、隣に腰を下ろしたカスターを見た。

「まあ、これで恋敵は一匹消えたし。よしとするか。シュネーには後でもう一度問いただすけど。」

と呟いた。
私とカスターはその言葉にともに身震いする。そんな私達をやはり哀れなものを見るような目でネズミが見る。

「策士はリヒッちゃんか。……確かにカスターが戦力に加わるのはいいが、人数は未だ不利でい。全戦力で『リンク』を占領してんだろうよ。」

「うん。でも、別に全員を潰す必要なんてない。ディーガとヤマネコの二人を潰せれば僕達の勝ちだ。ヤマネコがヒヒ系を操っているというのならヤマネコを潰せばあの軍団は統率が取れなくなる。ディーガも右に同じだよ。」

ディーガを潰せば有象無象の集団。
それはこの『刑受の森』に初めて来た日、ディーガに捕まり、分かった事。

彼等はディーガの指示がないと何も出来ない。それは私がディーガに一杯食わせた時のあの部下達の混乱ぶりから見るにそうだろう。

だが、どうやって部下に囲まれているだろうあの男だけ潰すのか?
どうやってヒヒ系に囲まれているであろうヤマネコを潰すのか?

「シュネー。」

リヒトが辛そうな表情で私を見つめる。痛いくらいに抱き締める。

ー 成る程…ね。

ふわりと笑い掛け、リヒトの唇にそっと軽く口付けをし、腕を回す。

「私を使って。……大丈夫だから。私はリヒトを信じてる。」

「シュネー。僕も君を信じてる。」

もう一度お互いを確かめるように唇を重ねると、とても離れ難い想いに襲われた。こんなにこの人と離れるのが辛いなんて思わなかった。

きっと『従騎士の誓い』がなくても、もう私はこの人がいなくなったら生きていけないだろうな。
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