僕は伯爵様の抱きまくら………だったはず?

ゆずは

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本編

僕は伯爵様の抱きまくら…?

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「ご主人様、こちらは」
「髪が多すぎる」
「ではこちらの」
「ドレスの色が似合ってない」
「えーと…侯爵様の三女の…」
「太い」
「全然そんな風には見えませんけど。じゃ、こちらの――――」
「シュリ、もういい。全て好みではない。下げてくれ」
「………かしこまりました」

 僕のご主人であるファビラウス・アーデルグレイス伯爵様は、ご令嬢様方の姿絵を全てテーブルの隅に追いやってしまった。
 ……あーあ。今日もいいお返事は聞けなかったよ。

「ご主人様、今夜は」
「葡萄酒を頼む」
「かしこまりました」

 姿絵を両手に抱えて、僕はご主人様の部屋を出た。

 僕がお仕えしているファビラウス・アーデルグレイス伯爵様は、とても綺麗な黒髪に輝く金色の瞳をされた美丈夫だ。
 仕事もできて領民からの信頼も厚いし、国のいくつかある魔術師団の総帥でもあるお方。
 そちらのお仕事が忙しくて、領地に関しては弟君のラウドリアス様が主に取り仕切っているけど。
 そんなご主人様は二十八歳になるのに、まだ結婚相手が見つかっていない。こんな風に姿絵がたくさん送られてくるけど、まともに見ないし、夜会なんかにも出ない。
 黒髪は魔力が高い証。その証拠に、ご主人様はお城からかなり離れたこの領地から、毎日転移でお仕事に向かう。そんなこと普通の魔術師には絶対に無理だ。途中で魔力が切れて変なところで力尽きる。だから、そんな危険なことでもあっさりこなしてしまうご主人様は、とにかくなんでもできて格好いい方なんだ。

 姿絵はご主人様が目を通されたら、長年お勤めになっている執事様のところに持っていく。
 それから厨房で、睡眠前に飲むお酒――――今日のご要望は葡萄酒だったので、それを受け取ってご主人様のお部屋に戻る。

「ご主人様、シュリです」

 そう声をかけてドアを開けると、既に夜着に着替えたご主人様がベッドに腰掛けていた。

「どうぞ」
「ああ」

 ご主人様は僕が持ってきたグラスを一気に呷る。

「――――シュリ」
「はい」
「明日、誕生日だったな」
「え?はい。やっと成人になります」
「……そうか」

 ご主人様、なんだか嬉しそうに口角が上がってた。
 僕のことと何か関係あるのかな。

「シュリ、休む」
「はい」

 僕は頷いて、ご主人様の前で侍従服を脱いでいく。お風呂には入ったし。
 ご主人様の前で何一つ纏わない姿になるのは恥ずかしいけど、眠るときの夜着は素肌の上から着る物だから仕方ない。
 ちょっと透ける、さらさらの手触りのいい夜着を着て、僕はご主人様のベッドに上がった。
 ご主人様は先に体を横たえていて、僕はその腕の中にすっぽりと収まるように寝転がる。
 ご主人様が僕に毛布をかけてくれて、部屋の明かりも落としていく。

「おやすみなさいませ、ご主人様」
「ああ。おやすみ、シュリ」

 僕を抱きしめて――――ご主人様は目を閉じた。

 何でもできるご主人様だけど、たった一つだけ弱いところがある。
 それが、

 『人肌がないと眠れない体質』

 ――――ということ。

 奥方様を迎えればなんの問題もないのだけど、ご主人様はご結婚される気がまったくない気がする。
 僕がこの仕事についたのは三年前。
 孤児院育ちだった僕を、慰安できていたご主人様が『抱きまくら』として気に入ってくれて、侍従としてお屋敷に入ることになった。
 伯爵家の皆さんはとても優しい人ばかりで、学のない僕に怒ったりもせず、いろいろなことを教えてくれた。
 抱きまくらだけだと夜のお仕事しかないし、それだってただご主人様と眠るだけだから、昼間は執事様にお願いして他のお仕事もさせてもらってる。

「………ふぁ」

 ご主人様の体温が心地良い。
 僕、ご主人様のことが大好きだから、ご主人様には早く奥方様を迎えてもらって、幸せなお姿を見たい。
 ……そうなったら、『抱きまくら』の僕はいらなくなってしまうけど。
 ご主人様が幸せになるように、僕ができること今のうちにたくさんしますからね。






*****

 腕の中で心地よさそうな寝息を立て始めた。

『眠れ、まだ深く。私の腕の中で幸福な夢を見ろ』

 耳元で囁やけば、ピクリと肩を震わせ、シュリの寝息はより深くなる。
 日付は変わった。
 やっとお前が手に入る。

 薄い夜着の上から丸く柔らかな臀部を撫でれば、溜息のような吐息が漏れる。
 私の言うことを疑いもせず、私の前で裸になり、花嫁の夜着を羽織るシュリ。
 夜毎この慎ましく閉じた蕾に、私の欲望をねじ込まれていたと知ったら、シュリはどうするだろう。
 孤児院で見たときに一目惚れしたと言ったら信じるだろうか。

 僅かに芯を持った花茎をそっと撫でれば、艶めかしい吐息をつきながら、体を震わせる。
 指の腹で先端の小さな穴を押しつぶすように、広げるようにしてやれば、すぐにとろりと先走りが溢れ始めた。

「ぁ………ぁ………」
「……十八歳、おめでとう、シュリ」

 私の指を濡らす先走りを使い慣れた香油と共に、私を待ち望んで口を開き始めた蕾に塗り込めた。

「は………ぁ……ぅ…ん…っ」
「今日からは遠慮しなくていいんだな」

 奥深くまで私の杭を打ち込んで、腹の奥にまで私の精で満たしては、綺麗に浄化魔法をかけて痕跡を消していた今までだったけれど。

「ひ……ぁ……ぁ……」

 広げた蕾に熱杭を押し付け、熱く纏わり付き蠢く内腔を味わいながら奥を目指す。
 一瞬壁のようなところにあたってから、一度腰を引き思い切り打ち込んだ。

「あう……んん!!」

 壁を突き抜け奥に。
 その瞬間、震えていた花茎からは透明な雫が噴き出し、淫靡な夜着を濡らしていく。
 激しく収縮する内腔に、抗うことなく己の欲を吐き出した。

「終わらない。終わらないよ、シュリ」
「ぁ……ぁ……ん、んん………っ」

 薄い腹が形を変えるまで出してやろう。
 明日は何もしなくていい。ベッドの上で私の相手をしているだけでいい。

「私の可愛いシュリ」

 愛してるよ、シュリ。
 明日目覚めたときに私の杭で内腔を穿たれたままだったら……、どんな反応を見せてくれるだろうか。

 楽しみだよ、シュリ。
 お前はもう髪の一筋さえも私のものだからね?












*****
    
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