【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第3章 遠征先でも安定の溺愛ぶりです。

1 初めてのお茶会

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 明日、西の森に向けて出発する。
 お兄さんからの許可は昨日のうちに出ていて、陛下にも受理されている。
 スライムのときほど緊急性があるものではないから、比較的準備ものんびりしているとは、クリス本人が言ったこと。

 いろいろな理由から、この遠征(西の森魔物討伐)について行くことになった俺は、一時的なのかなんなのか、クリスの直属隊の一員に。
 これには陛下もお兄さんも、難色を示したとか。
 でもクリスは、俺を城に残すことの方が危険だとはっきりと言い、且つ、魔法師長の手から逃れるためにも隊員として動くことのほうが安全だと二人を説得した(らしい)。
 …一番効果がでかかったのは、万が一、俺が暴走したときに、止められるのがクリスだけ、という事実みたいだけど…。

 俺、未だに危険物扱いなのね。まぁ、仕方ないけど。

 そんなこんなで、今日は皆さん明日の準備で忙しい。なので、俺も準備の手伝いとかで忙しく――――ない。いや、本当に。
 午後にはティーナさんとのお茶会があるから、午前中は準備や乗馬の復習とか、色々しなきゃと思っていたのに、何もない。
 やったことと言えば、部屋で本を読んでたくらい。





「メリダさん、なんか変じゃない?」
「大丈夫ですよ。お綺麗ですから」
「綺麗とか…そんなのはいいんですけど…」

 お茶会です。お茶会ですよ。
 初めて会ったあの夕食会のとき、二人でまた会いたいねって話をした。半分くらい社交辞令のようなものだと思っていたんだけど、お茶会の招待状が届いたのがついこの間。びっくりした。

 場所は王城の庭園。
 クリスは気兼ねなく楽しめばいいと言ってくれた。それに、後々、他の方々からのお茶会のお誘いもあるのだそうだ。そのことも考えてのお茶会らしい。要は、勉強の一環。それを「楽しめばいい」と、一言で終わらせるクリスもクリスだと思うけど。

 メリダさんに案内される形で、庭園に向かう。
 俺の後ろには、護衛についてくれてる隊員のミルドさんがいる。明日からの準備で忙しいのに、なんかごめんなさい。

「…ミルドさん」
「何かありました?」
「あ、えーと、やっぱり、俺のことはいいので…、明日の支度とか」

 ちなみに、本日3度目。
 ミルドさんは「またか」って顔をしながら苦笑した。

「大丈夫ですよ、アキラさん。自分がいなくても準備は進んでますし、アキラさんの護衛は重要任務ですから。むしろ、これを怠っては、自分が殿下に殺されます」
「こ……!?」
「冗談ではないですよ。本当です」

 って、ミルドさん、にこやかに肯定するけど、殺される、って!!にこやかに言うようなことじゃないですよね!?

「殿下の大切な方を護ることは、殿下にとっても、我らにとっても重要なことなのですよ。ああ、もちろん、殿下を恐れて従っているわけではありませんよ?我々は、殿下のもとで力を振るうことができて、これ以上の誉れはないと自負しておりますから。殿下のあの剣技を見て、憧れない者はおりません。繊細で美しく、なのに力強く正確。全てにおいて素晴らしい方なのです。殿下が『死ね』と仰られたなら、私は迷いなくこの命を差し出します。まあ、殿下は、そんな無駄な命令などしませんけどね。殿下のお命がかかるのであれば、私は喜んでこの身を捧げますが」
「そ………そうですか……」

 何だろう。オットーさんやザイルさんとは違う熱量を感じる。悪い人ではないけどね。
 まあいいや。

「それじゃ…改めてお願いします」
「はい。アキラさん」

 笑顔が崩れないなぁ。
 そんなところにまで感心していたら、メリダさんが足を止めて俺を見ながら苦笑していた。

「こちらですよ」
「あ、はい」

 メリダさんが扉を開けてくれる。
 そこは、廊下の窓から見える庭園。
 色とりどりの春の花が、俺を出迎えてくれる。

 はぁ。緊張する。

 少し進むと、開けた場所に出る。
 そこには、桃色のドレスを着て微笑むティーナさんがいた。

「お招きありがとうございます。フロレンティーナ様」
「ようこそおいでくださいました、アキラ様」

 ドレスを少しつまみ上げ、軽く膝を折る。――――女性の正式な挨拶らしい。それに対して、俺は、右手を胸のところに当て、軽く腰を折る。――――これは、男性側の挨拶。

 二人で挨拶を交わし、顔を見合わせ、ふふ、っと笑う。

「やっとお会いできましたね、アキラさん」
「ですね。ティーナさん」

 二人で用意されているテーブルにつくと、侍女さんがすぐに紅茶の準備をしてくれる。
 メリダさんは俺の後ろに控えて、ミルドさんはこの広場が見える位置に立っている。すぐ近くには見慣れない騎士服の人もいて、彼はティーナさんの護衛の人なんだろうと推測した。
 周りの様子を見てから紅茶に口をつけると、正面からティーナさんの視線を感じた。

「ティーナさん?」
「殿下のお色ですね」

 にこりと微笑まれて、嬉しくなる。

「今日届いたんです」

 以前注文していた、クリスの瞳の色に染めた布で作られた服と、右の耳には、作り直された青い月長石の耳飾りが揺れている。耳飾りには黒い宝石も新たに足されていて、嬉しくて仕方ない。

「よくお似合いです」
「ありがとうございます」

 それからはお茶を飲みつつ、用意されているお菓子を食べながら、ティーナさんと色々話した。
 魔法のこととか、魔物のこととか。
 クリスのこととか、お兄さんのこととか。

「明日から遠征なんですよ。団長さんがすでに制服を用意してくれていて、びっくりです」
「そうでしたわね…。ギルベルト様が心配していらっしゃいました。でも…、制服ということは、アキラさんは殿下の兵士団に所属されるのですか?」
「うーん…、はっきりと決まったわけではないんですよね。ただ、今回は同じ服を着ていたほうがわかりやすいから、って、言われましたけど」
「わかりやすい?」
「冒険者の方々も来てくれるそうなので」
「あら」
「実は、冒険者に興味があったので、ちょっと楽しみなんです」

 クリスが煩くなるから内緒ですよ?と付け加えれば、またティーナさんはコロコロ笑い出す。

「内緒ですね」
「内緒です」

 二人でふふ…っと笑っていたら、入り口のほうがなんだか騒がしくなった。


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