【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第3章 遠征先でも安定の溺愛ぶりです。

11 健全な精神は健全な肉体に宿る…?

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 クリスから魔力暴走の経緯を聞いて愕然とした。

「……あ……、うん。そうだ。あの人が、来たんだ」

 なぜ忘れていたんだろう。

 昨日のお茶会に乱入してきた彼女――――ヘルミーネさんの、俺やティーナさんに向けられた侮蔑の言葉と視線。俺を庇ってくれたティーナさんの強さ。
 真っ赤な口が弧を描く様が、異様に歪んで見えた。
 その不気味な口が、クリスの子供を生むと告げた。国のためになると告げた。俺がクリスの枷になっているとも言われた。

 酷く気持ちが揺れたことは覚えてる。……いや、思い出した。けど、そこまで。どうしてもその先は思い出せない。

「強制的に眠らせたんだ。覚えていなくても仕方ない」
「クリスが?」
「そう。…あのまま放出を続けていたら、アキが危険な状態だったから」

 クリスの表情がこわばった。俺をまた、胸に抱き寄せる。

「その後部屋で目覚めてからも、様子がおかしかった。以前の暴走とは全く違っていたんだ。…覚えてるか?」
「…何も覚えてない。多分、思い出せない。夜中に水が飲みたくて起きたところからは覚えてるけど……」
「覚えてないなら、それでいい。無理に思い出そうとすることもないから」
「そう……?」

 でも、ほんとにそれでいいのかな。
 俺、ちゃんとわかってないと、これからも同じこと繰り返すんじゃないのかな?

「…クリス」

 不安とか疑問とか、色んなものが綯交ぜになって、変な顔をしてたんだと思う。
 それは声音にも表れていて、胸元に抱き込んでいた俺に、クリスは触れるだけのキスをしてくれた。

 ……あったかい。

「アキが悩む必要はないから」
「でも」
「無理に思い出そうとしなくていい。…思い出したときは、必ず俺が抱き締める」

 多分、だけど。
 暴走した直後の俺はかなり酷いことになってたんじゃないかな。原因がヘルミーネさんから言われた言葉だと言うなら、恐らくメンタル的なところで。

 というか、魔力暴走…って、メンタルにひきずられすぎやしませんか。だとしたら、俺、自分で思ってるより、メンタル弱い?

 ……だめじゃん。クリスを支えたくて、クリスの力になりたくて、クリスを守りたくて、クリスの傍にいたいから、ここにいるのに。

 でも、メンタルの鍛え方なんて、俺知らない。人によっては「気合だ!」とか、「周りを気にしすぎない」とか言う人いるけど、ちょっとね…違うと思うし。
 あ、あれか!?「健全な精神は健全な肉体に宿る」とかいうやつか!ん?魂だっけ?でも、つまり、身体が資本ってことだよね。

「クリス」
「ん?」
「俺、身体鍛える!インドア派だから、運動なんて体育の授業くらいしかしなかったけど、とにかく鍛える!なにしたらいい?あれかな、まずは走り込みとか!?」
「いや、まて、落ち着け」

 待てと言うなら待ちますとも。
 でもクリスは肩を揺らして笑い始めてしまった。

「とりあえず、何がどうなってそうなった?」
「え?んー、ティーナさんが格好良くて」
「ん?」
「それで、すごいな、って。俺、あの人に何も言い返せなくて。だから、精神……心?を、鍛えなきゃ、な、って。そしたら、感情とかもコントロールしやすいんじゃないかな、って」
「それがどうして身体を鍛えることにつながるんだ?」
「健全な精神は健全な肉体に宿るから!」
「………」

 あ、クリスがこめかみを押さえた。
 ふぅ、って、一度息をついてから、俺を抱きしめたままクリスが起き上がったから、俺はクリスにしがみつくような形になって、伸ばした足の上に向かい合うように座らされた。

「アキの国の言葉?」
「うん」
「………まあ、否定は、しないが」
「でしょ?そしたらさ、魔力暴走とかも、しなくなるかもでしょ?」

 暴走しなかったら、クリスに怪我させることもないんだよ。
 なんとなくクリスの寝間着の合わせを開いた。包帯はやっぱり痛々しい。
 多分、一番ひどいのはお腹のところ。包帯の下のガーゼのようなものの量が多いのか、少し膨らんでいるから。
 胸にも包帯が巻かれている。それに、よく見れば、身体のあちこちに大小様々な切り傷のようなものができていた。

 …最初の暴走のときも、クリスは全身で俺を止めてくれた。あちこちに怪我をしながら。

 どんな状況だったのかは、俺は全く覚えてなくてわからない。
 でも、クリスは、自分が怪我をすることなんて厭わずに俺を抱きしめてくれていたんだろうなってことは分かる。
 俺のせいでクリスに怪我をさせたくない。かすり傷だ、すぐ治る、…って言われても、俺が怪我をさせた事実には変わりない。

 正直、メンタル強くすれば、魔力暴走が起きなくなるのかは…わからない。
 でも、俺がクリスを傷つけないためには、魔力暴走を抑えるか、俺が治癒魔法を使えるようになるかの二択しかないわけで。

「アキ」

 胸元の包帯の上から唇を押し当てた。


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