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愛しい人を手に入れたい二人の話

男爵に全てを暴露し許しを請う十歳児①

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◆side:アベルシス

「アベル、レイはどこ?」
「今、セレスのお父さんたちにご挨拶してるよ。だから僕と一緒に遊ぼうね」
「うん!」

 あの運命のお茶会のときから五年が経った。
 僕とレイはあれから何度もカレスティア領を訪れていて、セレスの家族からは仲のいいお友達として認められている。
 セレスもベニート公爵家うちに遊びに来る。使用人たちには僕の大切な友人だから粗相のないようにと、しっかり言い含んである。
 ……最も、セレスがうちに来るときは必ずレイもいるから、粗相のしようがないのも事実。王族相手に仕出かすような使用人は使えないからね。

「あと二年で学院に入学だけど、セレスは準備進んでる?」
「うーん?…あのね、ぼく、行かないよ?」
「え、なんで」
「だって、学院、遠いし、お金かかるでしょ?」

 こてんと首を傾げるセレスが可愛すぎて鼻血出るかと思った。

「ああ…。学院には寮があるから遠くても大丈夫なんだよ。それに、貴族の子供は必ず行かなきゃならないんだ。僕とレイも一緒だから、なんにも心配いらないんだよ?」
「ほんと?」
「うん?」
「ほんとに、アベルもレイも一緒?」
「もちろん。僕たちは王都に家があるから寮がじゃなくて通いになると思うけど、セレスの部屋に入り浸っちゃうから。一緒だね?」
「それなら、行ってもいいかも!」
「うんうん」

 ふわふわのセレスの髪を撫でて、それから頭を撫でて。ちゅ、って頬にキスをしたら嬉しそうに笑ってキスを返してくれる。
 ……ああ、まじ可愛い。ほんと天使。
 くりくりのエメラルドの瞳は澄んでて綺麗だし、肌は白いしぷにぷにだし、唇はふっくらしてて気持ちいいし可愛いし。
 もうほんとセレスは可愛い。この子は絶対僕たちのセレスだよ。
 兆候もなにもないけど、これだけ華奢で可愛らしくて愛らしくて、そんなセレスが花籠持ちじゃないなんてありえないんだから。
 早く僕たちの為にお腹に花を咲かせてほしいなぁ。





◆side:レイナルド

「ようこそおいでくださいました、殿下」
「いつも前触れもなしに訪れて迷惑を掛ける」
「いえいえ。セレスティノも楽しそうですし。殿下のご友人になれたことを誇らしくも思いますよ」

 カレスティア男爵。
 笑ったときの目元がセレスによく似ている。
 男爵夫人も温和な方だし、嫡男であるセレスの兄は五歳上か。
 俺は自分についてきている護衛を部屋の外に出した。
 室内にはセレスの家族と俺だけになった。

「殿下?」

 さっさと終わらせて早くセレスのところに行こう。
 俺は軽く指を動かし、セレスの家族と俺を包み込む防音結界を張った。
 セレスの家族は魔力の動きに敏感ではないらしく、俺が魔力を使ったことにも気づいていないようだった。

「単刀直入に言う。俺、いや、私は、学院卒業後にセレスティノを貰い受けるつもりでいる」
「……は?」

 意味がわからないのは仕方ない。
 俺は王族らしく、少々威圧を含んだ態度を取った。

「…それは、どういう意味でしょうか…?」
「そのままの意味だが」
「ですが、正妃にしても、側近にしても、子爵、男爵家の者は相当優秀な者でなければなることができません。セレスティノは多少魔力が多いようですが、それだけです。飛び抜けて優秀ということもない」
「私がセレスティノを欲しいと望んだんだ。けれどそれは正妃としてでもない。正妃には据えない。側近としても扱わない」
「…愛妾にすると、殿下は仰っているのですか」

 夫人の質問は当然のものだった。
 子爵男爵家の者は正妃にはなれずとも、愛妾として城に召し上げることができる。……けれどそれは、正妃に子が宿らなかった場合のみだ。

「愛妾にするつもりもない」
「では、どういうことなのでしょう」
「私は城の中でセレスを囲う。そしてセレスには私達の子を孕んでもらう」
「っ、お言葉ですが、セレスが花籠持ちだとはまだ――――」
「セレスは間違いなく花籠持ちだよ、男爵。私にはその確信がある」

 俺の子、すなわち次代の王となる子。正統な王族の血を継ぐ子。それは本来正妃との間にできる子だ。

「男爵、これは本来、王族の外には出さない話だ。…ここで私が話すことは忘れてほしい。――――王族に嫁ぐ者は、その多くが精神に異常を来したり、花籠が枯れるという状態に陥るんだ」
「!」
「だから、王族は兄弟が少ない。多くても二人、よくて一人。……歴代の王の中には、正妃に子が授からず、愛妾も五人目にしてようやく子を授かったということもあったらしい」

 これは、俺がセレスを正妃にも愛妾にも据えたくない最大の理由。
 恐らく、王族の悪しき慣習なんだろう。

「原因は恐らく、恐怖、羞恥、不信、そんな感情を嫁いできた者が抱えるからだと考えている」
「……恐怖?」
「王や王太子の閨には、必ず監視がつく。…一人や二人ならば恐らく他国でも行われていることだろうが、この国では十名ほどもいるらしい。しっかりと王や王太子の種付けがされているかを確認するために必要だと言うことだ。その際、花嫁が快楽を得やすいように、閨の最中にその監視が花嫁の体を愛撫することもあるそうだ。時には薬を飲ませ強引に快楽を引き起こす。……初夜にそんな扱いを受ければ、正常な感覚ならば狂うだろうな。己の夫に抱かれながら他人からも犯されているようなものだ。……現に私の母は今では生きた人形だ。花籠は私を産み落としたあとに枯れ落ちたと聞く。……ああ、婚姻式の時に花嫁が自らの花籠を祭壇で皆に見せるという馬鹿げたこともするらしいな。……陰部を見せることと変わりないことだろうに」
「……参列者の前で、ですか……?」
「当然。ほとんどの上位貴族が見ている中、自ら衣を寛げ、花籠を晒すんだ」
「そんな……そんなこと……」

 夫人の顔色は青褪め、体が震えだした。



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