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本編
友兄に、聞かなきゃ…!
しおりを挟む「もう少しキスをしていていい?」
友兄がベッドに座った。
ギシって音に、もっと心臓がうるさくなって死にそう。
友兄は俺の答えを聞く前に、体を倒してきていて、友兄の重みがまた俺の心臓を壊しに来た。
嫌じゃない。全然嫌じゃない。むしろ嬉しい。
大人なキスをされて腰砕けにされて、お姫様抱っこで運ばれた先はベッドの上。
……耳の奥で、颯に言われたことがぐるぐる響く。
「理玖?」
長い指に頬を撫でられて、ゴクリ……って生唾を飲んでしまった。
「い……いいけど……、でも、あのさっ」
「なに?」
友兄のどこまでも優しい目。それから、止まることを知らない指先は、頬をくすぐったかと思えば髪を梳いて、目元の多分涙の跡を辿る。とても忙しい。
「……友兄は」
「うん?」
友兄は片手で自分の体を支えているから、友兄の重みが全部俺にかかってるわけじゃない。だけど、体温は伝わってくるし、間近で友兄の顔も見える。……すぐ、キスできそうなくらい、近く。
ばっくばっく煩い心臓を自覚してる。それから、顔がどんどん赤くなってるだろうことにも気づいてる。
でも、聞かなきゃ。
はっきりさせなきゃ。
「友兄………、俺のこと、抱きたいって……思う?」
「は?」
目をまんまるにして、友兄が驚いた。
あんなに忙しなかった指が、ピタリと止まってしまう。
「理玖……いきなりどうしたの」
違う……のかな。
友兄がこんなに驚くなんて。
「…颯に聞いて…」
自分じゃたどり着かなかったこと。
颯に言われて『そうなのか』って納得しちゃったけど、本当は違ったりしてるんだろうか。
友兄はなんだかとても複雑そうな顔をしていた。
「…どう、なの?」
ドキドキしながら、言葉にした。
友兄は困ったような思案顔になったけど、軽く息をついて、ふ…っと微笑んだ。
「抱きたいと思っているよ」
「っ!」
「理玖の全身にキスをして……この体に俺を満たしたい」
もうもう、顔どころか、耳も首筋も、全部熱い。多分真っ赤になってるやつ。
すぐにいい返しなんて出てこなくて、口をパクパク動かしてしまったくらい動揺してしまった。
……けどさ、そう言われて、全然嫌じゃないってことは、俺は友兄のこの言葉を受け入れてるってことだよね?
「いい、よ」
「理玖?」
「俺………その……やり方とか、全然、わかんないけど…………えっと…、友兄に…なら、何をされても平気…だと思う」
「理玖……」
「友兄の方が嫌になるかもしれないけど……っ!!」
声が上ずる。
ううう。
心臓が口から出そう。
顔はもうもうとんでもなく熱い。
……はっ。
これってまさか、俺から誘った…ってことになるの!?
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