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竜司と子猫の長い一日
竜司は子猫の涙を舐めて後悔する
しおりを挟む俺に手を引かれる子猫を見る。
どこかぼうっとしてるような表情だが、伏せられた目元も、僅かに開いたプクリとした唇も、酷く扇情的で愛おしい。
乳首は存在を主張し赤く勃ち上がり、白のレースに覆われたペニスも、布地を押し上げて起立したまま。
歩く姿だけで艶めかしい……なんて思えてしまう俺はかなりまずい。そもそも一度の射精だけで萎えるはずもない俺のペニスは、未だに完勃ち状態だ。子猫のしおらしい姿を見るだけで欲情が止まらないらしい。
「のぞみ、足元気をつけろよ」
「うん」
バスルームに入ってから、子猫はまた周りを観察し始めた。……これはすでに子猫の習性だな。
子猫は黒い床や壁から浴槽に目を走らせ、そこで止まった。
何やら考えてるような顔だが、俺にも思いあたるフシがある。
「……お前、今ラブホの風呂みたいだなとか思っただろ」
「え。なんでわかるの」
「俺も最初に思ったからだよ」
子猫が驚いたように俺を見た。
それからなんとなく、二人同時に笑い出す。
「きっと黒色がエロく感じるんだよ」
「だろうな。ったく…。誰の趣味なんだか」
「浴槽まで黒いと入浴剤入れてもわかんないね」
「お前が蜜を吐き出したらよく目立つだろうな」
それはそれで楽しそうだ。
それをネタにからかってやれば、子猫は顔を真赤にさせながら、俺の腕の中で両手足バタバタさせるに違いない。
そんな妄想を抱きつつ、子猫を後ろから腕の中に閉じ込めた。そのまま手を伸ばし、子猫のペニスを下着越しに軽く握る。詰めた吐息がまた可愛い。
「……オヤジ臭っ」
「ほっとけ」
俺も自覚してるんだから。
そんな事を言うから仕返し……と、耳の下あたりに軽く吸い付き舐めた。子猫の体が微かに震えた。跡は残っていないのが残念だ。
湯に浸かるか確認した。子猫は小さすぎるから溺れるだろ…と、少しからかっただけで子猫はすぐにムキになる。
「………意地悪だっ」
「どうものぞみのことは弄りたくなるんだよな。……やっぱり子猫だからか」
好きな子はいじめたくなるのと同じかもしれんし、じゃれついてくる子猫が可愛すぎるのも原因かもしれんし。
「まあ、入るのは明日でも良いな。のぞみ、体洗おうか」
からかいすぎるのもよくない。子猫が機嫌を悪くする。今ならまだ可愛らしく不貞腐れた子猫で落ち着いてるが、これ以上は駄目だ。
可愛らしく口を尖らせる子猫を壁際まで誘導した。
浴室に設置してある鏡に、子猫と俺の姿が映り込む。……こうしてみると体格差がすごいな。完璧な大人と子供だ。
……あんまりがっついた顔をしてらすぐにバレる。さりげなく、子猫の視線を鏡から外させた。
ここには色々道具を置いてある。
今日は本格的な腸洗浄はいらないとして、注射器とローションくらいでいいか。
棚には道具の他にボディソープやオイルも色々揃っている。
この可愛い子猫には甘い香りが似合うだろうか。
「のぞみ、甘い香りとか好きか?」
「竜司さんの匂い?」
「え?」
「え?」
俺の匂い?
意味が分からなくて子猫を凝視してしまった。
香水も何もつけてはいないんだが。
……そういえば、さっき子猫がやたらと俺の体に顔をつけていたな。
「ああ……。さっき匂い嗅いでたよな」
「うん。そしたら甘い匂いしたから」
あまりにも子猫に欲情しすぎたか?それが甘く感じられたなら、子猫の嗅覚が発達しすぎてるってことになるが。
「そのことじゃなくて?」
不思議そうに聞いてくる子猫。
……まあ、追求はいいか。考えても無駄だ。
「ボディソープのこと。無香料もあるけどのぞみなら甘い香りが好きそうだなと思ってな」
ボトルの蓋を開け、子猫にむけた。
くん…って嗅いだ子猫は、少し綻んだ顔をしたが、ただそれだけだった。
嬉しそうでも、使いたそうでもない顔。
甘い香りを嗅いだときに顔が綻ぶのと同じもの。
「うん。好き。でも、竜司さんの匂い、これじゃない」
「だろうな。俺はこのソープは使わないから」
まあ、俺の匂いのことは置いておこう。
子猫が嫌いな匂いじゃなかっとんだから、一安心ってとこだ。
まあ、嫌そうじゃないから、子猫の体を洗うのにこれを使おうか……と、手の届くところに置いたときだった。
「竜司さんが使わないなら誰が使うの」
低い、少し震えた声だった。
それはまるで、以前にここを使った者に対する嫉妬のよう。他人のために用意されたものは使いたくないという嘆きのようなもの。
おそらく、子猫自身もその言葉を発したのは無意識だったらしく、一瞬で顔が青ざめた。
「のぞみ」
「ごめんなさい……っ、今の、聞かなかったことにしてください……っ」
すっかり慣れた口調で話していたのに、突然敬語に戻った子猫。
愛を知らない子猫は、愛されるために顔色をうかがう。気に入られるために、愛されるために、相手の嫌がることはしないし、言わない。本心を隠して、そうやって、ずっと。
声を殺して、嗚咽も漏らさず、ただ涙を流し続ける。
お願いします
嫌わないで
もう言わないから
そんな言葉が聞こえてきそうなほど、悲しく辛い涙だった。
「のぞみ」
小さな小さな子猫の体を抱きしめる。
首筋に顔を押し付ければ、子猫からも僅かな甘い香りを感じた。
「悪かった。俺がデリカシーの欠片もなかったな。謝るから、許してくれ」
「りゅ、じ、さん」
愛されたい子猫だとわかっていたのに。
人一倍、自分だけに向けられる愛情を欲していた子猫なのに。
俺はそれに気づいていたのに。
不用意なことしかできない自分に腹が立つ。
「そうだよな。嫌だよな。今度のぞみ用の、のぞみが好きなもの買いに行こう。なんなら明日行くでも良い。今日は無香料の方使おうな?」
「う、ん」
震える背中をゆっくり、ゆっくり、叩く。
「道具も全部のぞみ用に買い揃えるから。今まで使ってやつは捨てる。これから揃えるものは全部のぞみ用だ」
「ぼく、の」
全部、子猫のために用意しよう。子猫のためだけのものだ。
「ああ。このバスルームを使うのも、これからは俺とのぞみだけ。なんならベッドも買い替える。全部のぞみの思うようにするから、もう泣くな」
子猫の両手がおずおずと俺の背に回った。
「りゅうじ、さん」
「涙止まったか?」
「うん」
埋めていた首筋から顔をあげると、まだ目尻を濡らした子猫と目があった。ついさっきの悲愴さを滲ませた泣き顔はもうなく、少し困ったようなはにかんだ笑顔をみせていた。
完全に乾いていない涙を何度も唇で拭う。
目尻も、目元も。
瞬きで落ちた涙を舐めたとき、塩辛さと独特な青臭さを感じて顔をしかめる結果になったが。
「あー……くそっ」
「なに」
そうだよ。
さっき、子猫の顔にかけたじゃねぇか。
あー……油断したっ。
子猫の涙だけ舐め取るつもりだったのに……!
先に顔だけでも洗っておけばよかった。
シャワーのお湯をかけながら、子猫の顔を優しく洗った。丁寧に、丁寧に。
「のぞみ、口直しさせて」
「ふぇ」
シャワーをフックに戻し、子猫の唇に貪りついた。
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