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「あらあら、アナタ。手間取っているようですわね」
状況が分かっていないクリスティーヌは私の目を見ながら、バイデルのことをさも親し気に「アナタ」なんて呼んだ。まるでクリスティーヌは私に対してバイデルは私よりもクリスティーヌの親密な関係であると見せつけているようだった。そんな彼女がのんきに近づいてくるのに対して、私とエディが気を取られていたその時、
「はあっ!!」
バイデルがランタンをエディに投げつけた。エディの反応が遅れ、彼が一瞬怯んだ隙を見計らって、ろうそくを本棚へ投げる。・・・・・・が、
「くっ」
バイデルは悔しがる。
彼のイメージだと、一気に燃え上がると思ったのだろう。けれど、それは物語の見過ぎであろう。
湿気臭いこの地下書庫では火はさほど大きく燃えず、バイデルは悔しがりながらも、クリスティーヌのいる出入り口の方へと走って行く。
「えっ? えっ? えっ?」
困惑するクリスティーヌ。
「どけっ」
そんな彼女を払いのけ、自分だけ逃げようとするバイデル。
「えっ、婚約者を残して逃げるんですか、アナタっ!?」
「今はそれどころじゃないっ」
「もうっ!! 大事な話でしょ? さっき、お姉様と婚約破棄したから私と婚約するって言ってくれたじゃないっ。それなのにひどいわっ」
クリスティーヌには色々と言いたいけれど、今はそれどころじゃない。バイデルを追わないと。私はエディに「一緒に追いかけましょう」と伝えようとすると、
「くっ」
エディはランタンの火やガラスを払いながら、バイデルとちらちらと小さな火を恨めしそうに見ている。それを見て、私は今まで頭が回らなかった分、倍速で頭が回ったのか一瞬でエディの考えていることがわかった。エディはきっとエリザベートという女性の記録を探しており、可能性が低かったとしても今燃え掛けている書類がその記録なのかどうか気が気じゃないのだろう。
「エディ、火は任せてっ、だから、彼を追ってっ!!」
「わかった・・・頼む」
どれくらいの年月の間、彼がこの事件を、その書類を探して来たのかわからないし、彼がどれだけその女性を大切に想っていたのかも分からない。けれど、その想いはとても大きなものだったにちがいないことは私にも想像できた。エディはそんな感情を押しつぶしたような声で私に依頼して、速やかにバイデルを追った・・・追ってくれた。一瞬私を見た彼の瞳はいつものように澄んでいて、私に任すのに一瞬の迷いもなかった。その信頼が私は嬉しかった。
私は速やかにローブを使って火を消しに行く。書類は少し濡れてしまったけれど、鈍い私でも一瞬でかき消すことができた。
状況が分かっていないクリスティーヌは私の目を見ながら、バイデルのことをさも親し気に「アナタ」なんて呼んだ。まるでクリスティーヌは私に対してバイデルは私よりもクリスティーヌの親密な関係であると見せつけているようだった。そんな彼女がのんきに近づいてくるのに対して、私とエディが気を取られていたその時、
「はあっ!!」
バイデルがランタンをエディに投げつけた。エディの反応が遅れ、彼が一瞬怯んだ隙を見計らって、ろうそくを本棚へ投げる。・・・・・・が、
「くっ」
バイデルは悔しがる。
彼のイメージだと、一気に燃え上がると思ったのだろう。けれど、それは物語の見過ぎであろう。
湿気臭いこの地下書庫では火はさほど大きく燃えず、バイデルは悔しがりながらも、クリスティーヌのいる出入り口の方へと走って行く。
「えっ? えっ? えっ?」
困惑するクリスティーヌ。
「どけっ」
そんな彼女を払いのけ、自分だけ逃げようとするバイデル。
「えっ、婚約者を残して逃げるんですか、アナタっ!?」
「今はそれどころじゃないっ」
「もうっ!! 大事な話でしょ? さっき、お姉様と婚約破棄したから私と婚約するって言ってくれたじゃないっ。それなのにひどいわっ」
クリスティーヌには色々と言いたいけれど、今はそれどころじゃない。バイデルを追わないと。私はエディに「一緒に追いかけましょう」と伝えようとすると、
「くっ」
エディはランタンの火やガラスを払いながら、バイデルとちらちらと小さな火を恨めしそうに見ている。それを見て、私は今まで頭が回らなかった分、倍速で頭が回ったのか一瞬でエディの考えていることがわかった。エディはきっとエリザベートという女性の記録を探しており、可能性が低かったとしても今燃え掛けている書類がその記録なのかどうか気が気じゃないのだろう。
「エディ、火は任せてっ、だから、彼を追ってっ!!」
「わかった・・・頼む」
どれくらいの年月の間、彼がこの事件を、その書類を探して来たのかわからないし、彼がどれだけその女性を大切に想っていたのかも分からない。けれど、その想いはとても大きなものだったにちがいないことは私にも想像できた。エディはそんな感情を押しつぶしたような声で私に依頼して、速やかにバイデルを追った・・・追ってくれた。一瞬私を見た彼の瞳はいつものように澄んでいて、私に任すのに一瞬の迷いもなかった。その信頼が私は嬉しかった。
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