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第3話アンラッキー&ハッピー
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「拓未か…」
あいつが変なことを言うから、カラオケ中もちらちらあいつの顔が頭をよぎってきた。そして、友達と別れて歩いている今も。
全く、もってうざい。
「呼んだか」
「わーーっ‼」
「…びっくりするのは、もういい…か?」
耳を塞いでいた拓未が、叫び終わった私に恐る恐る話しかけてくる。
「なんで、いんのよ」
「いや、それは…」
拓未の後ろから幼女が出てきた。
「誘拐犯?」
「いやいや、どちらかと言えばゆかいや~んだ。…いや、スマホ出さないで、マジでシャレにならんから」
「んで、どうしたの、その子」
「いや~、家の鍵を失くしてしまったらしい」
「…こん、にちは」
「あら、かわいいじゃない。こんにちは」
頭を撫でてあげる。
「あんたってほんと人がいいよね」
「天使のような人間だからな」
「はいはい」
こういうのって、時間が経てば経つほど見つからないんだよね…。
「じゃあ、私行くわ。がんばっ」
「手伝って」
「じゃあね~」
立ち去ろうとすると、スカートが引っ張られる。
「どれぐらい探したの、拓未」
「…1時間くらいだ」
「それもう、諦めた方がいいレベルだと思うけど」
「そっ、それは…」
幼女は今にも泣きそうだ。
「ねぇ、お嬢ちゃん。このお兄さん馬鹿だから、あなたが満足するまで探してくれると思うよ。でも、お母さんに迷惑かけるのと、この知らないお兄さんどっちに迷惑かけるの、どっちがいいの?」
「うっ、うへぇん…」
「いや、俺のことはいいから」
「ちゃんと、お願いはした?」
「して…ない…」
「ちゃんと、お願いしなさい。まずお兄ちゃんに」
幼女は拓未の方を見る。
「お兄ちゃん…もう少し探すのを手伝ってくれる?」
「もちろんだ」
拓未も笑顔で親指を立てる。
「お姉ちゃんも…その…探すの手伝って」
「う~ん、やだ」
私はナイスなスマイルで二つ返事で答える。
「いや~、良かったな」
「ほんとにね」
私たち二人は肩を並べて歩く。
「杏が手伝うの嫌だって言ったときはびっくりしたけど」
「1時間探してなきゃ、誰かが持って行った可能性が高いでしょ。交番に届けたか、なくてもお巡りさんにあとはお任せ。まさか、あの子のお母さんとも鉢合わせのは想定外だったかな」
「さすがは杏だ、我らの救世主」
拓未は感心してふむふむと頷く。
「でも、良かった」
「私も飲み物もらっちゃったし、ラッキー」
3人で交番まで歩くと、彼女の母親もなかなか帰ってこない娘を心配して交番に来ていた。おまけに鍵も届いており、お礼に缶ジュースをもらった。
私だけ。
「拓未って恵まれてないね」
「そうか、感謝されたぞ」
「でも、あのお母さん。私にばかりお礼を言って、あまり拓未を見てなかったじゃん」
「ん~、まぁ、いたいけな少女だからな。男の俺が連れてるよりも、なっ」
拓未の顔を見るが、清々しい顔をしていた。
「まぁ、あんたの発言ちょっときもいしね。でも、あんたが1時間くらい頑張って、私なんか、探してた場所から10分ぐらい一緒に歩いただけで、私だけジュース貰ったわけだけど」
その聖人のような立ち振る舞いが悔しくて悪態をつく私。
「えっ!?分ける気ゼロ?」
「だって、私の口ついてるじゃん」
「むしろ、御褒美だが」
「マジ、きもっ」
拓未のこういうところは本当に面倒くさい。ただ…雑に返してもこいつは慕ってくる。そういった意味では気が楽だ。
にしても、拓未は色々頑張ってもその発言のせいか正当に評価されていない気がする。私は少し不憫になった。
「あんたってさ」
「なんだ?」
「世界から愛されてないね…」
私は言ってしまったあと、拓未の返事がすぐに返事が返ってこないので、さすがに言い過ぎたかと拓未の顔を見る。
「それでも、俺は世界を愛している」
拓未は笑っていた。そして、夕日が重なり私は眩しくて顔をしかめる。
拓未は優しく笑いながら言葉を繋げる。
「それに、杏が助けに来てくれた。だから俺はハッピーだ」
翌朝、私は腹痛に襲われ、救急車で病院に運ばれた。
病名は胃癌だった―――
あいつが変なことを言うから、カラオケ中もちらちらあいつの顔が頭をよぎってきた。そして、友達と別れて歩いている今も。
全く、もってうざい。
「呼んだか」
「わーーっ‼」
「…びっくりするのは、もういい…か?」
耳を塞いでいた拓未が、叫び終わった私に恐る恐る話しかけてくる。
「なんで、いんのよ」
「いや、それは…」
拓未の後ろから幼女が出てきた。
「誘拐犯?」
「いやいや、どちらかと言えばゆかいや~んだ。…いや、スマホ出さないで、マジでシャレにならんから」
「んで、どうしたの、その子」
「いや~、家の鍵を失くしてしまったらしい」
「…こん、にちは」
「あら、かわいいじゃない。こんにちは」
頭を撫でてあげる。
「あんたってほんと人がいいよね」
「天使のような人間だからな」
「はいはい」
こういうのって、時間が経てば経つほど見つからないんだよね…。
「じゃあ、私行くわ。がんばっ」
「手伝って」
「じゃあね~」
立ち去ろうとすると、スカートが引っ張られる。
「どれぐらい探したの、拓未」
「…1時間くらいだ」
「それもう、諦めた方がいいレベルだと思うけど」
「そっ、それは…」
幼女は今にも泣きそうだ。
「ねぇ、お嬢ちゃん。このお兄さん馬鹿だから、あなたが満足するまで探してくれると思うよ。でも、お母さんに迷惑かけるのと、この知らないお兄さんどっちに迷惑かけるの、どっちがいいの?」
「うっ、うへぇん…」
「いや、俺のことはいいから」
「ちゃんと、お願いはした?」
「して…ない…」
「ちゃんと、お願いしなさい。まずお兄ちゃんに」
幼女は拓未の方を見る。
「お兄ちゃん…もう少し探すのを手伝ってくれる?」
「もちろんだ」
拓未も笑顔で親指を立てる。
「お姉ちゃんも…その…探すの手伝って」
「う~ん、やだ」
私はナイスなスマイルで二つ返事で答える。
「いや~、良かったな」
「ほんとにね」
私たち二人は肩を並べて歩く。
「杏が手伝うの嫌だって言ったときはびっくりしたけど」
「1時間探してなきゃ、誰かが持って行った可能性が高いでしょ。交番に届けたか、なくてもお巡りさんにあとはお任せ。まさか、あの子のお母さんとも鉢合わせのは想定外だったかな」
「さすがは杏だ、我らの救世主」
拓未は感心してふむふむと頷く。
「でも、良かった」
「私も飲み物もらっちゃったし、ラッキー」
3人で交番まで歩くと、彼女の母親もなかなか帰ってこない娘を心配して交番に来ていた。おまけに鍵も届いており、お礼に缶ジュースをもらった。
私だけ。
「拓未って恵まれてないね」
「そうか、感謝されたぞ」
「でも、あのお母さん。私にばかりお礼を言って、あまり拓未を見てなかったじゃん」
「ん~、まぁ、いたいけな少女だからな。男の俺が連れてるよりも、なっ」
拓未の顔を見るが、清々しい顔をしていた。
「まぁ、あんたの発言ちょっときもいしね。でも、あんたが1時間くらい頑張って、私なんか、探してた場所から10分ぐらい一緒に歩いただけで、私だけジュース貰ったわけだけど」
その聖人のような立ち振る舞いが悔しくて悪態をつく私。
「えっ!?分ける気ゼロ?」
「だって、私の口ついてるじゃん」
「むしろ、御褒美だが」
「マジ、きもっ」
拓未のこういうところは本当に面倒くさい。ただ…雑に返してもこいつは慕ってくる。そういった意味では気が楽だ。
にしても、拓未は色々頑張ってもその発言のせいか正当に評価されていない気がする。私は少し不憫になった。
「あんたってさ」
「なんだ?」
「世界から愛されてないね…」
私は言ってしまったあと、拓未の返事がすぐに返事が返ってこないので、さすがに言い過ぎたかと拓未の顔を見る。
「それでも、俺は世界を愛している」
拓未は笑っていた。そして、夕日が重なり私は眩しくて顔をしかめる。
拓未は優しく笑いながら言葉を繋げる。
「それに、杏が助けに来てくれた。だから俺はハッピーだ」
翌朝、私は腹痛に襲われ、救急車で病院に運ばれた。
病名は胃癌だった―――
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