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本編
5話 月下にて、1日だけ咲く花
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「それは・・・許せないですね」
夕日も沈み、薄暗くなった街路の端で、私はボッドに言われた言葉や態度、婚約破棄した一部始終をクリスに話をした。
気持が高ぶって、順を追って喋れなかった部分やわかりずらい部分もたくさんあったと思うけれど、クリスは相槌を打ちながら、自分のことのように真剣に聞いてくれた。
聞き終わったクリスは、育ちの良さからなのか言葉遣いは丁寧だったが、怒りは隠せていなかった。
「ボッド王子は・・・それでいいと思っているんですか?」
「えぇ・・・。ボッド王子が言う通り、『嘘』はついていないもの」
そう、腹立たしいし、理不尽に感じて私も言い返そうとはした。
悔しいけれど、ボッドの話に筋が通っていた。
「いいや、そんな屁理屈なんてありえないよ。そこにもう一人ボッド王子の味方になる女性がいたから、そう思わされただけさ。シャーロット、君は間違っていない。間違っているのは彼らだ」
まっすぐな瞳。
力強い頼りになる言葉。
「あはっ。あははは・・・・っ」
私は手で顔を覆って下を向いた。
クリスの肯定によって、私は悔しさから解放されて安堵して、嬉しくて、でも、負けるもんかと強がっていた分、悔しくて。
数の暴力とはいえ、自分の正しさを信じられず負けてしまった私。
私一人じゃ、理不尽に抗えないのが悔しくて、無力な自分が情けなかった。
サッ
私は優しさに包まれた気がした。
びっくりして私の涙は止まったけれど、その優しさはクリスであることを理解した。
「君は一人じゃない・・・ボクがいる」
一人称が「私」から「ボク」に変わったクリス。
心の距離も0になった気がした。
(もう・・・迷わない)
彼は私の髪を優しく撫でた。
私の人を信用することに怯えている気持ちはクリスに払われたように微塵もなくなった。
「あとはボクに任せてくれ。シャーロット」
クリスの優しく力強い声。
クリスは私の髪をかき上げて頬を撫でたので、私は彼を見上げる。
クリスの顔は少し好戦的な顔で怖かったけれど、私を守ってくれようとしているその力強い瞳が私の鼓動を加速させる。
「・・・うん」
私は照れてしまって再び彼の胸に顔を預ける。
「でも、今日はもう遅い。家まで送るよ」
そう言って、クリスが私から離れてしまう。
ちょっと、というか、かなり寂しい。
ぽっかりと空いた心に、クリスは優しさを溢れるくらい注ぎ込んでくれた。
離れても、優しさはいっぱいなんだけれど、今日は一度寂しさのどん底に陥った私は愛情に欲張りなようだ。
(愛情・・・ううん、同情かもしれない。でもいいの)
クリスは正義感が強い男性だ。
きっと私じゃなくても困っている人がいれば助ける男性なんだと思う。
それにクリスは恋をしていると言った。
バッ
「シャーロット?」
私はクリスに抱き着いた。
クリスは心配したような声を出す。
ちょっと、かわいい。
私はクリスの温もりを味わう。
クリスの匂いを味わう。
クリスの・・・全てを味わいたい。
(今日だけは・・・いいよね?)
「じゃあ、任せるねっ」
私は元気にクリスにお願いした。
「あぁ、任せてくれとも」
クリスも優しく愛おしい笑顔で返事をしてくれた。
満月に照らされるクリスの顔は神秘的でとてもキレイだった。
夕日も沈み、薄暗くなった街路の端で、私はボッドに言われた言葉や態度、婚約破棄した一部始終をクリスに話をした。
気持が高ぶって、順を追って喋れなかった部分やわかりずらい部分もたくさんあったと思うけれど、クリスは相槌を打ちながら、自分のことのように真剣に聞いてくれた。
聞き終わったクリスは、育ちの良さからなのか言葉遣いは丁寧だったが、怒りは隠せていなかった。
「ボッド王子は・・・それでいいと思っているんですか?」
「えぇ・・・。ボッド王子が言う通り、『嘘』はついていないもの」
そう、腹立たしいし、理不尽に感じて私も言い返そうとはした。
悔しいけれど、ボッドの話に筋が通っていた。
「いいや、そんな屁理屈なんてありえないよ。そこにもう一人ボッド王子の味方になる女性がいたから、そう思わされただけさ。シャーロット、君は間違っていない。間違っているのは彼らだ」
まっすぐな瞳。
力強い頼りになる言葉。
「あはっ。あははは・・・・っ」
私は手で顔を覆って下を向いた。
クリスの肯定によって、私は悔しさから解放されて安堵して、嬉しくて、でも、負けるもんかと強がっていた分、悔しくて。
数の暴力とはいえ、自分の正しさを信じられず負けてしまった私。
私一人じゃ、理不尽に抗えないのが悔しくて、無力な自分が情けなかった。
サッ
私は優しさに包まれた気がした。
びっくりして私の涙は止まったけれど、その優しさはクリスであることを理解した。
「君は一人じゃない・・・ボクがいる」
一人称が「私」から「ボク」に変わったクリス。
心の距離も0になった気がした。
(もう・・・迷わない)
彼は私の髪を優しく撫でた。
私の人を信用することに怯えている気持ちはクリスに払われたように微塵もなくなった。
「あとはボクに任せてくれ。シャーロット」
クリスの優しく力強い声。
クリスは私の髪をかき上げて頬を撫でたので、私は彼を見上げる。
クリスの顔は少し好戦的な顔で怖かったけれど、私を守ってくれようとしているその力強い瞳が私の鼓動を加速させる。
「・・・うん」
私は照れてしまって再び彼の胸に顔を預ける。
「でも、今日はもう遅い。家まで送るよ」
そう言って、クリスが私から離れてしまう。
ちょっと、というか、かなり寂しい。
ぽっかりと空いた心に、クリスは優しさを溢れるくらい注ぎ込んでくれた。
離れても、優しさはいっぱいなんだけれど、今日は一度寂しさのどん底に陥った私は愛情に欲張りなようだ。
(愛情・・・ううん、同情かもしれない。でもいいの)
クリスは正義感が強い男性だ。
きっと私じゃなくても困っている人がいれば助ける男性なんだと思う。
それにクリスは恋をしていると言った。
バッ
「シャーロット?」
私はクリスに抱き着いた。
クリスは心配したような声を出す。
ちょっと、かわいい。
私はクリスの温もりを味わう。
クリスの匂いを味わう。
クリスの・・・全てを味わいたい。
(今日だけは・・・いいよね?)
「じゃあ、任せるねっ」
私は元気にクリスにお願いした。
「あぁ、任せてくれとも」
クリスも優しく愛おしい笑顔で返事をしてくれた。
満月に照らされるクリスの顔は神秘的でとてもキレイだった。
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