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本編
6話 何気ない至福の時間
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ゆっくり歩こうっとどちらが言ったわけでもなかったけれど、私たちはゆっくりと私の家へと向かった。
クリスに会うまでの嫌な足枷があったような足取りではない。
クリスとの一歩、クリスとの一秒。
ボッド王子との沈黙は埋めなければいけない、と必死になっていた私だけれど、クリスとの沈黙は全然苦ではなく、むしろ居心地が良かった。
私たちは、今後どうするかなんて話すら一切せず、一問一答のような短い質問と短い回答をしたり、『星がきれいだね』、『そうね』なんて、簡単な世間話などを交わしたくらいだった。
私はそんなクリスとひと時をゆっくりと踏みしめながら、一緒に歩いた。
クリスは紳士だから、もしかしたら、私に合わせて歩いてくれたのかもしれない。
(私と同じ気持ちだったら・・・いいなぁ)
「着いたわ、クリス」
幸せな時間。
けれど、終わりは必ず訪れる。
(月夜でよかった)
夜ということもあるし、薄暗いということもあるだろうけれど、私は本当に単純なんだろう。
我慢しようとしても私の理性はそろそろおやすみのようで、感情が前面に出ていた。
そんな私の顔をクリスがしっかり見てしまえば、クリスへの想いを隠し切れないだろうと自負していた。
「ここまで・・・本当にありがとう」
「あぁ」
私がお礼を言って手を振ると、右手を上げて応えてくれるクリス。
私は玄関へと向かう。
私は息を吐いて、気持ちを引き締める。
夜にはなったけれど、お父様とお母様に婚約破棄した旨を説明しなければならないのだから。
「シャーロットっ」
私はクリスの声に振り返る。
私が振り返ったことで少し嬉しそうな顔をするクリス。
「なにかしら?クリス」
「今日はよく寝れそうかい,?シャーロット」
クスッと私は笑った。
「えぇ、あなたのおかげでよく寝れそうよ」
「なら、良かった。じゃあね」
「えぇ」
今度は私がクリスの背中を見送る。
「クリスっ!」
クリスは再び微笑みながら振り返る。
「いろいろと、ありがとう!!私はあなたに救われたわっ!!」
「まだボクは何もしていないよ。君の話を聞いただけだよ」
クリスはあっけにとられた顔をしたけれど、少し照れ臭そうにしながら返事をしてくれた。
「それが、嬉しかったのっ」
「じゃあ、ボクも嬉しいよ」
本当にクリスは素敵な男性だ。
「ねぇ、クリス・・・?」
「なんだい?シャーロット」
「この結末がどんなであっても・・・今度は私があなたを応援するわ」
私は胸の前で両手を組んで祈るようにクリスに伝える。
こんなにステキな人に幸せになって欲しい。
だから、彼が好きな人と結ばれるように協力してあげたい。
クリスは夜空を見ながら照れ臭そうに考え込み、そして―――
「気持ちだけもらっておくよ。それと、1ヶ月待っていてくれ。ボクを信じて待てるかい?」
私が頷くと、クリスはにこりと笑って、ゆっくりと夜の闇に去っていった。
クリスに会うまでの嫌な足枷があったような足取りではない。
クリスとの一歩、クリスとの一秒。
ボッド王子との沈黙は埋めなければいけない、と必死になっていた私だけれど、クリスとの沈黙は全然苦ではなく、むしろ居心地が良かった。
私たちは、今後どうするかなんて話すら一切せず、一問一答のような短い質問と短い回答をしたり、『星がきれいだね』、『そうね』なんて、簡単な世間話などを交わしたくらいだった。
私はそんなクリスとひと時をゆっくりと踏みしめながら、一緒に歩いた。
クリスは紳士だから、もしかしたら、私に合わせて歩いてくれたのかもしれない。
(私と同じ気持ちだったら・・・いいなぁ)
「着いたわ、クリス」
幸せな時間。
けれど、終わりは必ず訪れる。
(月夜でよかった)
夜ということもあるし、薄暗いということもあるだろうけれど、私は本当に単純なんだろう。
我慢しようとしても私の理性はそろそろおやすみのようで、感情が前面に出ていた。
そんな私の顔をクリスがしっかり見てしまえば、クリスへの想いを隠し切れないだろうと自負していた。
「ここまで・・・本当にありがとう」
「あぁ」
私がお礼を言って手を振ると、右手を上げて応えてくれるクリス。
私は玄関へと向かう。
私は息を吐いて、気持ちを引き締める。
夜にはなったけれど、お父様とお母様に婚約破棄した旨を説明しなければならないのだから。
「シャーロットっ」
私はクリスの声に振り返る。
私が振り返ったことで少し嬉しそうな顔をするクリス。
「なにかしら?クリス」
「今日はよく寝れそうかい,?シャーロット」
クスッと私は笑った。
「えぇ、あなたのおかげでよく寝れそうよ」
「なら、良かった。じゃあね」
「えぇ」
今度は私がクリスの背中を見送る。
「クリスっ!」
クリスは再び微笑みながら振り返る。
「いろいろと、ありがとう!!私はあなたに救われたわっ!!」
「まだボクは何もしていないよ。君の話を聞いただけだよ」
クリスはあっけにとられた顔をしたけれど、少し照れ臭そうにしながら返事をしてくれた。
「それが、嬉しかったのっ」
「じゃあ、ボクも嬉しいよ」
本当にクリスは素敵な男性だ。
「ねぇ、クリス・・・?」
「なんだい?シャーロット」
「この結末がどんなであっても・・・今度は私があなたを応援するわ」
私は胸の前で両手を組んで祈るようにクリスに伝える。
こんなにステキな人に幸せになって欲しい。
だから、彼が好きな人と結ばれるように協力してあげたい。
クリスは夜空を見ながら照れ臭そうに考え込み、そして―――
「気持ちだけもらっておくよ。それと、1ヶ月待っていてくれ。ボクを信じて待てるかい?」
私が頷くと、クリスはにこりと笑って、ゆっくりと夜の闇に去っていった。
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2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)
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