11 / 59
本編
10話 愛と覚悟
しおりを挟む
「だっ、旦那様っ、たっ、大変です」
1人の執事が息を切らしながら私たち家族が集まっているところにやってきた。
「どうしたんです?そんな、血相を変えて」
お母様が心配そうに、その執事の顔色を伺う。
「民が急に商売や移動が制限されて、どうなっているんだと、押しかけて来ています」
「なんだと!?」
執事の言葉にお父様がびっくりする。
「今は門番がなだめていますが、いつ流れ込んでもおかしくありません」
私たちはは目を合わせて、門へと急ぐ。
◇◇
「おいどうなってるんだ!」
「説明しろ!!」
「領地から出れないんですけれど~~~」
老若男女、多くの領民たちが門の前で不満の声を叫んでいる。
数の暴力とは言わないが、多勢に無勢で門番は腰が引けている。
「よくやった。皆を中に入れてくれ」
お父様は後ろから門番の肩を叩くと、門番はほっとして涙目になる。
ギイイイィッ
門を開けると、領民たちがぞろぞろと入ってくる。
お父様の誠意ある対応のおかげか騒ぐのは止めて、ゆっくりと入ってくる領民たち。
しかし、不満の渦は声になっていなくても、いつも優しく笑顔があふれる領民のみんなの熱気のようなオーラは異様だった。それほど、うちの領地は交易が盛んで依存しており、みんなの不安の表れなのだろう。
庭に集めた領民を前へ父が立つ。
「みんな、どうした」
「どうしたじゃないですよ、ゼロス様。これはどういうことなんですかっ!?どこも俺たちの毛織物も工芸品も買い取るには、馬鹿みてえな賃金しか渡せねぇって言ってきた」
「そうよ、一生懸命作ったキレイなこのドレスにだって、ほんのわずかなお金しかならないって言われたのよ?」
先頭の方にいた女性はシルクの煌びやかなドレスを見せてくる。
「これは見事だ。過去一番のできなんじゃないか?」
「・・・そうよ」
父上がドレスを触って「うん、素晴らしい」と肌触りを確かめる。
「いったい何があったんですか?ゼロス様。そこにおられるシャーロット様とボッド王子の婚約が決まって、この領地はいっそう栄えるとおっしゃっていたじゃないですか・・・」
私は青年と目が合って、思わず下を向く。
ボッド王子が正妻と意地悪な目で見てきたことを思い出してしまった。
そんな私を見て、お父様が労わるような優しい目をして、私の肩に手を置く。
そして、決意をしたお父様は一息つき、キリっとした領主の顔になる。
「みんな・・・聞いてくれ。実は、今回ボッド王子との婚約を破棄してきた」
ざわつく領民のみんな。
視線が・・・痛い。
私の心臓はきゅーーーっと締め付けられるように小さくなる気がした。
「みんな!!!」
そんな領民のみんなの動揺に対して、お父様は大声で再びみんなの視線を集める。
「ボッドは俺の娘のシャーロットを侮辱した・・・っ。約束を捻じ曲げた・・・っ。シャーロットを蔑ろにしたということはこの領地の全てを侮辱したに等しい!!!奴らとこのままの関係を続けることは、搾取される道しかない。だから、こっちから断絶を申し入れたっ!!!」
力強いお父様の声。
驚く領民たち。
私は・・・
1人の執事が息を切らしながら私たち家族が集まっているところにやってきた。
「どうしたんです?そんな、血相を変えて」
お母様が心配そうに、その執事の顔色を伺う。
「民が急に商売や移動が制限されて、どうなっているんだと、押しかけて来ています」
「なんだと!?」
執事の言葉にお父様がびっくりする。
「今は門番がなだめていますが、いつ流れ込んでもおかしくありません」
私たちはは目を合わせて、門へと急ぐ。
◇◇
「おいどうなってるんだ!」
「説明しろ!!」
「領地から出れないんですけれど~~~」
老若男女、多くの領民たちが門の前で不満の声を叫んでいる。
数の暴力とは言わないが、多勢に無勢で門番は腰が引けている。
「よくやった。皆を中に入れてくれ」
お父様は後ろから門番の肩を叩くと、門番はほっとして涙目になる。
ギイイイィッ
門を開けると、領民たちがぞろぞろと入ってくる。
お父様の誠意ある対応のおかげか騒ぐのは止めて、ゆっくりと入ってくる領民たち。
しかし、不満の渦は声になっていなくても、いつも優しく笑顔があふれる領民のみんなの熱気のようなオーラは異様だった。それほど、うちの領地は交易が盛んで依存しており、みんなの不安の表れなのだろう。
庭に集めた領民を前へ父が立つ。
「みんな、どうした」
「どうしたじゃないですよ、ゼロス様。これはどういうことなんですかっ!?どこも俺たちの毛織物も工芸品も買い取るには、馬鹿みてえな賃金しか渡せねぇって言ってきた」
「そうよ、一生懸命作ったキレイなこのドレスにだって、ほんのわずかなお金しかならないって言われたのよ?」
先頭の方にいた女性はシルクの煌びやかなドレスを見せてくる。
「これは見事だ。過去一番のできなんじゃないか?」
「・・・そうよ」
父上がドレスを触って「うん、素晴らしい」と肌触りを確かめる。
「いったい何があったんですか?ゼロス様。そこにおられるシャーロット様とボッド王子の婚約が決まって、この領地はいっそう栄えるとおっしゃっていたじゃないですか・・・」
私は青年と目が合って、思わず下を向く。
ボッド王子が正妻と意地悪な目で見てきたことを思い出してしまった。
そんな私を見て、お父様が労わるような優しい目をして、私の肩に手を置く。
そして、決意をしたお父様は一息つき、キリっとした領主の顔になる。
「みんな・・・聞いてくれ。実は、今回ボッド王子との婚約を破棄してきた」
ざわつく領民のみんな。
視線が・・・痛い。
私の心臓はきゅーーーっと締め付けられるように小さくなる気がした。
「みんな!!!」
そんな領民のみんなの動揺に対して、お父様は大声で再びみんなの視線を集める。
「ボッドは俺の娘のシャーロットを侮辱した・・・っ。約束を捻じ曲げた・・・っ。シャーロットを蔑ろにしたということはこの領地の全てを侮辱したに等しい!!!奴らとこのままの関係を続けることは、搾取される道しかない。だから、こっちから断絶を申し入れたっ!!!」
力強いお父様の声。
驚く領民たち。
私は・・・
0
あなたにおすすめの小説
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアーティアは、継母に冷酷無慈悲と噂されるフレイグ・メーカム辺境伯の元に嫁ぐように言い渡された。
継母は、アーティアが苦しい生活を送ると思い、そんな辺境伯の元に嫁がせることに決めたようだ。
しかし、そんな彼女の意図とは裏腹にアーティアは楽しい毎日を送っていた。辺境伯のフレイグは、噂のような人物ではなかったのである。
彼は、多少無口で不愛想な所はあるが優しい人物だった。そんな彼とアーティアは不思議と気が合い、やがてお互いに惹かれるようになっていく。
2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)
侯爵令嬢は追放され、他国の王子様に溺愛されるようです
あめり
恋愛
アーロン王国の侯爵令嬢に属しているジェーンは10歳の時に、隣国の王子であるミカエル・フォーマットに恋をした。知性に溢れる彼女は、当時から内政面での書類整理などを担っており、客人として呼ばれたミカエルとも親しい関係にあった。
それから7年の月日が流れ、相変わらず内政面を任せられている彼女は、我慢の限界に来ていた。
「民への重税……王族達いい加減な政治にはついて行けないわ」
彼女は現在の地位を捨てることを決意した。色々な計略を経て、王族との婚約を破断にさせ、国家追放の罪を被った。それも全て、彼女の計算の上だ。
ジェーンは隣国の王子のところへと向かい、寵愛を受けることになる。
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
婚約破棄された辺境伯令嬢ノアは、冷血と呼ばれた帝国大提督に一瞬で溺愛されました〜政略結婚のはずが、なぜか甘やかされまくってます!?〜
夜桜
恋愛
辺境の地を治めるクレメンタイン辺境伯家の令嬢ノアは、帝国元老院から突然の召喚を受ける。
帝都で待っていたのは、婚約者である若きエリート議員、マグヌス・ローレンス。――しかし彼は、帝国中枢の面前でノアとの婚約を一方的に破棄する。
「君のような“辺境育ち”では、帝国の未来にふさわしくない」
誰もがノアを笑い、見下し、軽んじる中、ひとりの男が静かに立ち上がった。
「その令嬢が不要なら、私がもらおう」
そう言ったのは、“冷血の大提督”と恐れられる帝国軍最高司令官――レックス・エヴァンス。
冷たく厳しい眼差しの奥に宿る、深い誠実さとあたたかさ。
彼の隣で、ノアは帝都の陰謀に立ち向かい、誇りと未来を取り戻していく。
これは、婚約破棄された辺境伯令嬢が、帝国最強の大提督に“一瞬で”溺愛され、
やがて帝国そのものを揺るがす人生逆転の物語。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる