【完結】浮気症の辺境王子に婚約破棄されたけれど、一途な中央国家の王子に好かれた話

西東友一

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本編

29話 社交会

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「ようっ」

 振り返ると、ゴウさんがいた。
 真っ赤な髪に目が奪われる。

「めっちゃ食うな、お前」

 私が赤髪に目を奪われていると、ゴウさんは盛りつけたお皿をニヤニヤしながら覗き込んでいた。

 私はゴウさんの反対側へお皿を遠のける。

「へへっ。誰もお前の料理なんて取らねぇよっと」

 ゴウさんは素手でオードブルを摘んで食べる。

「まったく、君は・・・はしたない」

 声の方を見ると、両手でお皿を持っているミツルギさんがいた。そのお皿は、きっと、自分の分とゴウさんの分なんだろう。
 私はミツルギさんは面倒見がいい人なんだと感じた。

「へんっ」

 そっぽを向くゴウさん。
 ゴウさんはミツルギさんやクリス王子と年齢は近そうだけれど、子どもっぽいと言うか自由人のようだ。

「それに、シャーロット様に「お前」呼ばわりは、お優しいクリス様でも、さすが怒るよ?」

「うっ、うせぇ」

 強気なゴウさんがちょっと弱気な顔を一瞬覗かせた。

(クリスも怒ると怖いのかしら?)

「ふふっ」

「「?」」

 急に笑い出した私を不思議そうに見る2人。

「ごめんなさい、仲がいいのね2人は」

「「誰がこんなやつと」」

 ハモった2人はお互いを見合う。

「ほらっ、やっぱり」

 頭を掻くゴウさんと、ため息をつくミツルギさん。

「2人とも、ありがとうございました」

 私は深々と頭を下げる。
 
「頭をあげてくださいっ、シャーロット様」

 ミツルギさんの慌てた声が聞こえたので、私は顔を上げると、ミツルギさんがあたふたしていていた。
 
 でも、こんな宴を開けるのも、七聖剣の2人、そして・・・。

 灯りを照らしているとはいえ、遠くは暗い。それでも、すぐに「彼」を見つけることができた。

(運命・・・いやいや、こんなことで感じてしまうなんて・・・)

 お酒を勧めようとしていた領民に、クリス王子は笑顔で断っている。隣の領民が肘打ちをしている。お酒を勧めようとしていた領民は、クリス王子が怪我をしているのを思い出して、ペコペコ謝っていて、会話していたみんなが笑顔になっていた。
 見ているこちらまで、心が暖かくなる。

「おいっ」

 ゴウさんが私を睨んでいた。

「・・・」

 納得いっていないようなゴウさんはじーっと私を見ている。

(そうよね・・・騎士として主君に怪我を負わせた調本人を許せるわけ・・・)

「笑えっ」

「ふぇっ」

 頬にほんのり痛みが走り、両頬をゴウさんにつねられていた。

「メシは楽しく、食うもんだっ。感謝してるなら、笑えっ。わかったかぁ~っ」

「ふぁい」

「よしっ」

 満面の笑みで、再び食べ物を食べだすゴウさん。手掴みで食べていたせいか、食べ物の油が左の頬についていて、気持ち悪い。

「この馬鹿がっ」

 お皿をふわっと空に投げて、ミツルギさんが思いっきり、ゴウさんの頭にゲンコツを入れる。

「いってえええええっ」

 落ちてきた皿を机に置いて、ミツルギさんが胸にあったハンカチを出しながら、私に近づいてくる。

「シャーロット様、本当に申し訳ありませんっ。よろしければ、こちらをっ」

 綺麗にたたまれたハンカチ。

「あっ、ありがとう・・・ございます」

 私はミツルギさんから借りたハンカチで頬の汚れを拭う。

「洗って返しますね」

「いえいえ、めっそうも・・・」

 ごおおおおおおおっ

「おーーーーい、みつるぎぃーーーーっ」

 不敵な笑みを浮かべて、ゴウさんが復活した。
 
 めっちゃ怖い。

「メシ食っている時に、そりゃねーだろっがっ!!」

 ゴウさんがミツルギさんの背中にタックルする。

「ぐっ」

 スッ

「あっ」
 
 ダイダム王国からの侵攻を鎮圧し、今もハンカチを渡してくれたミツルギさん。

 私だって、支えられるんだったら彼を支えたかった。

 でも、私の本能が、逞しいミツルギさんを支えられないと瞬時に判断したみたい。

 私は吹き飛ばされたミツルギさんを支えるのではなく、反射的に避けてしまった。

 膝を地面に付いたミツルギさんと、まだ怒りが収まっていないゴウさん。

(これは・・・もしかして・・・また戦が始まっちゃう感じ!?)

 私はあたふたしながら、睨み合う2人を交互に見るしかできなかった。
 

 

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