【完結】浮気症の辺境王子に婚約破棄されたけれど、一途な中央国家の王子に好かれた話

西東友一

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本編

30話 3人の幼馴染

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「ねぇ、知っているかしら?」

 まだ、私の耳に馴染んでいないキレイな女性の声が、ミツルギさんとゴウさんの険悪な空気を一瞬で払う。

「人様に迷惑かけちゃいけないって」

 2人とも眉毛をしかめたままだったけれど、焦りのせいか口元は苦笑いというか、変な筋肉の入り方をしていた。

「キキョウさんっ」

 私は思わず、大声を出してしまう。
 その私の声に、キキョウさんは会釈をしてくれた。

「それとも、二人はそんなこともわからないのかしら?あれれっ、七聖剣と言う名に聖が入っている意味がわかっているのかしら?私はーーーっ、許さないなぁーーーっ」

 私はほっとしながら、キキョウさんに再びお礼を言おうと声をかけようとしたけれど、笑顔なのに目が笑っていないキキョウさんのオーラに次の言葉が出てこなかった。

「ごめんなさいね、シャーロット様」

「いててててっ」

「キキョウ、なんで僕までっ」

「失礼しますね」

 キキョウさんはゴウさんとミツルギさんの耳を摘まむ。

「喧嘩両成敗です」

「ケンカなら買うぞ!?キキョウ」

「喧嘩で大事なことって知っている、ゴウ?」

 キキョウさんは母親が子どもを諭すような言い方でゴウさんに尋ねる。

「そんなの強さに決まっているんだろうが。だからそれを今から、いてててっ」

 キキョウさんは「はぁーっ」とため息をつきながら、ゴウさんの耳を引っ張る。

「もう・・・ゴウったら。喧嘩で一番大事なのは『落としどころ』よ」

「んなのっ、女の考え方だろうがっ、俺が知ったこっちゃあーーーっ」

 キキョウさんがさらにゴウさんの耳をさらに引っ張る。

 整った笑顔でゴウさんの耳を引っ張っているのが、怖い。
 私は、今後キキョウさんを怒らせないように気を付けようと思った。

「鞘の仕舞い方を忘れてしまったら、それはもう騎士じゃないわよ?」

「はん・・・っ、俺は俺だ・・・っ」

「・・・はいはい、じゃあ行くわよ」

 キキョウさんとゴウさんは共通する苦い記憶を思い返したような顔をしていた。

「だ~か~ら、耳を引っ張んじゃねぇ、てめぇこそ、ちゃんと教育を受けてこいやっ」

「はいはい、だからあっちで一緒に勉強しましょうね~」

 三人は歩き出す。

「って、キキョウっ。僕は耳を引っ張らなくてもついていくから」

 困った顔をしていたミツルギさんもキキョウさんに耳を引っ張られている。

「え~、なんか両手のバランスが悪いと気持ち悪いじゃない?」

 苦笑いをするミツルギさん。

「じゃあ、耳放すね」

「えっ」

 耳を離されて、寂しそうなミツルギさん。
 それを笑顔で見るキキョウさんと、耳を摘ままれて呆然と見るゴウさん。

「やっぱり・・・お願いしようかな」

「うんっ、そうでしょ?」

(ええええええええっ)

 私は心の中で叫んでしまう。

 私がおかしいのか、それとも・・・。

 ミツルギさんは頭を掻きながら、ちょっと頬を赤らめて笑顔をこぼす。
 
 キキョウさんはそんなミツルギさんの頭を撫でて、再び耳を摘まむ。

「それじゃあ、シャーロット様失礼いたします」

「えっ、あーーーー」

 あっけにとられて、何と言っていいのかわからずにいた私。

「なぁ、嬢ちゃん」

 私がキキョウさんに返事をしようとすると、ゴウさんが真面目な顔で私に話しかけてくる。

「なんでしょうか?ゴウさん」

 さっきの自由奔放なところ見ていた私は恐る恐る返事をする。

「こいつらの方が俺よりヤバイ奴らだからな、わかったか!?あーーーっ」

 ゴウさんがキキョウさんに連行されて行った。

「ふっ」

 私は思わず、3人の後ろ姿を見て笑ってしまった。

 ゴウさんは最初怖い人かと思ったけれど、歯に衣を着せない人で、根は案外いい人なんじゃないかと思った。

(なんだか、羨ましいな)

 かくんっ

「あれ・・・っ」

 ほっとした私は急に膝に力が入らなくなって、前に倒れそうになった。
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