グレーな天使はサイコパス。~自殺しようとしていたら、天使が現れて、イジメていた奴を殺せと言う~【6/2完結予定】

西東友一

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ある人はあの天使を黒いと見えたと言った。
その人はとても豊かな暮らしをしていて、とても幸せな人だった。

ある人はあの天使を悪魔と言った。
だって、あの天使は「殺人をした方がいい」と言うから。

ある天使はあの天使を薄汚れた天使だと言った。
だって、あの天使は気を遣わないから。

ある天使はあの天使こそ天使だと言った。
だって、あの天使は口が悪いけれど、人を救うのだから。

私はあの天使を駄目な死神だと思った。
だって、私は―――




 私は死ねなかった。
 そして、イジメていた奴を殺すこともしなかった。
 いつでもあいつを殺せる・・・と思うと余裕ができるなんてわけでもない。
 だって、私には人を殺すような勇気はない。けれど、相手を殺さずに自分を殺すのがばかばかしくなってしまったのだ。

 天使に会って10年。私はこうして生きている。
 発狂して気が狂う訳でもなく、少し心に傷を抱えて生きている。
 そして、イジメていた奴は普通の家庭を持っている。
 もしかしたら、私をイジメていた罪は少しずつ行った徳というやつですでに相殺されているかもしれない。

 ネットで誰かが言っていたイジメに関しての回答。

「時間が解決するよ」

 それだった。
 

 もちろん、あの天使に出会わなければ、私は悠長に時間が解決することを祈ってイジメられ続けるくらいなら自殺していただろう。天使のあれは荒療治だったけれど私には効いた。

 私には効いたからと言って、あの天使のあの言葉『なら、イジメている人を殺したらいかがですか?』は決して自殺者志願者の全員に効く万能薬と言う訳ではないだろう。本当にあの言葉を真に受けてイジメていた側を殺した人もいるに違いない。まぁ、そんな相手の元には現れないのかもしれないが。

 私はイジメられた側がイジメていた人を殺したり、傷をつけてもきっと同情してしまうだろう。もちろん、イジメの程度がちょっとしたことだったとしたら、それはイジメではなくて、からかいで、「イジメられた」なんて被害者ぶって自分の正当性を主張しているだけで、カッとなって殺しただけの言い訳とか思ってしまうけれど。

「でも、やだなぁ」

 私は自分の手首を見た。
 イジメる気なんてさらさらないけれど、イジメられたなんて言われて傷が付いたら嫌だ。どちらにしても、人が嫌がることはすべきでない。

 天使も言っていたけれど、自己肯定感が高い人なのか、自分の怒りなどを正当化して、なんなら相手が悪いと思える人はちらほらいる。もしかしたら、大なり小なり皆もっている感情なのかもしれないけれど、本当に嫌だ。

 いつか、私もイジメていた奴も死ぬ。
 遅いか、速いか。
 
 今、私が果物用のナイフで手首を切って死んだとしても、イジメていた人は、きっと「あいつは自殺するようなダメな奴だったんだよ。昔から」なんて、やっぱり、私をディスるに違いない。だから、私は時間が経てば経つほど、自殺なんかできない。

「幸せになるしかないわよね」

 このやるせなさを解消するには成功を収めるしかない。
 そんな発想辞退が卑しいと言われても、そうしなければ私が満たされないのだから。

 もしかしたら、イジメられた人間は永遠に満たされないのかもしれない。
 富も、名声も、家庭を手に入れても。凄惨な過去の傷は埋まらないかもしれない。
 誰かがイジメられていたなんていうニュースを聞くだけで傷が疼く、それも死ぬまで。

 最悪でしょ?
 イジメていた人間は満たされていたとしても、満たされないなんて最悪。

 だから、天使様―――
 
「私なら最高に幸せになるから」

 どうせなら、怖い助言よりも、神の・・・天使のご加護を。
 

 
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