最優テイマーの手抜きライフ。悪役令嬢に転生しても、追放されても、私は辺境の地でこの魔物たちと仲良く暮らします。

西東友一

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「本当に何でもしますから、お願いしますっ。早く、いつものようにテイムで黒竜をなだめてくださいませっ」

 身体も声も震わせながら、サクラに頭を下げる召使い二人。
 けれど、転生したばかりで気が動転しているサクラが冷静に自分に眠っている力に気づくことも、扱えることもできないサクラ。喧嘩を売られる様なことはあっても、やり返すことすらする気にならず、悲しい想いをしながらぐっと堪えて来たサクラにその黒竜の敵意に歯向かう気力は無かった。

 GYAAAAAAAAAAA

 いつも、優位に立っていたサクラの弱み。
 最悪の災害の一つと言われるブラックカオスが見逃すはずがなかった。
 チャンスとばかりに暴れる。捕まるときには慢心があったのか、その時よりも激しく暴れる。
 すると、サクラが魔力を込めていた鎖もヒビが入っていく。

 GYAAAAAAAAAA

「ブランダ様っ!!!」

 鎖がちぎれて、悲鳴のような声を召使いの女性が出すけれど、サクラは恐怖を自分の身体にため込んでしまい、固まって動けない。

 GYAAAAAAAAAA

 自由になったブラックカオスが、雄叫びをあげると、空気が震撼した。呼応するように薄暗かった空が分厚い暗雲が立ち込めていく。

 ギロッ

 鬱憤が溜まっていたブラックカオスが今まで服従をさせていたサクラを見つめる。サクラは恐れながらも、非日常感にどこか冷静なもう一人の自分がいた。

 圧倒される巨大さ、生命の危機を感じる鋭利な牙と爪は残虐性を持ちながらも、首を差し出してしまいたくなるような魅力も兼ね備えているように感じた。人々の希望を飲み込んでしまいそうな漆黒さと、人の心を魅了するウロコの輝き。

(怖い、怖いだけれど・・・どうしてなんだろう)

 サクラは恐怖の中にも、ブラックカオスへ魅力を感じていた。従えろと召使いたちに伝えられてけれど、なんならサクラはそのブラックカオスに付き従いたいとも思っていた。

 サクラが恐怖と羨望の瞳でブラックカオスの顔を見るが、ブラックカオスの顔もまた、サクラと同じく恐怖を抱えつつもサクラに対して、何かを感じながら冷静な顔をしていた。

「・・・ぅっ」

 ブラックカオスは意を決したように羽ばたいて、突風が吹き、サクラは目を覆う。

「きゃあああっ」

 召使いたちは大声を出して騒ぐ。今度の羽ばたきは威嚇でも攻撃でもなくその重量感のあるブラックカオスの身体が地面から離れた。

 COOOOOOOON

 切ないような声を出して、そのままブラックカオスが山の向こうを目指して飛んでいく。
 


 


 
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