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ある日、私はカイザーに呼ばれて、彼の部屋を訪ねました。
「あら、お姉様。遅かったわね?」
私が着くと、カイザーと妹のリューネが椅子に腰かけて紅茶とお菓子を召し上がっていました。
「お姉様、お掛けになったら?」
「そうね・・・」
こういうのは、普通は一番くらいが高いカイザーが言うべきであり、妹であるリューネが言うべき言葉ではない。けれど、カイザーもリューネの言葉について何も言わず、目で座るように指示してきたので、私は腑に落ちない気持ちがありながらも開いている席に座る。
「そうそうお姉様もいずれ王妃になるなら、お茶のマナーは大丈夫ですか?」
「ええ、もちろんよ」
「・・・」
なぜか睨むリューネ。
私がすぐに返事した何がいけないのかしら?
「でも、心配ですよね、カイザー王子?」
「ああ」
私が開いたお茶会で様々な貴族や国王が私の淹れたお茶や作法を褒めたのを二人は忘れてしまったのだろうか。
(いいえ、そんなはずはないわ)
だって、二人は部屋に入ってから何度もアイコンタクトを取ろうとしている。だから、私は二人に何か隠し事があるのだと察した。
「じゃあ、お茶会をしましょう。私がお茶を入れますから」
「お茶会? あなたが?」
「ええ」
張り合うのが大好きなリューネは、私のお茶会が大成功を収めた一週間後にお茶会を開いた。高級なカップやコップ、そしてなかなか手に入らない紅茶の葉があったけれども、リューネは紅茶の葉の管理が甘く、その上、適温なども理解していなかったため、なんだかとっても残念なお茶会だった。
「リューネ・・・お父様とお母様から家の名に傷が付くから、当面の間はお茶会を開くことを禁じられているでしょ?」
ギロッ
睨まれても事実だ。
「それなら、俺から言えば大丈夫だろう」
「大丈夫ではありません。これは我家の問題です」
「うっ・・・」
確かに王子であるカイザーが言えば、開かざるを得ないのが貴族の習わしだ。けれど、両親もさすがにリューネの開いたお茶会がお粗末過ぎて断るだろう。断らなければ、私が断る。これでも一応、王家の第一王子の婚約者なのだから。
「じゃっ、じゃあ、私とカイザーの二人で開くわ」
「そ、それはいい。そうしよう」
「はぁ・・・」
私は盛り上がる二人に気づかれないようにため息をついた。
(お茶会? 茶番の間違いでしょ?)
普通は共同でお茶会を開くのは二人が親密な関係である証だ。だから、夫婦だったり、親子だったり、親友だったり、稀ではあるけれど恋人同士が開くものだ。それなのに、なぜ私と婚約している王子と私の妹が共同でお茶会を開くのか。意味が分かっているのだろうか。
(でも・・・まぁ・・・)
そんな理由をいちいち聞く気にもならなかった。
聞いたところで、どうせ考えてないから、私の前で長考するか、余計に頭が痛くなるような回答するに違いない。
それに・・・私は妹と私の婚約者のカイザー第一王子が浮気しているのを知っている。
そして、二人が私を殺そうとしていることも―――
「あら、お姉様。遅かったわね?」
私が着くと、カイザーと妹のリューネが椅子に腰かけて紅茶とお菓子を召し上がっていました。
「お姉様、お掛けになったら?」
「そうね・・・」
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「そうそうお姉様もいずれ王妃になるなら、お茶のマナーは大丈夫ですか?」
「ええ、もちろんよ」
「・・・」
なぜか睨むリューネ。
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「じゃあ、お茶会をしましょう。私がお茶を入れますから」
「お茶会? あなたが?」
「ええ」
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「リューネ・・・お父様とお母様から家の名に傷が付くから、当面の間はお茶会を開くことを禁じられているでしょ?」
ギロッ
睨まれても事実だ。
「それなら、俺から言えば大丈夫だろう」
「大丈夫ではありません。これは我家の問題です」
「うっ・・・」
確かに王子であるカイザーが言えば、開かざるを得ないのが貴族の習わしだ。けれど、両親もさすがにリューネの開いたお茶会がお粗末過ぎて断るだろう。断らなければ、私が断る。これでも一応、王家の第一王子の婚約者なのだから。
「じゃっ、じゃあ、私とカイザーの二人で開くわ」
「そ、それはいい。そうしよう」
「はぁ・・・」
私は盛り上がる二人に気づかれないようにため息をついた。
(お茶会? 茶番の間違いでしょ?)
普通は共同でお茶会を開くのは二人が親密な関係である証だ。だから、夫婦だったり、親子だったり、親友だったり、稀ではあるけれど恋人同士が開くものだ。それなのに、なぜ私と婚約している王子と私の妹が共同でお茶会を開くのか。意味が分かっているのだろうか。
(でも・・・まぁ・・・)
そんな理由をいちいち聞く気にもならなかった。
聞いたところで、どうせ考えてないから、私の前で長考するか、余計に頭が痛くなるような回答するに違いない。
それに・・・私は妹と私の婚約者のカイザー第一王子が浮気しているのを知っている。
そして、二人が私を殺そうとしていることも―――
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