回復師の再就職は容易です。魔王討伐した勇者パーティーにいたのに国王からの感謝状に名前がない私は国を去ります。

西東友一

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孤独な旅、歓迎のニアメア王国

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 味方に対しての圧倒的回復力と、敵に対しての微々たる弱体化。
 それが、フローレンスの回復師の力。
 長期戦になればなるほど、その恩恵は大きい。

「凄い……っ」

 まず、驚いて口に出したのはフローレンスだった。
 なぜなら、ニアメア王国の兵士たちが自分の想像以上に強かったからだ。確かに彼らは勇者のパーティーのように一人で数体を討伐するような力はない。ましてや、魔王城に棲み付いた魔物でかなり強いはずだ。普通の国民であれば、瞬殺されるし、1体なら大人10人、2体なら30人、3体なら100人いても勝てるかどうかわからない。しかしながら、ニアメアの国民は魔物の群れを分断して、1体の魔物に対して数名で対峙した。彼ら彼女らは背後や横にいる魔物に対しても細心の注意を払いながらも、目の前にいる魔物に対して、何よりも仲間の命を何よりも大事にしながら、魔物を弱らせ、討伐していく。それもフローレンスの想像以上の速さだった。

「凄いや……っ」

 指揮するアレキサンダー王子も戦場で魔物に対峙しながらも、他の兵士たちが魔物を徐々に圧倒しているのを確認し、思わず声を漏らす。

「王子っ」

 アレキサンダー王子は仲間の声で、魔物の攻撃を後ろに飛んでかわす。魔物の意識がアレキサンダー王子に向かったのを見計らって、弓兵と魔法使いが攻撃をすると、矢は厚い鱗を貫通し、魔物の火傷を負って怯んだ。その隙を王子が切り払い、とどめを刺した。王子は自分の力の上昇の程度を把握し、同じように能力が上がった兵士たちの実力を計算し直して、指示を出す。

「そろそろか……。撤退の花火を上げてくれ」

「でも、まだまだ行けますよ?」

 王子を補佐する魔法使いのフレイアが元気な顔で、杖を振るが、その顔は慢心以外の何物でもなかったので、アレキサンダー王子は自分の判断に自信が付いた。

「いいや駄目だ。過信は負傷者を生む。今は優勢だが、負傷者が増えれば一気に情勢は逆転し死者を生む」

「……失礼いたしました」

 炎魔法が得意な彼は杖を振って青い花火を上げる。大きな青い花火は普通の花火とは異なり、空に張り付いたように持続して光る。

「撤退だっ」

「でもっ」

「いいから、行くわよ」

 練度が高いとはいえ、今までにないほどの力を手にした兵士の中には名残惜しそうに撤退をする者も数百人いた。
そして、今度は塀の中から新たな兵士たちが交代で突入していく。引継ぎも大規模な戦場だと穴ができやすいのだが、防衛線に長けたニアメア王国の撤退する兵士たちと突入する兵士は無事に引継ぎを行った。

 



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