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プロローグ
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仕事で山に立ち寄ったのはいいものの、情けない事に私は遭難しかけてしまった。
およそ、半日。私が人里に戻るまでに要した時間だ。
へとへとになって歩き疲れた私は見知らぬ町にたどり着いた。
空模様は曇り空。真っ黒な雨雲が空一面を覆っていて今にも一雨降りそうな様相であった。
雨が降る前に戻れてよかった。私はそう思い、休めそうな場所を探した。
天気に似合わぬ優しい風が吹く。蜜の甘い匂いにつられた私はその店の前に立ち寄った。
店の名前は初春。橙と白のストライプの看板はとてもお洒落で、都心の人気店として雑誌に載ってもおかしく無いと思った。
「いらっしゃいませ」
オレンジのエプロンを着けた少女が爽やかな笑顔で迎えてくれた。
艶やかな黒髪は肩の長さで切り揃え、健康的に日焼けした肌と相まって活発な印象を受ける。何かスポーツでもやっているのだろうか、エプロンスカートから覗く脹脛は良く引き締まっている。
少女は若い魅力に溢れており、思わず見惚れてしまいそうな程であった。
しかし、私の目は視野に入り込んだそれに釘付けとなっていた。
蟲だ。ムカデのような無数の足を持つ蟲が店の奥から現れると少女の体に巻きついた。幅はさほどでもなく、人の腕よりやや太い程度だが、その長さは目を見張るものがある。蟲は私の胸から腰、そして左足に体を巻きついてじっとしている。
私は逃げ出すのも忘れその蟲をじっと見ていた。恐怖や驚きは勿論あるがそれ以上に疑問に思った。
何故この少女は平然としているのか。
考えればその訳は直ぐに分かった。彼女の平然さは慣れから来るものだ。この蟲は少女にとってごく日常的なものだ。
私が蟲を見ていると少女は私に問いかけてきた。
「もしかして、旅のお方ですか?」
正確には仕事の一環だがあながち間違えでは無い。私が肯定すると少女きゃーと乙女のようにはしゃぐと私を店の中へと招き入れた。
「この虫神様は八百万道って言うのよ」
少女はそう言って得意げに私に虫の伝承を語り聞かせてくれたが、私はその内容に集中する事が出来ず聞き流してしまった。
話によれば虫神というのはこの町の土地神のようなものらしい。目の前の種、以外も多種多様な姿の虫神が居るらしい。
凡百のそれと違うのは、その実体がすぐそこにいるという事だろう。証拠は正しく目と鼻の先にあり少女の話を疑う必要はなかった。
私と少女が食事を取りながら会話している間、八百万道と呼ばれた巨大な百足は店の中を這いずり回ったり、少女の身体に巻き付いたりしている。
私の方へ巻き付かなかったのはありがたいが正直、恐ろしく気にせずにはいられなかった。
「旅人さん、私と八百万道様の交尾見たいですか?」
不意に聞こえた言葉に私は耳を疑った。
いま、なんと?
「私と、万屋走様の交尾見たいですよね」
呆気に取られる私を他所に少女は交尾の部分を強調してもう一度言った。
その頬は仄かに紅く、息が艶っぽく漏れている。
気がつければ八百万道は少女の身体にきつく巻きつき始めていた。その背が少女の股や胸を擦る。
「ねぇ旅人さん。どうしますか?」
少女が淫らに微笑むと、私の理性は脆く崩れさってしまった。もう後戻りは出来そうにない。
およそ、半日。私が人里に戻るまでに要した時間だ。
へとへとになって歩き疲れた私は見知らぬ町にたどり着いた。
空模様は曇り空。真っ黒な雨雲が空一面を覆っていて今にも一雨降りそうな様相であった。
雨が降る前に戻れてよかった。私はそう思い、休めそうな場所を探した。
天気に似合わぬ優しい風が吹く。蜜の甘い匂いにつられた私はその店の前に立ち寄った。
店の名前は初春。橙と白のストライプの看板はとてもお洒落で、都心の人気店として雑誌に載ってもおかしく無いと思った。
「いらっしゃいませ」
オレンジのエプロンを着けた少女が爽やかな笑顔で迎えてくれた。
艶やかな黒髪は肩の長さで切り揃え、健康的に日焼けした肌と相まって活発な印象を受ける。何かスポーツでもやっているのだろうか、エプロンスカートから覗く脹脛は良く引き締まっている。
少女は若い魅力に溢れており、思わず見惚れてしまいそうな程であった。
しかし、私の目は視野に入り込んだそれに釘付けとなっていた。
蟲だ。ムカデのような無数の足を持つ蟲が店の奥から現れると少女の体に巻きついた。幅はさほどでもなく、人の腕よりやや太い程度だが、その長さは目を見張るものがある。蟲は私の胸から腰、そして左足に体を巻きついてじっとしている。
私は逃げ出すのも忘れその蟲をじっと見ていた。恐怖や驚きは勿論あるがそれ以上に疑問に思った。
何故この少女は平然としているのか。
考えればその訳は直ぐに分かった。彼女の平然さは慣れから来るものだ。この蟲は少女にとってごく日常的なものだ。
私が蟲を見ていると少女は私に問いかけてきた。
「もしかして、旅のお方ですか?」
正確には仕事の一環だがあながち間違えでは無い。私が肯定すると少女きゃーと乙女のようにはしゃぐと私を店の中へと招き入れた。
「この虫神様は八百万道って言うのよ」
少女はそう言って得意げに私に虫の伝承を語り聞かせてくれたが、私はその内容に集中する事が出来ず聞き流してしまった。
話によれば虫神というのはこの町の土地神のようなものらしい。目の前の種、以外も多種多様な姿の虫神が居るらしい。
凡百のそれと違うのは、その実体がすぐそこにいるという事だろう。証拠は正しく目と鼻の先にあり少女の話を疑う必要はなかった。
私と少女が食事を取りながら会話している間、八百万道と呼ばれた巨大な百足は店の中を這いずり回ったり、少女の身体に巻き付いたりしている。
私の方へ巻き付かなかったのはありがたいが正直、恐ろしく気にせずにはいられなかった。
「旅人さん、私と八百万道様の交尾見たいですか?」
不意に聞こえた言葉に私は耳を疑った。
いま、なんと?
「私と、万屋走様の交尾見たいですよね」
呆気に取られる私を他所に少女は交尾の部分を強調してもう一度言った。
その頬は仄かに紅く、息が艶っぽく漏れている。
気がつければ八百万道は少女の身体にきつく巻きつき始めていた。その背が少女の股や胸を擦る。
「ねぇ旅人さん。どうしますか?」
少女が淫らに微笑むと、私の理性は脆く崩れさってしまった。もう後戻りは出来そうにない。
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