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黙諾の花嫁
序 瀬野ラウラの動機 慶香町
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私こと瀬野ラウラは自分の生まれを知らない。両親の顔も名前も知らない。私を育てたのは祖母と祖父だった。
幼い頃は日本を離れベルギー人の祖母の元で暮らしいていた。
寂しいとは思わなかった。
祖母は優しかったし、従兄弟やホームステイしていた日本人のお兄さんも居て賑やかだった。
日本で神主をしていた祖父は一緒に暮らしては居なかったが頻繁に手紙や電話を送ってくれた。
祖母が亡くなると私はベルギーを出て日本で祖父と暮らすことにした。
日本の高校に入り、大学へ進んだ。友人にも恵まれ、私の日常は平穏に過ぎていった。
全ての始まりは一年前。
祖父、瀬野玄治が亡くなった事がきっかけだった。
祖父の遺品整理で私はそれを偶然見つけた。壊れた置物の中に隠された鍵。私は祖父が生前、破棄しようとしていた物の中に鍵のついた箱があったのを覚えていた。
箱の中身は古い手記だった。
私は知る事になる。私の生い立ち。私の母の事。私の父の事。祖父の孤独な戦い。そしてとある町の存在を。
慶香町。
現代日本に置いてもなお地図に乗らぬ秘境の町。
異形の神を崇める因習を持つ不気味な町。
そして私を産んだ母が居る町。
『娘は囚われた。されど孫は連れ帰る事ができた。以降、ケイコウの地には関わらない事とする』
手記は一部を塗りつぶされ、警告に満ちていた。祖父がこれを隠したのは私から慶香町を隠す為。きっと慶香町に関わることで私の身に危険が伴うのだろう。
私はそれでも母に会いたかった。私の家族はもうそこにしかいないのだから。
幼い頃は日本を離れベルギー人の祖母の元で暮らしいていた。
寂しいとは思わなかった。
祖母は優しかったし、従兄弟やホームステイしていた日本人のお兄さんも居て賑やかだった。
日本で神主をしていた祖父は一緒に暮らしては居なかったが頻繁に手紙や電話を送ってくれた。
祖母が亡くなると私はベルギーを出て日本で祖父と暮らすことにした。
日本の高校に入り、大学へ進んだ。友人にも恵まれ、私の日常は平穏に過ぎていった。
全ての始まりは一年前。
祖父、瀬野玄治が亡くなった事がきっかけだった。
祖父の遺品整理で私はそれを偶然見つけた。壊れた置物の中に隠された鍵。私は祖父が生前、破棄しようとしていた物の中に鍵のついた箱があったのを覚えていた。
箱の中身は古い手記だった。
私は知る事になる。私の生い立ち。私の母の事。私の父の事。祖父の孤独な戦い。そしてとある町の存在を。
慶香町。
現代日本に置いてもなお地図に乗らぬ秘境の町。
異形の神を崇める因習を持つ不気味な町。
そして私を産んだ母が居る町。
『娘は囚われた。されど孫は連れ帰る事ができた。以降、ケイコウの地には関わらない事とする』
手記は一部を塗りつぶされ、警告に満ちていた。祖父がこれを隠したのは私から慶香町を隠す為。きっと慶香町に関わることで私の身に危険が伴うのだろう。
私はそれでも母に会いたかった。私の家族はもうそこにしかいないのだから。
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