ママは乳がん二年生!

織緒こん

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ご。

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 お米用のカップにすり切り三、ザルに入れて水で洗う。⋯⋯お米はとぐっていうんだって。ご飯炊き用のぽってりした土鍋に入れて内側の線まで水を入れて、三十分放置。

 それから中火で十五分。ぶくぶく吹いても触らない。鉄の釜じゃないから『はじめチョロチョロ~』じゃないんだって。土鍋はゆっくり熱を伝えるから、はじめチョロチョロとおんなじだって。

 お味噌汁は乾燥ワカメとお麩。もしくはきざんで一回分ずつ冷凍した油揚げ。粉末だしはアイスクリームスプーンで三杯、お味噌は大匙二杯強。

 十二月になったら、ひたすらご飯の炊き方とお味噌汁の作り方を練習した。毎日、ママがおかずを作る横でご飯とお味噌汁を作る。

「やっだ、うちの子天才。もう、ご飯とお味噌汁は完璧だね。おかずは三日分くらい作り置きして、冷凍食品も用意しておくから、ババちゃんが来てくれるまで持ち堪えてね」

 山陰の山の方に住んでいるババちゃんは、ママのお母さん。まだお仕事してるし、大ババちゃん(ひいおばあちゃん)をひとりにできないから、叔父さんと叔母さんのお仕事の都合もつけてから、関東まで来てくれる予定。

 ママが入院してから三日目くらいになるから、その間、なんとかご飯を食べなきゃならない。⋯⋯コンビニご飯、食べてみたいなぁって言ったら、怒られるかな? サンドイッチとかなら買うけど、なんかお弁当って買ったことないなぁ。

 年内で仕事に区切りをつけて、一月からは治療に専念するって、ママが言った。クリスマスもお正月も、去年までと変わらず楽しんで、来年やりたいこともいっぱい話した。

 初詣に行こうと着物を出したら、去年まで着ていたのがツンツルテンになっていた。オレンジに赤い椿の柄で、着物と羽織がセットになっている。アンサンブルっていうんだって。

「肩上げと腰上げ、ギリギリだねぇ。もう、ジュニアサイズは今年で終わりかぁ。来年はママの着物、肩上げしてあげるからね。」

 ママは柄のない濃い紫の着物を引っ張り出した。

「茄子紺の無地結城紬だよ。結城さんはあったかいから、冬のお出かけにはぴったりだね」

 ママはスズにパパッと着物を着せてから、自分も素早く着替えた。さすがに早い。ちなみにパパはいつもの格好よ。

「今日のスズとママの着物は普段着着物だから、パパがジーパンでも全然変じゃないよ。結婚式とかだったらぶっ飛ばすけどね」

 市内にあるちょっと大きな神社は、沢山の人で賑わっていた。屋台も沢山並んでいて、美味しそうなものがいっぱいある。木村家ルールでは、神様への挨拶が終わるまでは屋台の食べ物は買わない。

「スズ、足が痛くなったら言えよ。ママと違って草履に慣れてないだろう?」

「今のところ平気」

 結構並んだから、パパが心配してくれた。

 人の壁が暖かくて、あんまり寒くなかった。押しくら饅頭みたいだねって、ママが笑った。

 順番が来て、お賽銭を入れて神様にお願いする。

(ママの手術が成功しますように)

 他のなにをお願いするかなんて、思いつかないもの。

「さて、えびせん買って帰ろうか」

「そしてえびせんは、オクさんの肉となり肉となるのだ」

「肉肉言うな。ダーさんのいじわる」

 ママは屋台のえびせんが大好きで、この神社の祭礼のときは必ず買うんだけど、その度にパパと漫才めいたやりとりをする。どうせママが好きで買ったって、パパが半分食べちゃうのに。

 もちろんスズも食べるよ?

「ママ、スズ大阪焼き食べたい」

「いいよ」

「スズ、着物汚すなよ」

「⋯⋯頑張る」

 春になったら六年生になるんだもん。普段は食べこぼしはしないけど、袖とか邪魔だな。ちょっと不安。

「大丈夫、ポリポリちゃんだから。汚れてもお家で洗えるよ」

 ポリポリちゃん⋯⋯ポリエステルかぁ。じゃあ安心して食べられるね。

 ママにお金をもらって大阪焼きの屋台に並ぶ。

「あれ? 木村じゃん」

「うわぁ、高橋。あけましておめでとう」

 地元の神社だもん、そりゃ、クラスの子と会うよね。

「お、おぅ。おめでとう。お前、着物なん?」

「うん」

「そう言えば、木村の母ちゃんの手術ってまだ?」

「あと二週間くらいだよ」

 着物を見て、スズのママのこと思い出したのかな。高橋はなんだかモジモジして下を向いている。変なやつ。

 順番が来て大阪焼きをパパの分と二つ買って、高橋にじゃあねと手を振った。

「木村⋯⋯あのさ、俺、お参りのときに、木村の母ちゃん、手術が成功しますようにって、神様におねがいしとくよ!」

「ありがとう!」

 高橋、いいやつじゃん!

 みんなでお願いすれば、神様も叶えてくれるよね。
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