うち推し‼︎ お題:お月見 〜アンダルシュ様Twitter企画『〈うちの子〉推し会』〜

織緒こん

文字の大きさ
3 / 7

主人公はふたりいる。

風紀委員長 × モブその三



 ぽっかりと中天高く、煌々と満月が光り輝いている。夜の公園にあって、相手の表情がはっきり見えるほどの明るさに、クラクラと眩暈がする。ふたりきりのこの状況、なんとしても逃げ出したい。

 なんだって、こんなことになったかな。

 最初は四人だったんだよ!

 男子三人、女子ひとりのな!

 昼の明るい時間から、俺こと男モブその三の三浦みうら創太そうたと女モブその三の三峰みつみね依子よりこは乙女ゲームの攻略対象にダブルデートに誘われたんだよ。

 ダブルデートでなんで男女比が三対一なのかって?

 俺がBでLするネコちゃん枠なんだよ‼︎

 だいたいこの世界は『爪弾くは君の調べ』っていう十八禁乙女ゲームなんだよ。前世男子高校生の俺とOLさんだった峰さんは、どうやっても悲惨な目に遭うモブその三。勘違いヒロインたちが自爆したおかげで骨折と脳震盪程度で済んだけど、なぜか攻略対象に告白されている。

 峰さんはいいよ!

 女の子だし藤宮生徒会長はイケメンで峰さん自身も程々にお嬢様だからね。

 だがしかし、俺は男だ。攻略対象の高根沢風紀委員長も男だ。『ツマキミ』は主人公の性別も選べるゲームだったから、BでLする展開もアリだった。だから風紀委員長も男の俺に告白するのに躊躇いがない。

 俺は躊躇いだらけだけどな!

 世界観が同性婚に偏見がないから、正面から正攻法で両親を通してお誘いされたら断れないんだよ!

 峰さんも会長からのお誘いを断るのに『浦っちが一緒なら』なんて遠回しなことを言うもんだから、『じゃあ一緒に』って風紀委員長が言い出して。

 健全に昼間のダブルデートをして夕食を食べ(坊ちゃんたちセレクトのおっそろしく上品な店だった)、一番最初に峰さんを自宅に送り届け、その後すぐに会長が所用があると言って別れて⋯⋯。

 夜の公園にふたりきり⋯⋯⋯⋯。

「創太」

 いつのまにか、名前呼びだ。

「月が綺麗だね」

 ぶっちゃけてきやがった! 夏目漱石かよ。

 いや、なんならうちの両親のところには婚約の打診も来てるけど。同性婚は偏見はないとは言え跡取り問題もあるから、実質告白するのはものすごい勇気が必要なはず。でも高根沢風紀委員長は正面から来たからね!

「びゅーてぃふぉーむーんの意味なら、俺もそう思います。千円札の人の翻訳だったらゴメンなさい」

「残念、知ってたのか。肯定してくれたら、プロポーズの返事を快諾してくれたことにしようと思ったのに」

 青白い月光の下なのに、温かい笑顔で委員長はあっけらかんと言った。

 あぶねー! 曖昧にソウデスネなんて言ってたら、明日には結納の品が届くところだったぜ‼︎

「創太は同性という以外に、俺に応えられない理由があるのか?」

 それを言われると悩む。

 一番初めにその問題があって、その意外の理由を考えたことがない。

 立場上責任感があって、性格は男前。テストの成績も常に上位だし、鍛えていて逞しい。俺を軽々抱っこするくらいだもんな。家は金持ちで将来は安泰。

 俺が女だったら、最高の物件だな。

「⋯⋯あれ? 俺が女だったら?」

 風紀委員長が女だったらとか考えないで、ナチュラルに自分を女側に考えてるのがコワイ。

「どう、創太?」

「⋯⋯わかんない、です」

「そう、速攻で否定してくるかと思ったけど、結構脈ありか?」

 高根沢風紀委員長が一歩近づいてきた。まるで野良猫を手懐けようとする保護士のようだ。

「美しい満月は、男を滾らせるって知ってた?」

 男臭くニヤリと笑う。男はみんな狼だとでも言いたいのだろうか?

 あんまりにも格好良くて、クラっとした。

 月の魔法に流されそうだ。

⋯⋯いや、駄目だ。流されるな。俺はBでLなことは絶対しない! 

 助けて、峰さん!

〈おしまい〉

 
感想 33

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

契約結婚だけど大好きです!

泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。 そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。 片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。 しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。 イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。 ...... 「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」  彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。 「すみません。僕はこれから用事があるので」  本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。  この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。 ※小説家になろうにも掲載しております ※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する

スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。 そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 文章がおかしな所があったので修正しました。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄をするから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

グラジオラスを捧ぐ

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
憧れの騎士、アレックスと恋人のような関係になれたリヒターは浮かれていた。まさか彼に本命の相手がいるとも知らずに……。