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三馬鹿トリオはエセ勇者。
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更新遅れました!
予約しそびれてました⋯⋯。
⁂ ⁂ ⁂ ⁂ ⁂
守護龍さんは私たちを下ろすために、テントの近くに降り立った。ザッカーリャの近くは、彼女の尻尾がのたうっていてとても危険なんだもの。
勇者様御一行と思しき三人連れの男は、今度は龍身の守護龍さんを指差して、わあわあ言った。指差しするんじゃありません!
まったく三人連れの男ってのに運がないわね! 帝国で遭遇した冒険者崩れも三人連れだったわよ。
さっきから、私たちと守護龍さんを見比べて、化物とか魔女とか怪物とか、言いたい放題している。その度に眠たげな目元のザシャル先生から表情が抜け落ちて、アル従兄様の目つきが凶悪になってくる。
うちの保護者の皆さん、たぶん只者じゃないですよー。勇者様御一行さん、覚悟してね!
守護龍さんは大きな身体を丸めてユンに鼻面を押し当てる。輪郭を滲ませると次の瞬間には、美しい青年が立っていた。爬虫類の目さえなければ、美しすぎる人間だ。
で、勇者様御一行さんの出立、これがまぁ、全身ペッカペカの加護宝珠だらけなわけよ。ピカピカじゃないの、ペカペカ。ニュアンスわかる? お高いものもお安く見せちゃう残念なマジックを発揮する人たちだ。本人たちに品がないのよ。
人間に変化した美しすぎる龍は温度を感じさせない爬虫類の目で、勇者たちを見た。
三人は気圧されて、ピタリと口をつぐんだ。
「我が姫よ、我と姫とを貶めた此奴ら、我が顎の餌食にしてよいか?」
「ダメ」
「では爪ならどうだ?」
「それもダメ」
「いや、俺はいいと思うぞ」
せっかくユンが止めてるのに、アル従兄様ったら茶々入れないでくれるかしら。
「⋯⋯ちょっと待て、お前たち、領主が言ってた聖女様の一行か?」
あぁん? 領主だぁ?
「聖女様は黒髪って言ってたな」
「ああ、今、化物に命令してたな」
「なるほど、あの化物は聖女様の使い魔か」
ボソボソボソ~。こらこら、全部聞こえてるからね! て言うかあんたたち、あのロリコン領主に言われて追いかけてきたのね!
「聖女様がザッカーリャ山に向かっているのは、蛇王の祠を封じるために違いないから、どさくさに紛れて手柄のおこぼれを預かってこいって!」
「あ、馬鹿! 領主が陛下に取り入るための手土産にしようとしてんのが、バレるだろう!」
「俺たち来るの早すぎたんじゃねぇか? めっちゃ暴れてんぞ、あの蛇女。計画ではトドメ刺すギリギリにちょっと参加するはずだったじゃねぇか!」
⋯⋯なんだこのエセ勇者。
昔のアニメに出てくるとぼけた悪役みたいなノリね。
「ヴィラード国が貧しいのは、みんなあの蛇女が悪いって言うじゃねぇか。聖女様、さっさと退治してくんねぇかな」
男が口にした瞬間、ザッカーリャが一際高く悲鳴を上げた。今、男の意識がザッカーリャに向かったんだわ。
ひとりひとりの小さな怨みが、ザッカーリャにたどり着くころには大きなうねりになっている。その片鱗を見てしまった。
「アル従兄様、ザッカーリャを鎮めます! このアホどもの意識を刈っておいて!」
どうしよう、ザッカーリャがのたうちまわっているから、後ろに回り込めない。四方を囲まないと四点結界が完成しないのに。
エセ勇者たちの怨嗟だけじゃなくて、ヴィラード中の怨嗟が再びザッカーリャを蝕んでいる。
「タタンっ」
「はい、お嬢様!」
シーリアが杖を掲げて、その前にタタンが立った。容赦なく落ちてくる岩を切り溶かしていく。
「世界を渡る揺らぎ、頬を辿る柔らかな翼、涼しの緑の輝きと、荒ぶる調べの共鳴よ、我が内なる力を糧にその力を貸したまえ」
釣り上がった眦が、真っ直ぐにザッカーリャを見ている。風の檻がザッカーリャを包み込み、動きを封じた。ならず者を閉じ込めた時より大きな檻で、その上、シーリアは沢山の魔力を使ったあとだ。顔色が悪い。
視界の隅で、テントが揺れている。
たぶん外に出ようとするミシェイル様を、アリアンさんが止めているんだと思う。今朝のままのミシェイル様なら、立ち上がるのもやっとだろう。ザッカーリャが落ち着くまでは、出てきちゃダメよね。
「ザシャル先生、シーリアが保ちません! 私、やらかしていいですか⁈」
勇者もどきに見られるかもしれないから、先生に確認を⋯⋯って。
げ、勇者もどき、アル従兄様と互角に打ち合ってんの⁈ 嘘だぁ! 腐っても勇者なわけ⁈
ザシャル先生もふたり相手になんかやってる!
時間がない。
シーリアが潰れる前に《浄光照射》をぶちかまさないと‼︎
「フェイ。あの三人、山の下まで、放ってくれる?」
「造作もない。だが、放るだけでよいのか? 我は蛇の姫には手出しできぬが、我が姫を侮辱した輩には何をしても、理には触れぬ」
ユン、ナイス! ここ、守護龍さんの使いどころ!
「な、な、な⋯⋯」
「うわぁッ」
「卑怯だぞーーーーッ」
人化を解いてエセ勇者三人組をぶら下げた守護龍さんは、空に飛び立っていった。
「殺しちゃ、ダメ」
ユンの声が、守護龍さんに届いているのを祈ろう。
お待たせ、シーリア!
いま行くよ!
予約しそびれてました⋯⋯。
⁂ ⁂ ⁂ ⁂ ⁂
守護龍さんは私たちを下ろすために、テントの近くに降り立った。ザッカーリャの近くは、彼女の尻尾がのたうっていてとても危険なんだもの。
勇者様御一行と思しき三人連れの男は、今度は龍身の守護龍さんを指差して、わあわあ言った。指差しするんじゃありません!
まったく三人連れの男ってのに運がないわね! 帝国で遭遇した冒険者崩れも三人連れだったわよ。
さっきから、私たちと守護龍さんを見比べて、化物とか魔女とか怪物とか、言いたい放題している。その度に眠たげな目元のザシャル先生から表情が抜け落ちて、アル従兄様の目つきが凶悪になってくる。
うちの保護者の皆さん、たぶん只者じゃないですよー。勇者様御一行さん、覚悟してね!
守護龍さんは大きな身体を丸めてユンに鼻面を押し当てる。輪郭を滲ませると次の瞬間には、美しい青年が立っていた。爬虫類の目さえなければ、美しすぎる人間だ。
で、勇者様御一行さんの出立、これがまぁ、全身ペッカペカの加護宝珠だらけなわけよ。ピカピカじゃないの、ペカペカ。ニュアンスわかる? お高いものもお安く見せちゃう残念なマジックを発揮する人たちだ。本人たちに品がないのよ。
人間に変化した美しすぎる龍は温度を感じさせない爬虫類の目で、勇者たちを見た。
三人は気圧されて、ピタリと口をつぐんだ。
「我が姫よ、我と姫とを貶めた此奴ら、我が顎の餌食にしてよいか?」
「ダメ」
「では爪ならどうだ?」
「それもダメ」
「いや、俺はいいと思うぞ」
せっかくユンが止めてるのに、アル従兄様ったら茶々入れないでくれるかしら。
「⋯⋯ちょっと待て、お前たち、領主が言ってた聖女様の一行か?」
あぁん? 領主だぁ?
「聖女様は黒髪って言ってたな」
「ああ、今、化物に命令してたな」
「なるほど、あの化物は聖女様の使い魔か」
ボソボソボソ~。こらこら、全部聞こえてるからね! て言うかあんたたち、あのロリコン領主に言われて追いかけてきたのね!
「聖女様がザッカーリャ山に向かっているのは、蛇王の祠を封じるために違いないから、どさくさに紛れて手柄のおこぼれを預かってこいって!」
「あ、馬鹿! 領主が陛下に取り入るための手土産にしようとしてんのが、バレるだろう!」
「俺たち来るの早すぎたんじゃねぇか? めっちゃ暴れてんぞ、あの蛇女。計画ではトドメ刺すギリギリにちょっと参加するはずだったじゃねぇか!」
⋯⋯なんだこのエセ勇者。
昔のアニメに出てくるとぼけた悪役みたいなノリね。
「ヴィラード国が貧しいのは、みんなあの蛇女が悪いって言うじゃねぇか。聖女様、さっさと退治してくんねぇかな」
男が口にした瞬間、ザッカーリャが一際高く悲鳴を上げた。今、男の意識がザッカーリャに向かったんだわ。
ひとりひとりの小さな怨みが、ザッカーリャにたどり着くころには大きなうねりになっている。その片鱗を見てしまった。
「アル従兄様、ザッカーリャを鎮めます! このアホどもの意識を刈っておいて!」
どうしよう、ザッカーリャがのたうちまわっているから、後ろに回り込めない。四方を囲まないと四点結界が完成しないのに。
エセ勇者たちの怨嗟だけじゃなくて、ヴィラード中の怨嗟が再びザッカーリャを蝕んでいる。
「タタンっ」
「はい、お嬢様!」
シーリアが杖を掲げて、その前にタタンが立った。容赦なく落ちてくる岩を切り溶かしていく。
「世界を渡る揺らぎ、頬を辿る柔らかな翼、涼しの緑の輝きと、荒ぶる調べの共鳴よ、我が内なる力を糧にその力を貸したまえ」
釣り上がった眦が、真っ直ぐにザッカーリャを見ている。風の檻がザッカーリャを包み込み、動きを封じた。ならず者を閉じ込めた時より大きな檻で、その上、シーリアは沢山の魔力を使ったあとだ。顔色が悪い。
視界の隅で、テントが揺れている。
たぶん外に出ようとするミシェイル様を、アリアンさんが止めているんだと思う。今朝のままのミシェイル様なら、立ち上がるのもやっとだろう。ザッカーリャが落ち着くまでは、出てきちゃダメよね。
「ザシャル先生、シーリアが保ちません! 私、やらかしていいですか⁈」
勇者もどきに見られるかもしれないから、先生に確認を⋯⋯って。
げ、勇者もどき、アル従兄様と互角に打ち合ってんの⁈ 嘘だぁ! 腐っても勇者なわけ⁈
ザシャル先生もふたり相手になんかやってる!
時間がない。
シーリアが潰れる前に《浄光照射》をぶちかまさないと‼︎
「フェイ。あの三人、山の下まで、放ってくれる?」
「造作もない。だが、放るだけでよいのか? 我は蛇の姫には手出しできぬが、我が姫を侮辱した輩には何をしても、理には触れぬ」
ユン、ナイス! ここ、守護龍さんの使いどころ!
「な、な、な⋯⋯」
「うわぁッ」
「卑怯だぞーーーーッ」
人化を解いてエセ勇者三人組をぶら下げた守護龍さんは、空に飛び立っていった。
「殺しちゃ、ダメ」
ユンの声が、守護龍さんに届いているのを祈ろう。
お待たせ、シーリア!
いま行くよ!
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