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白鷹騎士団。
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三兄様が帰ってきた。基、先触れでやってきた。父様は帝都に置いてけぼりよ。
辺境伯爵家は私兵を領地に持つことを許されるかわりに正嫡がひとり以上、帝都に詰めていなくてはいけない決まりがある。これはローゼウス家だけじゃなくて、他の辺境伯爵家も同じなの。
正嫡の三男が白鷹騎士団と一緒に帝都を出たから、父様はその決まりに従って帝都に残ったんですって。
「宝石姫ーーぇぇえ!」
安定のシスコン!
「ローゼウス! 仕事をしろ!」
アリアンさん、ここにいる人間、ほとんどローゼウスなんで名前で呼んだほうがいいと思うわ。広間に集まった一族の視線を一身に浴びて、アリアンさんはそれに気づいたようだ。
「エリアス、ロージー嬢に会えて嬉しいのはわかるが、まずは領主代理に挨拶とベース設置の許可だろう」
大兄様に面会を求めて広間に入った瞬間、三兄様は私を見つけて方向転換した。こっちに突っ込んでこようとするのを、アリアンさんが羽交い締めにして引き止めた。さすがの反射神経だわ。
私のとなりではタタンがドン引きしている。
広間の一番上座には椅子が設えられていて、ミシェイル様が腰掛けている。領主の椅子だけど、1番身分の高い皇子殿下にお座りいただいている。カーラちゃんはそ傍から離れない。
大兄様は一段下に立って三兄様を迎えた。ようやく挨拶が始まって、三兄様がキビキビした騎士の礼を見せた。
大兄様は騎士団の野営の拠点にいつもの岩場を許可すると、早速労いの炊き出しの指示をする。あそこの岩場、演習でしょっちゅう使うから、炊き出ししやすいのよね。
「殿下、恐れ入りますが、炊き出しの際は慰問に赴いていただけませんか?」
皇家の貴人が足を運ぶことで、鼓舞されるものだ。大兄様が頼むとミシェイル様は微笑んだ。
「喜んで」
大兄様は演習場に足を運んでいただくだけのつもりだったみたいだけど、ミシェイル様は包丁も握った。真剣な顔でジャガイモの皮を剥く姿は危なっかしくも微笑ましい。
私はもちろん参加要請があった。シーリアたちはお客様だから部屋で寛いでいてもらってもよかったんだけど、結局全員で来ちゃった。
領民も加わって、慣れた手つきで大鍋を天然岩をくり抜いた竈門に乗せて油を注ぎ込んでいる。そこにバケツでスライスした玉葱をぶち込んで、ユンの身長より大きなヘラで焦げないようにかき回す。
「なんですの、この機動力。皆さん普通の領民ですわよね?」
人参をひたすら切っていたシーリアが、手を止めて口をアングリと開いた。どんな顔しても美人は美人ね。
「避難訓練の賜物よ」
ただ集まるだけじゃ、烏合の衆ですもの。炊き出しまでやるから連帯感も生まれるし、自然と自分の役割が見つかるみたいよ。
女将さんたちがガンガン野菜を切って、親父さんたちが鍋をかき回す。これが一番効率がいい。
アリアンさんとアル従兄様に指示されて、騎士の皆さんが岩場に陣幕を張る。長い年月をかけて岩を削って作られた馬溜まりになりそうな場所とか、動物や敵に見つからないよう擬装された井戸とかを案内している。
「特訓した時も思ったんですけど、トイレまであるってすごいですね」
タタンに言われて、そうかと思う。前世からトイレはあって当たり前のものだから、気にしたことなかった。穴の下に水が流れていて、天然の水洗なのよ。演習のときはその上に小さなテントを張るの。まさに仮設トイレ。
こうなると、ますますご先祖様は自治会長疑惑が⋯⋯。
伝統の炊き出し料理も気になり始めた。カレーか豚汁を思わせる、具沢山の芋と野菜のごった煮スープ。これ、人気なのよね。
出来上がったスープを砦から持ってきた器に入れて配る。ミシェイル様が激励しながら手渡すと、騎士の皆さんは感激して受け取っていた。
ちゃっかり並んでいた三兄様とアル従兄様は、私の手から受け取って、にやにや気持ち悪い笑いを浮かべながら食べていた。なんでそれでもイケメンなのよ。
フィッツヒュー団長も大兄様への顔見せを終えて、陣幕を張った演習場に帰ってきた。ミシェイル様からスープを受け取って、平騎士に混じってかき込み、焚き火を囲む。
彼らは帝都から遥々ローゼウスまでやって来て、若い騎士は初めての戦闘を経験することになるんだろう。
それから六日後、敵襲を告げる空砲が響き渡った。
辺境伯爵家は私兵を領地に持つことを許されるかわりに正嫡がひとり以上、帝都に詰めていなくてはいけない決まりがある。これはローゼウス家だけじゃなくて、他の辺境伯爵家も同じなの。
正嫡の三男が白鷹騎士団と一緒に帝都を出たから、父様はその決まりに従って帝都に残ったんですって。
「宝石姫ーーぇぇえ!」
安定のシスコン!
「ローゼウス! 仕事をしろ!」
アリアンさん、ここにいる人間、ほとんどローゼウスなんで名前で呼んだほうがいいと思うわ。広間に集まった一族の視線を一身に浴びて、アリアンさんはそれに気づいたようだ。
「エリアス、ロージー嬢に会えて嬉しいのはわかるが、まずは領主代理に挨拶とベース設置の許可だろう」
大兄様に面会を求めて広間に入った瞬間、三兄様は私を見つけて方向転換した。こっちに突っ込んでこようとするのを、アリアンさんが羽交い締めにして引き止めた。さすがの反射神経だわ。
私のとなりではタタンがドン引きしている。
広間の一番上座には椅子が設えられていて、ミシェイル様が腰掛けている。領主の椅子だけど、1番身分の高い皇子殿下にお座りいただいている。カーラちゃんはそ傍から離れない。
大兄様は一段下に立って三兄様を迎えた。ようやく挨拶が始まって、三兄様がキビキビした騎士の礼を見せた。
大兄様は騎士団の野営の拠点にいつもの岩場を許可すると、早速労いの炊き出しの指示をする。あそこの岩場、演習でしょっちゅう使うから、炊き出ししやすいのよね。
「殿下、恐れ入りますが、炊き出しの際は慰問に赴いていただけませんか?」
皇家の貴人が足を運ぶことで、鼓舞されるものだ。大兄様が頼むとミシェイル様は微笑んだ。
「喜んで」
大兄様は演習場に足を運んでいただくだけのつもりだったみたいだけど、ミシェイル様は包丁も握った。真剣な顔でジャガイモの皮を剥く姿は危なっかしくも微笑ましい。
私はもちろん参加要請があった。シーリアたちはお客様だから部屋で寛いでいてもらってもよかったんだけど、結局全員で来ちゃった。
領民も加わって、慣れた手つきで大鍋を天然岩をくり抜いた竈門に乗せて油を注ぎ込んでいる。そこにバケツでスライスした玉葱をぶち込んで、ユンの身長より大きなヘラで焦げないようにかき回す。
「なんですの、この機動力。皆さん普通の領民ですわよね?」
人参をひたすら切っていたシーリアが、手を止めて口をアングリと開いた。どんな顔しても美人は美人ね。
「避難訓練の賜物よ」
ただ集まるだけじゃ、烏合の衆ですもの。炊き出しまでやるから連帯感も生まれるし、自然と自分の役割が見つかるみたいよ。
女将さんたちがガンガン野菜を切って、親父さんたちが鍋をかき回す。これが一番効率がいい。
アリアンさんとアル従兄様に指示されて、騎士の皆さんが岩場に陣幕を張る。長い年月をかけて岩を削って作られた馬溜まりになりそうな場所とか、動物や敵に見つからないよう擬装された井戸とかを案内している。
「特訓した時も思ったんですけど、トイレまであるってすごいですね」
タタンに言われて、そうかと思う。前世からトイレはあって当たり前のものだから、気にしたことなかった。穴の下に水が流れていて、天然の水洗なのよ。演習のときはその上に小さなテントを張るの。まさに仮設トイレ。
こうなると、ますますご先祖様は自治会長疑惑が⋯⋯。
伝統の炊き出し料理も気になり始めた。カレーか豚汁を思わせる、具沢山の芋と野菜のごった煮スープ。これ、人気なのよね。
出来上がったスープを砦から持ってきた器に入れて配る。ミシェイル様が激励しながら手渡すと、騎士の皆さんは感激して受け取っていた。
ちゃっかり並んでいた三兄様とアル従兄様は、私の手から受け取って、にやにや気持ち悪い笑いを浮かべながら食べていた。なんでそれでもイケメンなのよ。
フィッツヒュー団長も大兄様への顔見せを終えて、陣幕を張った演習場に帰ってきた。ミシェイル様からスープを受け取って、平騎士に混じってかき込み、焚き火を囲む。
彼らは帝都から遥々ローゼウスまでやって来て、若い騎士は初めての戦闘を経験することになるんだろう。
それから六日後、敵襲を告げる空砲が響き渡った。
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