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24 気づいて
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──恥ずかしい。
部屋に戻り、夕食と入浴を済ませ一人になった部屋の中。
私はベッドに突っ伏して、さっきミリーメイが言っていた言葉を思い出していた。
『食べられたのでしょう?』
『口紅、とれてます』
真っ先にラリーの部屋での行為を思い出した私は、ミリーメイに気づかれたのだと思って慌てた。
その後、指輪へと話が移りほっとしていたのだけれど。
ミリーメイが少な目の夕食を運んできた時、自分の恥ずかしい勘違いに気づくことになった。
(ラリーの部屋でお菓子を食べてきたと思っていただけだったなんて……)
──勘違いをするのも仕方ない。
今日はいろいろなことが、ありすぎた。
朝から地下室へ行き、その後教会へ行って驚愕の事実を知った。
それは、ラリーも知らなかったこと。
私は、祖父母の養子として届けられていたのだ。
祖父母は、私の父親がラリーではないと知り自分たちの養子にしていた。
彼の目にも触れさせたくなかったらしく、偽の『しきたり』まで作り、離れた別邸へ送ったのだ。
それだけじゃなく……公爵夫妻は、ラリーと交際をしていたメイドのリディアを始末していた。
私は驚きのあまり、『ラリー』と呼んでしまって。
思いがけず、その場で生まれ変わりを伝えることになった。
それは、結果としてよかったけれど。
メイドのリディアの死や、その後に起こった様々なこと全てにテイラーの関与が浮上した。
すべては彼女の恋情から起きたことかもしれないと、ノエルとセバスチャンが話し、ラリーも証拠を掴むと言っていた。
テイラーが前世の私の死に関係があると聞いたこともショックだったけれど、彼女のラリーへの恋心を知ったことの衝撃も大きかった。
(まさか、テイラーが彼を好きだったなんて……)
前世の私は自分のことに精一杯で、彼女の恋心にまったく気づいていなかった。
テイラーはラリーのことをよく弟の様だと話していた。
私はそれを信じていたが、本当は違ったのだ。
それなのに私は、気づいていなかったとはいえ、ラリーから告白してもらい交際をすることになったことを話した。
公爵令息とメイドの恋。私だって、彼と生涯を共にできるわけじゃない、今だけのことだとわかっていた。
けれど──。
『絶対に無理だなんて、そんなことはないわ。身分差があっても結婚する人もいるのよ、私、応援するわ』
あの時のテイラーの言葉は嬉しかった。
本当にそうなれるかもしれないと思った。
──姉のように思っていた。
だから、すべてを話した。
今思えば、私から聞く話はどんな内容であっても、テイラーには不快でしかなかっただろう……。
そんな中で、私を憎む心が生まれてもおかしくはない。
──殺してしまいたいほどの憎悪が──
ただわからないことがある。
ラリーを好きで、私を嫌っていた彼女は何故、二人だけで会えるようにとあの地下室を教えたのだろう?
(そういえば……)
前世、あの地下室でラリーとはじめてキスをした翌日のこと。
私はテイラーに、そのことを言い当てられた。
確か、はじめて手を繋いだ日もそうだった。
ノエルが言っていたように、ただ感が鋭い人なのかもしれないけれど。
あれはまるで、見ていたかの様な言い方だった。
──本当に見ていたのでは?──
あの地下室には天窓がある。
前世の私は、その天窓がある南の庭園にだけは足を運んだことがないから、見ることが可能なのかはまだわからないけれど。
当時の庭師は、メイドや使用人が庭園へ入ることを嫌っていた。唯一、入ることが許されていたのはそこへ行くまでの小道が作られていた四阿だけ。
昨夜、使用人たちは庭園の片隅で話をしていた。
今は自由に入ることが許されているのだと思う。
(本当に見ることができるのか……確かめてみる?)
これでもし、天窓から中を覗くことができるなら……。
(行ってみよう)
夜空には月が輝いている。
お母さまからもらった銀の指輪には、月の女神に守られるという意味があるそうだ。
だから大丈夫。
(ただ、見ることができるかの確認をするだけだから)
クリーム色のナイトドレスに黒い上着を羽織って、足音がしない部屋専用の布の靴を履いたまま、私はそっと部屋を出た。
◇
運よく、三階から一階までは誰に見つかることもなく、降りることができた。
南館へ行く廊下に出ようとした所で、見回りの使用人の姿を見つけ、物陰に潜んだ。
やり過ごし、なんとか南館へと着いた。
(静かね……)
前世でも、こうして人に見られないように注意しながらあの地下室へと通っていた。
あの頃は真っ直ぐに地下室へと向かっていたけれど。今の目的は庭に面する天窓だ。
廊下から庭に出て、建物を伝いながら地下室の方へと移動した。
明かり一つなかったが、ふんわりと輝いている月のお陰で、夜目がきいた。
草の音に気をつけながら、なんとか天窓の場所へと辿り着いた。
(こんな風になっていたのね)
一見、塀のように見える壁の上部に天窓はあった。
私が背伸びをしてなんとか覗ける高さだ。
テイラーは私より背が高い。覗くことは可能だ。
(本当に見えるのかな?)
背伸びして覗いてみると、地下室の長椅子が見えた。
(テイラーは、いつもここから中の様子を見ていたの?)
そのまま覗いていると、そこにラリーが現れた。
地下室へと入ってきたラリーは、長椅子に腰を下ろした。
誰もいない隣を見つめ、しばらくそのままじっとして。
ふいに、顔を上げ天窓へ目を向けた。
パッと思わず身を隠した。
しばらくして再び覗いてみると、ラリーはすでにいなくなっていた。
ラリーも私のように何かを確かめにきたのだろう。
つい条件反射的に隠れてしまったが、隠れる必要はなかった気がする。
(こうやって、テイラーは私たちを覗いていたのかもしれない……)
ここから覗いていたという証拠にはならないけれど、可能性は確かめられた。
とりあえず、明日にでもラリーに話してみよう、そう思い部屋へ戻った。
部屋に戻り、夕食と入浴を済ませ一人になった部屋の中。
私はベッドに突っ伏して、さっきミリーメイが言っていた言葉を思い出していた。
『食べられたのでしょう?』
『口紅、とれてます』
真っ先にラリーの部屋での行為を思い出した私は、ミリーメイに気づかれたのだと思って慌てた。
その後、指輪へと話が移りほっとしていたのだけれど。
ミリーメイが少な目の夕食を運んできた時、自分の恥ずかしい勘違いに気づくことになった。
(ラリーの部屋でお菓子を食べてきたと思っていただけだったなんて……)
──勘違いをするのも仕方ない。
今日はいろいろなことが、ありすぎた。
朝から地下室へ行き、その後教会へ行って驚愕の事実を知った。
それは、ラリーも知らなかったこと。
私は、祖父母の養子として届けられていたのだ。
祖父母は、私の父親がラリーではないと知り自分たちの養子にしていた。
彼の目にも触れさせたくなかったらしく、偽の『しきたり』まで作り、離れた別邸へ送ったのだ。
それだけじゃなく……公爵夫妻は、ラリーと交際をしていたメイドのリディアを始末していた。
私は驚きのあまり、『ラリー』と呼んでしまって。
思いがけず、その場で生まれ変わりを伝えることになった。
それは、結果としてよかったけれど。
メイドのリディアの死や、その後に起こった様々なこと全てにテイラーの関与が浮上した。
すべては彼女の恋情から起きたことかもしれないと、ノエルとセバスチャンが話し、ラリーも証拠を掴むと言っていた。
テイラーが前世の私の死に関係があると聞いたこともショックだったけれど、彼女のラリーへの恋心を知ったことの衝撃も大きかった。
(まさか、テイラーが彼を好きだったなんて……)
前世の私は自分のことに精一杯で、彼女の恋心にまったく気づいていなかった。
テイラーはラリーのことをよく弟の様だと話していた。
私はそれを信じていたが、本当は違ったのだ。
それなのに私は、気づいていなかったとはいえ、ラリーから告白してもらい交際をすることになったことを話した。
公爵令息とメイドの恋。私だって、彼と生涯を共にできるわけじゃない、今だけのことだとわかっていた。
けれど──。
『絶対に無理だなんて、そんなことはないわ。身分差があっても結婚する人もいるのよ、私、応援するわ』
あの時のテイラーの言葉は嬉しかった。
本当にそうなれるかもしれないと思った。
──姉のように思っていた。
だから、すべてを話した。
今思えば、私から聞く話はどんな内容であっても、テイラーには不快でしかなかっただろう……。
そんな中で、私を憎む心が生まれてもおかしくはない。
──殺してしまいたいほどの憎悪が──
ただわからないことがある。
ラリーを好きで、私を嫌っていた彼女は何故、二人だけで会えるようにとあの地下室を教えたのだろう?
(そういえば……)
前世、あの地下室でラリーとはじめてキスをした翌日のこと。
私はテイラーに、そのことを言い当てられた。
確か、はじめて手を繋いだ日もそうだった。
ノエルが言っていたように、ただ感が鋭い人なのかもしれないけれど。
あれはまるで、見ていたかの様な言い方だった。
──本当に見ていたのでは?──
あの地下室には天窓がある。
前世の私は、その天窓がある南の庭園にだけは足を運んだことがないから、見ることが可能なのかはまだわからないけれど。
当時の庭師は、メイドや使用人が庭園へ入ることを嫌っていた。唯一、入ることが許されていたのはそこへ行くまでの小道が作られていた四阿だけ。
昨夜、使用人たちは庭園の片隅で話をしていた。
今は自由に入ることが許されているのだと思う。
(本当に見ることができるのか……確かめてみる?)
これでもし、天窓から中を覗くことができるなら……。
(行ってみよう)
夜空には月が輝いている。
お母さまからもらった銀の指輪には、月の女神に守られるという意味があるそうだ。
だから大丈夫。
(ただ、見ることができるかの確認をするだけだから)
クリーム色のナイトドレスに黒い上着を羽織って、足音がしない部屋専用の布の靴を履いたまま、私はそっと部屋を出た。
◇
運よく、三階から一階までは誰に見つかることもなく、降りることができた。
南館へ行く廊下に出ようとした所で、見回りの使用人の姿を見つけ、物陰に潜んだ。
やり過ごし、なんとか南館へと着いた。
(静かね……)
前世でも、こうして人に見られないように注意しながらあの地下室へと通っていた。
あの頃は真っ直ぐに地下室へと向かっていたけれど。今の目的は庭に面する天窓だ。
廊下から庭に出て、建物を伝いながら地下室の方へと移動した。
明かり一つなかったが、ふんわりと輝いている月のお陰で、夜目がきいた。
草の音に気をつけながら、なんとか天窓の場所へと辿り着いた。
(こんな風になっていたのね)
一見、塀のように見える壁の上部に天窓はあった。
私が背伸びをしてなんとか覗ける高さだ。
テイラーは私より背が高い。覗くことは可能だ。
(本当に見えるのかな?)
背伸びして覗いてみると、地下室の長椅子が見えた。
(テイラーは、いつもここから中の様子を見ていたの?)
そのまま覗いていると、そこにラリーが現れた。
地下室へと入ってきたラリーは、長椅子に腰を下ろした。
誰もいない隣を見つめ、しばらくそのままじっとして。
ふいに、顔を上げ天窓へ目を向けた。
パッと思わず身を隠した。
しばらくして再び覗いてみると、ラリーはすでにいなくなっていた。
ラリーも私のように何かを確かめにきたのだろう。
つい条件反射的に隠れてしまったが、隠れる必要はなかった気がする。
(こうやって、テイラーは私たちを覗いていたのかもしれない……)
ここから覗いていたという証拠にはならないけれど、可能性は確かめられた。
とりあえず、明日にでもラリーに話してみよう、そう思い部屋へ戻った。
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