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本編
第23 移り香を咎めて 2
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「服を着替えに行かれるんですか?」
昨日も離れる前にそう言っていた。
ギガイにふて寝と言われてしまった眠りの後、いつの間にか戻っていたギガイからは、匂いは消えていた状態だった。それなら、今日も服を替えて移り香を消してくる予定なのだろう。
劣等感さえなくなれば、愛されている自信で揺らがずにいられると思っていたのに、みっともない嫉妬心を抑えきれない。
(私へ初めて温もりを与えてくれた腕なのに……)
そんなギガイの腕はレフラにとって何よりも大切なものだった。その大切なものをレフラの知らない所で、知らない誰かが触れていると思うと、それだけで胸がズキズキと痛くなる。
どんなに自分を納得させようとしても、結局は一瞬でもギガイの腕の中に誰かの影を感じることがイヤだった。
でも本当なら、誰も制限することができない程の絶対的な力を持った主だ。しかもギガイへ寵愛を望む者達も多くいる。そんなギガイを自分だけへ束縛しようとすることは不遜なことだということもレフラだって分かってはいた。
ギガイが一時的にでも誰かへ差し出すことを決めたのなら、きっと素直に従うべきなのだろう。
(だって、それでもギガイ様に大切にして貰えていることには変わらないんですから……)
それ以上を望むことは欲張りすぎだと、これまで培ってきたレフラの理性が戒める。
でもギガイから感じる誰かの影に、イヤだとグズる心と嗜める理性が揺れ動いていた。
「あぁ、そうだが。どうした?」
指先を強く握り込んだレフラへギガイが怪訝そうに確認する。その声に思わず “なんでもない” と、感情に蓋をしかけたレフラが顔を上げた。
いつの間にか腰をかがめて、レフラの顔を覗き込んでいる。視線が重なったギガイの瞳はいつもの蜂蜜色の眼光だった。
その甘い色に心が揺れる。とっさに跳ね上がるように抱きついて、ギガイの首に腕を回した。
「おい!」
やっぱり抱き上げる気はなかったのだろう。そんなレフラを支えながらも、引き離そうとするギガイへ抵抗するようにレフラがギュッと力を込める。
首筋からは思った通り、あの匂いが漂っていた。官能的に立ち上る香に、レフラの心が締め付けられる。
「私も一緒に行きたいです」
そう言いながらギガイの首筋に額をグリグリと擦り付ける。この匂いが嫌いなのだ。少しでも早く自分の匂いに上書きしてしまいたかった。
「すぐに戻る。お前はここで待っていろ」
力尽くで引き離すことは楽だろう。でも、困ったような顔をしたまま手を離すように、ギガイがレフラを宥めてくる。
「イヤです!」
「レフラ」
「だってギガイ様がワガママを言っても良いと仰ったじゃないですか」
隠すことを禁じたのはむしろギガイの方なのだ。そうでなければ、レフラは今までのようにちゃんと、こんな気持ちは飲み込んで、みっともなくグズって見せたりしなかった。
それなのに。謀るなと叱られたのに。受け入れてもらえないのなら、レフラはどうして良いのか分からなくなってしまう。
今までのように “仕方ない” と自分を納得させて、穏やかに笑っていることもできないのだから。
レフラはもう一度、ギガイへしがみつく腕に力を込めた。
昨日も離れる前にそう言っていた。
ギガイにふて寝と言われてしまった眠りの後、いつの間にか戻っていたギガイからは、匂いは消えていた状態だった。それなら、今日も服を替えて移り香を消してくる予定なのだろう。
劣等感さえなくなれば、愛されている自信で揺らがずにいられると思っていたのに、みっともない嫉妬心を抑えきれない。
(私へ初めて温もりを与えてくれた腕なのに……)
そんなギガイの腕はレフラにとって何よりも大切なものだった。その大切なものをレフラの知らない所で、知らない誰かが触れていると思うと、それだけで胸がズキズキと痛くなる。
どんなに自分を納得させようとしても、結局は一瞬でもギガイの腕の中に誰かの影を感じることがイヤだった。
でも本当なら、誰も制限することができない程の絶対的な力を持った主だ。しかもギガイへ寵愛を望む者達も多くいる。そんなギガイを自分だけへ束縛しようとすることは不遜なことだということもレフラだって分かってはいた。
ギガイが一時的にでも誰かへ差し出すことを決めたのなら、きっと素直に従うべきなのだろう。
(だって、それでもギガイ様に大切にして貰えていることには変わらないんですから……)
それ以上を望むことは欲張りすぎだと、これまで培ってきたレフラの理性が戒める。
でもギガイから感じる誰かの影に、イヤだとグズる心と嗜める理性が揺れ動いていた。
「あぁ、そうだが。どうした?」
指先を強く握り込んだレフラへギガイが怪訝そうに確認する。その声に思わず “なんでもない” と、感情に蓋をしかけたレフラが顔を上げた。
いつの間にか腰をかがめて、レフラの顔を覗き込んでいる。視線が重なったギガイの瞳はいつもの蜂蜜色の眼光だった。
その甘い色に心が揺れる。とっさに跳ね上がるように抱きついて、ギガイの首に腕を回した。
「おい!」
やっぱり抱き上げる気はなかったのだろう。そんなレフラを支えながらも、引き離そうとするギガイへ抵抗するようにレフラがギュッと力を込める。
首筋からは思った通り、あの匂いが漂っていた。官能的に立ち上る香に、レフラの心が締め付けられる。
「私も一緒に行きたいです」
そう言いながらギガイの首筋に額をグリグリと擦り付ける。この匂いが嫌いなのだ。少しでも早く自分の匂いに上書きしてしまいたかった。
「すぐに戻る。お前はここで待っていろ」
力尽くで引き離すことは楽だろう。でも、困ったような顔をしたまま手を離すように、ギガイがレフラを宥めてくる。
「イヤです!」
「レフラ」
「だってギガイ様がワガママを言っても良いと仰ったじゃないですか」
隠すことを禁じたのはむしろギガイの方なのだ。そうでなければ、レフラは今までのようにちゃんと、こんな気持ちは飲み込んで、みっともなくグズって見せたりしなかった。
それなのに。謀るなと叱られたのに。受け入れてもらえないのなら、レフラはどうして良いのか分からなくなってしまう。
今までのように “仕方ない” と自分を納得させて、穏やかに笑っていることもできないのだから。
レフラはもう一度、ギガイへしがみつく腕に力を込めた。
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