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本編
第52 抱いた悋気 9
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まさか、と思いながらも、その道のりにレフラは期待をしてしまう。
「あの……ギガイ様……宮へ戻るんでしょうか?」
「……あぁ、そうだな」
チラッとレフラへ視線を向けながらも返答はあまりに素っ気ない。その対応にさっきとは違う痛みで胸が締め付けられていく。
聞いてしまうのは正直怖い。でもギガイとの、こんな時間が続く方がツラかった。
レフラは意を決してゴクッと唾を飲み込んだ。
「あっ、あの……ギガイ様……私に何か、怒って、いませんか……?」
分からない以上は、きっと素直に聞いてしまった方が良いのだ。
「なぜ、そう思う?」
静かな低い声が逆にレフラへ質問する。
「……だって……ギガイ様のお声も目も、いつもと違っています……」
否定されなかった、ということは結局そういうことなのだろう。
レフラはギガイの言葉に項垂れて、自分の手をギュッと握り締めた。
怒らせた理由としてハッキリと心当たりがあるさっきの行為は、すでにギガイから違うのだと言われていた。それなら何が原因なのか。ずっと考えているのに、レフラには一向に見えてこないのだ。
(私はいったい何をしでかしてしまったんでしょう……)
心当たりが全くないような状態なのだ。きっと大丈夫だと、思ってやったことなのだろう。そんな判断の失敗に、レフラはひどく落ち込んでしまった。
やっぱり自分は甘えることがあまり上手くはないのだろう。これぐらいなら大丈夫だと思ったはずの甘えなのに。程度やタイミングでなかなか上手くいっているとは思えなかった。
レフラは項垂れたまま、ギガイへ消え入りそうな声で謝った。
「ごめんなさい。きっと甘えすぎたんです……」
ギガイの視線が上から注がれているようだった。
「……でも、難しいですね、甘えるのって。ギガイ様を不快にさせたくないのに、あまり上手くいかないです……」
そんな気持ちだったせいか、声がみっともなく震えた気がして、「あっ、でも」と慌てて声の調子を上げてみる。
「次からは、もう少し気をつけて頑張ります」
そう言って思わずニコッとギガイへ微笑んだ。それはただ、みっともない自分をこれ以上見せたくなかっただけだった。
だけどそうやって笑顔を向けた瞬間から、レフラの方を見ていたギガイの眉が、ますます顰められていく。
『笑って誤魔化すな。お前のその顔は好きではない』
そう言われていたことを思い出して、レフラは慌てて下を向いた。
『誤魔化しは、私を謀っているのと同じだぞ』
そう言って先日仕置きを受けたばかりだった。
いつもの優しいギガイから与えられた仕置きでさえ、ツラかったのに。いまのギガイから仕置きとなれば、いったいどれだけのツラさだろう。
「ご、ごめんなさい……謀るつもりが、あった訳じゃないんです……」
フォローしようとすればするほど、なんだか状況がますます悪くなっていく。
それに甘えるのを頑張るとは、何なのだろう。そもそもどう頑張れば良いのかさえ分からない。自分で言っておきながら、レフラは途方にくれてしまう。
トントン。
レフラを抱き上げた手が、なだめるように身体を柔らかく叩いてくる。
「……?」
怒っていたはずだったのだ。それなのに、いつものような優しいその感触に、レフラが恐る恐る顔を上げた。
呆れたような表情と疲れが滲み出ている顔でギガイがレフラを見下ろしていた。
「……甘えか……」
ふぅー。
身体の中に溜まりに溜まった何かを、吐き出してるのかもしれない。
呟いた声も、大きな溜息もそんな重々しい音だった。
「……ギガイ様?」
思わず呼びかけたレフラの前で、ギガイが自分の頭をくしゃくしゃと掻いて、ゆっくりと瞬きを1度した。
それはまるで何かをムリに飲み込む姿に見えていて。レフラの心がまたギュッと痛みを訴えてくるようだった。
「あの……ギガイ様……宮へ戻るんでしょうか?」
「……あぁ、そうだな」
チラッとレフラへ視線を向けながらも返答はあまりに素っ気ない。その対応にさっきとは違う痛みで胸が締め付けられていく。
聞いてしまうのは正直怖い。でもギガイとの、こんな時間が続く方がツラかった。
レフラは意を決してゴクッと唾を飲み込んだ。
「あっ、あの……ギガイ様……私に何か、怒って、いませんか……?」
分からない以上は、きっと素直に聞いてしまった方が良いのだ。
「なぜ、そう思う?」
静かな低い声が逆にレフラへ質問する。
「……だって……ギガイ様のお声も目も、いつもと違っています……」
否定されなかった、ということは結局そういうことなのだろう。
レフラはギガイの言葉に項垂れて、自分の手をギュッと握り締めた。
怒らせた理由としてハッキリと心当たりがあるさっきの行為は、すでにギガイから違うのだと言われていた。それなら何が原因なのか。ずっと考えているのに、レフラには一向に見えてこないのだ。
(私はいったい何をしでかしてしまったんでしょう……)
心当たりが全くないような状態なのだ。きっと大丈夫だと、思ってやったことなのだろう。そんな判断の失敗に、レフラはひどく落ち込んでしまった。
やっぱり自分は甘えることがあまり上手くはないのだろう。これぐらいなら大丈夫だと思ったはずの甘えなのに。程度やタイミングでなかなか上手くいっているとは思えなかった。
レフラは項垂れたまま、ギガイへ消え入りそうな声で謝った。
「ごめんなさい。きっと甘えすぎたんです……」
ギガイの視線が上から注がれているようだった。
「……でも、難しいですね、甘えるのって。ギガイ様を不快にさせたくないのに、あまり上手くいかないです……」
そんな気持ちだったせいか、声がみっともなく震えた気がして、「あっ、でも」と慌てて声の調子を上げてみる。
「次からは、もう少し気をつけて頑張ります」
そう言って思わずニコッとギガイへ微笑んだ。それはただ、みっともない自分をこれ以上見せたくなかっただけだった。
だけどそうやって笑顔を向けた瞬間から、レフラの方を見ていたギガイの眉が、ますます顰められていく。
『笑って誤魔化すな。お前のその顔は好きではない』
そう言われていたことを思い出して、レフラは慌てて下を向いた。
『誤魔化しは、私を謀っているのと同じだぞ』
そう言って先日仕置きを受けたばかりだった。
いつもの優しいギガイから与えられた仕置きでさえ、ツラかったのに。いまのギガイから仕置きとなれば、いったいどれだけのツラさだろう。
「ご、ごめんなさい……謀るつもりが、あった訳じゃないんです……」
フォローしようとすればするほど、なんだか状況がますます悪くなっていく。
それに甘えるのを頑張るとは、何なのだろう。そもそもどう頑張れば良いのかさえ分からない。自分で言っておきながら、レフラは途方にくれてしまう。
トントン。
レフラを抱き上げた手が、なだめるように身体を柔らかく叩いてくる。
「……?」
怒っていたはずだったのだ。それなのに、いつものような優しいその感触に、レフラが恐る恐る顔を上げた。
呆れたような表情と疲れが滲み出ている顔でギガイがレフラを見下ろしていた。
「……甘えか……」
ふぅー。
身体の中に溜まりに溜まった何かを、吐き出してるのかもしれない。
呟いた声も、大きな溜息もそんな重々しい音だった。
「……ギガイ様?」
思わず呼びかけたレフラの前で、ギガイが自分の頭をくしゃくしゃと掻いて、ゆっくりと瞬きを1度した。
それはまるで何かをムリに飲み込む姿に見えていて。レフラの心がまたギュッと痛みを訴えてくるようだった。
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