泡沫のゆりかご 二部 ~獣王の溺愛~

丹砂 (あかさ)

文字の大きさ
106 / 179
本編

第105 窮兎、狼を噛む 1

しおりを挟む
「うぅ~~!! 身体が痛いです……」

「ほら、揉んでやるから、こっちに来い」

手招きをするギガイに、レフラがもぞもぞと這いながら、近付いてくる。その腕を引き寄せれば、レフラの身体が、シーツの上にペタンとうつ伏せた。

「固くなっているな」

指先で軽く押した背筋は、酷使されたせいだろう。触れただけで分かるほと、だいぶ強ばっている。それを解すように、ギガイがレフラの背中を揉み始めた。

あの後からずっと、鈴を揺らさないように、レフラは腕の中で固まっていた。不自然な動きは、日頃使われていない筋肉に負担を掛けているようだった。

羞恥に弱いレフラなのだ。
この方法ならば、不要な苦痛を与える事はない。
最小限の罰で最大限の効果を得るには、良い方法だと思って選んだ方法だった。

(そこは、思惑通りだったんだが)

だけど、思った以上に効果があり過ぎたのだ。身体に負担が出るほどに、レフラはガチガチになっていた。

『大丈夫だから、力を抜け』

何度そうやって声を掛けても、ギクシャクと頷くだけで精一杯のレフラに、ギガイも途中からは鈴が鳴らないように、布を巻いて工夫をしたぐらいだった。

「痛くないか?」

力を込めて壊してしまわないように、できる限り優しい力で押していく。だいぶ解れてきたのか、グイッグイッと指先に感じる弾力が、さっきとは変わっていた。

「気持ちいいです……」

風呂に入って、身体が温まっていたのも、良かったのだろう。ほぅ、と心地よさそうな吐息がレフラから漏れる。
だいぶリラックスしている様子に、ギガイの口角が緩んだ。湧き上がる気持ちのままに、身体を屈めて頭にキスを落とした。

ピクッと身体を震わせたレフラが、首を捻ってギガイの方を見上げてくる。

「どうした?」

サラリと顔に掛かった髪を払い除けて、ギガイが問いかけるが、レフラからは答えがない。そして何も言わないまま、レフラがムクッと身体を起こした。

「レフラ?」

突然どうしたのか。
不思議に思いながら呼びかけたギガイの寝衣を、レフラの手がクンッと引いてくる。

「……」

目の前にあるレフラの顔は、唇が不機嫌そうに尖っていた。意図は全く読めていない。それでも求められている事は何となく分かり、引かれるままにレフラの側へ胡坐をかく。

「身体はもう良いのか?」

答える気がないのだろう。その質問にも言葉を返さないまま、身体を起こしたレフラが、ポスッとギガイの足の上に腰を降ろす。
そのまま収まりの良い姿勢を探しているのか、モゾモゾとしばらく身動いだ後、ギガイの胸に頭を預けた。

「……脚も、痛いです……」

ギガイは目を何度か瞬かせた後、突然のレフラの行動に込み上げた笑いを、必死に抑え込んだ。

もしもここで笑おうものなら、だいぶ機嫌を損ねるだろう。
フッと漏れそうになる笑いを、軽く咳をして抑え込む。

「そうか、この辺りで良いか?」

ギガイはレフラの身体を抱え込んだまま、腕を伸ばして太股からふくらはぎまでを揉んでいく。ムスッとしたような表情で、レフラは下を向いたままだった。そのせいでギガイの様子に、気が付いた様子は全くない。

コクッと素直に頷いたレフラに、またギガイの口元がフッと緩んでしまう。頭に漏れた吐息がかかったのか、レフラがギガイの方をチラッと見上げた。

(これは、だいぶ拗ねてるな)

その理由にも心当たりがあるギガイだった。機嫌を取るように額へキスをするが、拗ねている、というアピールなのだろう。ギガイの腕の中に甘えるように収まりながらも、レフラは視線をフイッと逸らした。
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

処理中です...