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二部 番外編:待って! 美味しく兎を食べないで!!
待って! 美味しく兎を食べないで!! 1(エイプリルフール2021年・番外編)
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「今日はエイプリルフールなので、レフラ様にこれを差し上げます」
「これは何ですか?」
「ウサ耳のカチューシャですよ。今日は午前中だけは、人を傷付けない嘘なら許される日なので、コレなんかはどうですか?」
「どう、とは?」
「耳だけ変化してしまった、とギガイ様へお見せするんです」
ニコニコとラクーシュが差し出してきた物を、レフラが受け取って掲げてみる。白いもこもこの毛で作られた、柔らかい感触の耳だった。
「またかお前は! 懲りないな! 」
ちょうど書庫から戻ってきたリランが、渡した物を認識して、いつものようにラクーシュの後頭部へ目がけて手を振るった。
パンッ! ガッ! バンッ───!!
その直後に振り返ったラクーシュが、すかさずリランの手を払い流し、掌底を返したようだった。それを手刀で払ったリランが、今度は反対の手で、再び打撃を入れてくる。
繰り出す拳のスピードの速さに、風を切る音が鳴っていた。
「いつもいつも、殴られっぱなしで居られっかよ!」
「少しぐらい衝撃を与えれば、お前の頭もまともに働くだろう!」
小隊長クラスの武官なのだ。こんな会話をしながらも、動きが止まる気配も、鈍るような様子もない。
「えっ!? ええ……ッ!? 待って、2人とも待って」
2人ともすかさずレフラから距離を取っているとはいえ、突然目の前で始まった殴り合いだ。レフラはそんな2人を、どうにか止めようと、焦っていた。
だけどレフラの声が聞こえないのか。2人の動きが止まる様子は全くない。慌てるレフラの前に、スッとエルフィルが立ち位置を変えてくる。
レフラは「そうだ!」っと、エルフィルの方を仰ぎ見た。
「エ、エルフィル様、止めて、止めて下さい!」
「あははは、大丈夫ですよ。ほんの手合わせ程度です。ただ念の為に、俺の後ろに居て下さいね」
だけどエルフィルは今日もまた、笑うだけで2人を止めてくれる様子はなかった。
そんな3人に焦っていたレフラが、突然「あっ!」と小さく声を上げた。どうしたのか、と3人がレフラへ意識を払ったタイミングに、さらにレフラの声が重なってくる。
「ギガイ様?」
3人が背中を向けたままだった扉の方を、レフラが振り返ったようだった。
(扉は開く気配はなかったはずだ)
そう思いながらも、レフラの様子も、発言も、流す訳にはいかなくて、3人はチラッと扉の方を振り返る。だけど案の定、扉は開いた様子はなく、部屋にあの主の気配はない。
鈴を用いた、ギガイの戻りの連絡も入っていないのだ。扉の向こうを探ってみても、当然ながらそこにも主の気配は全く無かった。
「レフラ様?」
いったいどうしたのか。3人がレフラの方へ向き直る。
「だって、ラクーシュ様もリラン様も一向に止めて下さらないうえに、エルフィル様も笑ってばっかりですから。ギガイ様のお名前を使いました……」
以前若い武官への仕返しに、ギガイの名前を使ったことが1度あった。でも今回は仕返しでもない状況だった。そんな嘘を吐いた手前、3人の視線が気まずいのか、レフラが視線を彷徨わせていた。
「でも、午前中なら、傷付けない嘘は良いのでしょ?」
もごもごとそう言って、ね? と窺うように見上げてくる。もともと、こんな戯れ程度な嘘なうえ、レフラに非がない状況なのだ。3人はレフラへ対して、何か言うつもりは全くない。
だが、それを抜きにしても、こんな風に尋ねられてしまったら。何かあったとしても、3人には強く言えなかっただろう。
「そうですね、エイプリルフールですからね」
ハハハと笑ったラクーシュに、すかさず肘鉄を食らわして。
「元はと言えば、俺達のせいですから、申し訳ございません」
横で痛みに呻くラクーシュを無視して、済まなさそうに詫びるリランに、レフラは引き攣った笑顔を返している。
「でも、本当にマズければしっかり止めますから、そんなに心配する必要はないですよ」
エルフィルが少し苦笑気味に言えば、「分かっては居るんですが……」とレフラが言葉を濁してしまった。
レフラの心配する殆どが、エルフィルにとっては、問題ないと判断することが多いのだ。今まで1度も2人のじゃれ合いを、エルフィルは止めたことが無かった。そのせいで、エルフィルの『本当にマズければ』という言葉の、程度がどのくらいか不安なのだろう。
分かりやすいレフラの反応に、エルフィルは喉奥で小さく笑ってしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
今日はエイプリルフールですね。
昨日の23時過ぎに突然書こうと思い立ったので、肝心な午前中には間に合いませんでした……。
思った以上に長くなってしまったので分割しています。
明日には終わるかと、きっと、たぶん……。
頑張ります(๑•̀ㅂ•́)و💦
「これは何ですか?」
「ウサ耳のカチューシャですよ。今日は午前中だけは、人を傷付けない嘘なら許される日なので、コレなんかはどうですか?」
「どう、とは?」
「耳だけ変化してしまった、とギガイ様へお見せするんです」
ニコニコとラクーシュが差し出してきた物を、レフラが受け取って掲げてみる。白いもこもこの毛で作られた、柔らかい感触の耳だった。
「またかお前は! 懲りないな! 」
ちょうど書庫から戻ってきたリランが、渡した物を認識して、いつものようにラクーシュの後頭部へ目がけて手を振るった。
パンッ! ガッ! バンッ───!!
その直後に振り返ったラクーシュが、すかさずリランの手を払い流し、掌底を返したようだった。それを手刀で払ったリランが、今度は反対の手で、再び打撃を入れてくる。
繰り出す拳のスピードの速さに、風を切る音が鳴っていた。
「いつもいつも、殴られっぱなしで居られっかよ!」
「少しぐらい衝撃を与えれば、お前の頭もまともに働くだろう!」
小隊長クラスの武官なのだ。こんな会話をしながらも、動きが止まる気配も、鈍るような様子もない。
「えっ!? ええ……ッ!? 待って、2人とも待って」
2人ともすかさずレフラから距離を取っているとはいえ、突然目の前で始まった殴り合いだ。レフラはそんな2人を、どうにか止めようと、焦っていた。
だけどレフラの声が聞こえないのか。2人の動きが止まる様子は全くない。慌てるレフラの前に、スッとエルフィルが立ち位置を変えてくる。
レフラは「そうだ!」っと、エルフィルの方を仰ぎ見た。
「エ、エルフィル様、止めて、止めて下さい!」
「あははは、大丈夫ですよ。ほんの手合わせ程度です。ただ念の為に、俺の後ろに居て下さいね」
だけどエルフィルは今日もまた、笑うだけで2人を止めてくれる様子はなかった。
そんな3人に焦っていたレフラが、突然「あっ!」と小さく声を上げた。どうしたのか、と3人がレフラへ意識を払ったタイミングに、さらにレフラの声が重なってくる。
「ギガイ様?」
3人が背中を向けたままだった扉の方を、レフラが振り返ったようだった。
(扉は開く気配はなかったはずだ)
そう思いながらも、レフラの様子も、発言も、流す訳にはいかなくて、3人はチラッと扉の方を振り返る。だけど案の定、扉は開いた様子はなく、部屋にあの主の気配はない。
鈴を用いた、ギガイの戻りの連絡も入っていないのだ。扉の向こうを探ってみても、当然ながらそこにも主の気配は全く無かった。
「レフラ様?」
いったいどうしたのか。3人がレフラの方へ向き直る。
「だって、ラクーシュ様もリラン様も一向に止めて下さらないうえに、エルフィル様も笑ってばっかりですから。ギガイ様のお名前を使いました……」
以前若い武官への仕返しに、ギガイの名前を使ったことが1度あった。でも今回は仕返しでもない状況だった。そんな嘘を吐いた手前、3人の視線が気まずいのか、レフラが視線を彷徨わせていた。
「でも、午前中なら、傷付けない嘘は良いのでしょ?」
もごもごとそう言って、ね? と窺うように見上げてくる。もともと、こんな戯れ程度な嘘なうえ、レフラに非がない状況なのだ。3人はレフラへ対して、何か言うつもりは全くない。
だが、それを抜きにしても、こんな風に尋ねられてしまったら。何かあったとしても、3人には強く言えなかっただろう。
「そうですね、エイプリルフールですからね」
ハハハと笑ったラクーシュに、すかさず肘鉄を食らわして。
「元はと言えば、俺達のせいですから、申し訳ございません」
横で痛みに呻くラクーシュを無視して、済まなさそうに詫びるリランに、レフラは引き攣った笑顔を返している。
「でも、本当にマズければしっかり止めますから、そんなに心配する必要はないですよ」
エルフィルが少し苦笑気味に言えば、「分かっては居るんですが……」とレフラが言葉を濁してしまった。
レフラの心配する殆どが、エルフィルにとっては、問題ないと判断することが多いのだ。今まで1度も2人のじゃれ合いを、エルフィルは止めたことが無かった。そのせいで、エルフィルの『本当にマズければ』という言葉の、程度がどのくらいか不安なのだろう。
分かりやすいレフラの反応に、エルフィルは喉奥で小さく笑ってしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
今日はエイプリルフールですね。
昨日の23時過ぎに突然書こうと思い立ったので、肝心な午前中には間に合いませんでした……。
思った以上に長くなってしまったので分割しています。
明日には終わるかと、きっと、たぶん……。
頑張ります(๑•̀ㅂ•́)و💦
応援ありがとうございます!
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