ハムケ~オジッ ハムケ イッソ

神山 備

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初日から残業? 1

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 翌日、会社から帰ると戸籍が届いていた。
 次の日、昼休みに最寄の役所に一緒に提出しようと約束して、珍しく一緒に家を出た。今日から夫婦になるんだもん、まぁ今日くらいは同伴出勤? しても良いかなって思ったから。だって、一昨日の一件であまり大きいとは言えないウチの会社全員に私たちの関係、知らせちゃったようなものだもんね。

「おはよう、八木君今日は早いね。あ、樹里ちゃんが一緒だからか。戸籍届いたの?」
会社に着くと、いつも一番乗りのお姉さんに開口一番そう言われた。
「昨日届きました。今日の昼休みに役所に行ってきます」
大和くんがそう答えて、私たちはそれぞれの持ち場についた。
 ところが…ウチの会社を、社長を私は甘く見ていた。
大和くんと私は業務開始早々社長室に呼ばれて、
「今すぐ入籍して来い」
と社長命令で2人揃って役所に行かされたのだった。

「公私混同を社長が率先してどうすんのよ!」
とぶつぶつぶーたれながら、私は足の速い大和くんに必死について歩いた。
「ま、それだけ心配してくれるってことだろ」
「解かってるよ!」
解かってるけど、恥ずかしいじゃん。私たちが社長室を出たら、一緒にフロアまで出てきて、
「ゆっくり行って、夫婦になったのを噛み締めてこいよ」
なんて大声で言うから余計に。
 ホントにここは会社なのだろうか。金儲けのできる学校のクラブ活動なんじゃないか(経済学部ならありそうじゃん)と一瞬思ったほどだ。
 ま、社長からしてこうだから、ウチの会社の社内成婚率は高いんだろうなぁと、妙な納得もしたけど。
 そんなこんなで私たちは、午前中に夫婦になり、私は公的には八木樹里になった。でも便宜上、仕事では山口樹里を通すつもり。子供の予定なんかないから、ずっと勤めるつもりだし。
 でも、お昼過ぎになって高階部長が血相変えて、
「わりぃ、山口、あのプレゼンだけどさ、かなり変更でたんだわ。今日中にコレに差し替えして欲しいんだけど」
と、この間からずっと打ち込んでいたプレゼン資料の変更を言ってきたのだ、私はそれを見て思わずため息が出た。変更なんてよくあることだけど、問題はその量で……半端じゃなかった。それ、ホントに今日中なの? 今日ぐらいは早く帰って、美味しいものでも作って2人で祝杯挙げたいと思ってたのに。
 こんな日に残業か……ホント、「すまじきは宮仕え」だわ。
私はため息を1つ落としてから、それでも一刻も早く上げちゃおうと思ってパソコンにかじりついた。

 それこそ千夏ちゃんが淹れてくれた3時のコーヒーも、ひったくるようにして飲んで差し替えたんだけど……
通常の就業時間では、半分をチョイ超えたとこで時間切れだった。
 残業決定……それなら本腰入れてかかるしかない。私はそれ用のコーヒーを淹れに給湯室に行くと、千夏ちゃんと大和くんの部署のやっぱり入社1年目の上島くん、更に小久保くんまでが帰る所だった。
 ペーの2人はともかく、小久保くん-入社7年目で私と同じ仕事をしているあんたが帰っちゃう訳! あのプレゼンにはあんたも関わってるでしょうが!!
そりゃ、この資料は最初から私の担当だけどさ……
「みんな、お疲れ」
それでも一応、彼らには労いの言葉をかけたわよ。一応、社会人の礼儀としてね。
「あれ、樹里は残業? あ、アレね……昼間部長テンパっってたもんなぁ」
「そう……今日中だって」
「それはそれは、まことにご愁傷様。じゃぁ、俺は用事あるんで、お先!」
そう言うと、小久保くんは満面の笑みを残して去って行った。おいこらっ小久保、今日ぐらい手伝いなさいよ!!
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