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初日から残業? 2
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ずーんと重い気持ちになってデスクに戻る。こんな精神状態じゃ、いっぱい誤植作りそう。今日中に…終るのかな。
そうやって、小一時間ぐらい集中して入力していただろうか……
「みんな、会議室に集合! 社長命令」
顔を上げると、いつの間かに会社に舞い戻ってきた小久保くんがいた。そんな彼の『鶴の一声』で残っていたうちの部署の面々がぞろぞろと一斉に会議室に移動する。
…って、入力にかまけてて気付かなかったけど、ウチの会社ってばいつも無闇に忙しいんだけどさ、何か今日は特に残業率高くない?あのプレゼンってよっぽど難航してるのかな。変更内容ってばいたって普通だったけど。
何の話だろ……
そう思いながら私は会議室に足を踏み入れた-そして私は、今日の残業率の高さの本当の理由を瞬時に理解した。
そこには机狭しと並べられたオードブルとビールの山、そして真ん中にはご丁寧に、
「Happy Wedding Yamato&Juri」と書かれた巨大なケーキまで置かれてあったからだ。
私はこの体育会系クラブ延長株式会社をホントにナメてかかっていた。たかが1社員(あ、2人とも社員だから2社員か)の入籍ごときで、こんな……こんなサプライズパーティー企画する!?
「お、気付いてなかった? 作戦成功ってか、嬉しいねぇ」
板倉さんがぽっかりと口を開けたままになっている私にそう言うと、奥でマイクのセッティング(この狭い会議室でマイクなんて必要ないってば!)をしている小久保くんと顔を見合わせてグッジョブポーズ。
続けて入ってきて同じように素っ頓狂な顔をしている大和くんと2人、この会議室の上座に押しやられた。
「お前ら、結婚式するつもりもないんだろ。そう思ったから、俺と姉貴とで企画した」
恐縮する私たち2人に、社長はそう言って笑った。
今日朝一から入籍しろと追い出されたのは、その間にこのパーティーの段取りをそれこそ全社一丸となって取り組んでいたということらしい。こういうことで一致団結できるトコがまさに『ウチの会社』らしいっちゃそうなんだけど。
そして、帰ってきた私に、高階部長が慌てた様子で本当なら来週半ばまでに仕上げれば良いプレゼン変更を、今日中だって言って持ち込む。そうすれば私はパソコンにかかりきりになり、余計な雑音もみんなが挙って会社に残っていることにも気付かなくなるっていう寸法。
一方、大和くんの方は、昼から外回りに行かされていた様だ。出掛けに大和くんは夏目さん(女性)に声をかけられた。
「ねぇ、八木君結婚指輪は?」
「あ、まだですよ。今度の休みの時にでも一緒に買いに行こうかなと思ってます」
「出たついでに買ってらっしゃいよ。今日が結婚記念日になるんでしょ。だったら、今晩渡した方がね。彼女泣いて喜ぶと思うよ。今日のクライアント、△△にあるんだっけ? あの駅前にジュエリーショップあったじゃない」
と夏目さんは極めてさりげなく、しかも誘導的に『結婚指輪』を買うことを入れ知恵する。
けじめとして、今日の方が良いかなと思ったという大和くんは、バカ正直に指輪を買って会社に戻ってきたらしい。
そして、それが見事にこのサプライズ結婚式に華を添えた。
「コレ……どこから出てるんですか?」
でも、ちょっと気になって恐る恐る私が聞くと、
「あら、会社からに決まってるでしょ」
と、ウチの会社の総務省、お姉さんが当然のことみたいに言う。
「こんなことに遣っていいんですか!」
大和くんがそれに対して噛み付くと、
「バカ言え、これが本来の福利厚生費の遣いかただぞ」
とニヤニヤしながら社長がそれにそう返した。
あーあ、バカばっか集まった……サイコーの会社だわ、ココ!!
私は涙でぐちゃぐちゃになりながらそう思った。
そうやって、小一時間ぐらい集中して入力していただろうか……
「みんな、会議室に集合! 社長命令」
顔を上げると、いつの間かに会社に舞い戻ってきた小久保くんがいた。そんな彼の『鶴の一声』で残っていたうちの部署の面々がぞろぞろと一斉に会議室に移動する。
…って、入力にかまけてて気付かなかったけど、ウチの会社ってばいつも無闇に忙しいんだけどさ、何か今日は特に残業率高くない?あのプレゼンってよっぽど難航してるのかな。変更内容ってばいたって普通だったけど。
何の話だろ……
そう思いながら私は会議室に足を踏み入れた-そして私は、今日の残業率の高さの本当の理由を瞬時に理解した。
そこには机狭しと並べられたオードブルとビールの山、そして真ん中にはご丁寧に、
「Happy Wedding Yamato&Juri」と書かれた巨大なケーキまで置かれてあったからだ。
私はこの体育会系クラブ延長株式会社をホントにナメてかかっていた。たかが1社員(あ、2人とも社員だから2社員か)の入籍ごときで、こんな……こんなサプライズパーティー企画する!?
「お、気付いてなかった? 作戦成功ってか、嬉しいねぇ」
板倉さんがぽっかりと口を開けたままになっている私にそう言うと、奥でマイクのセッティング(この狭い会議室でマイクなんて必要ないってば!)をしている小久保くんと顔を見合わせてグッジョブポーズ。
続けて入ってきて同じように素っ頓狂な顔をしている大和くんと2人、この会議室の上座に押しやられた。
「お前ら、結婚式するつもりもないんだろ。そう思ったから、俺と姉貴とで企画した」
恐縮する私たち2人に、社長はそう言って笑った。
今日朝一から入籍しろと追い出されたのは、その間にこのパーティーの段取りをそれこそ全社一丸となって取り組んでいたということらしい。こういうことで一致団結できるトコがまさに『ウチの会社』らしいっちゃそうなんだけど。
そして、帰ってきた私に、高階部長が慌てた様子で本当なら来週半ばまでに仕上げれば良いプレゼン変更を、今日中だって言って持ち込む。そうすれば私はパソコンにかかりきりになり、余計な雑音もみんなが挙って会社に残っていることにも気付かなくなるっていう寸法。
一方、大和くんの方は、昼から外回りに行かされていた様だ。出掛けに大和くんは夏目さん(女性)に声をかけられた。
「ねぇ、八木君結婚指輪は?」
「あ、まだですよ。今度の休みの時にでも一緒に買いに行こうかなと思ってます」
「出たついでに買ってらっしゃいよ。今日が結婚記念日になるんでしょ。だったら、今晩渡した方がね。彼女泣いて喜ぶと思うよ。今日のクライアント、△△にあるんだっけ? あの駅前にジュエリーショップあったじゃない」
と夏目さんは極めてさりげなく、しかも誘導的に『結婚指輪』を買うことを入れ知恵する。
けじめとして、今日の方が良いかなと思ったという大和くんは、バカ正直に指輪を買って会社に戻ってきたらしい。
そして、それが見事にこのサプライズ結婚式に華を添えた。
「コレ……どこから出てるんですか?」
でも、ちょっと気になって恐る恐る私が聞くと、
「あら、会社からに決まってるでしょ」
と、ウチの会社の総務省、お姉さんが当然のことみたいに言う。
「こんなことに遣っていいんですか!」
大和くんがそれに対して噛み付くと、
「バカ言え、これが本来の福利厚生費の遣いかただぞ」
とニヤニヤしながら社長がそれにそう返した。
あーあ、バカばっか集まった……サイコーの会社だわ、ココ!!
私は涙でぐちゃぐちゃになりながらそう思った。
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