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1年後――夏―― 1
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そんな風に降って湧いたような結婚式にうるうるした私だったけど、翌日からは当たり前に仕事する日々。家に帰ってからも、6年も一緒に住んでいるんだから、今更新婚気分が味わえる訳もなく…でもそれが幸せなのだと思った。
仕事や飲み会なんかでとんでもなく大和くんが遅くなっても、もう戻って来ないんじゃないだろうかと不安に駈られないことが。
大和くんがにやけた顔で他の女の人を見る時に、内心めちゃくちゃムカついているのに、それをスルーしないで、
「どこ見てんの?」
って睨んでしまえることが。そして、慌てふためく大和くんに余裕の笑みをかますことができることが。
たった1枚の紙切れのこと……なのにね。安心していられる。
別段変わったこともなく、結婚から一年余りが過ぎた。
その年はすごく暑い夏で、おまけにとんでもなく仕事が忙しかった。あまりの暑さと忙しさで、あの肉食恐竜の大和くんが、わりとあっさりとしたものしか受け付けなくなったほど。
―*-*-*-*-
「あっつ~、溶けそう」
「ほんと暑いね、でも、樹里ちゃんが暑がるのって珍しいわね」
私がそう言うと、野村さんがそう返した。
私は普段、そんなに暑がらないほうだ。真夏でもクーラーが効いている事務所でパソコンを操ってばかりの時は、大体長袖着てるくらいだし。
「なんか妙に汗かいてない?大丈夫?」
「ええ……」
ホントのこと言うと最近疲れやすくやたらに眠いし、胃の調子も悪い。
でも、結婚してから私はあまり薬を飲まなくなった。大和くんが結婚前に一旦別れようとした理由がある薬の後遺症だと聞いてから、私はどんな薬も気楽に飲めなくなったのだ。
たぶん、風邪薬や胃薬なんて飲んだって何もないにきまっているんだけど…ブレーキがかかってしまう。
そして、お昼休み。いつもならお弁当を作って持参するんだけど、今日はそれもかったるくって、たまにだから、冷たいお蕎麦でも食べようと外食することにしたのだ。
弁当なんかはなから持ってくる気のない若い女の子たちと一緒に、私は会社を出て炎天下の街に出た。
「うわっ」
むせ返る熱気に思わず声まで出る。あまりの暑さに、本当に溶けてしまいそうだ。
心なしか地面も歪んで見える。
……ってか、ホントに歪んでるよ、地面。
「山口さん(仕事では未だに旧姓で通している)どうかしました?」
「えっ、暑すぎて地面が歪んでる」
私は見たままを言ったつもりだった。
「地面が歪んでる? どっか凹んでました?」
でも、他の子にはそう見えていないらしい。1人の子が首を傾げてそう返した。
それに返事しようとした次の瞬間、私は目の前が真っ暗になっていた。そして私はそのままその歪んだ地面とオトモダチになっていたのだ。
「きゃぁ! 山口さん、しっかりして! チナ、119番!!」
その子が私を抱きかかえて、千夏ちゃんに救急車の手配を叫んでいる声が遠くのほうで聞こえる。その子は私を抱きかかえて叫んでいるのにだ。
私はそのまま救急車で病院に運ばれて……次に気がついた時には、ベッドに寝かされていた。
仕事や飲み会なんかでとんでもなく大和くんが遅くなっても、もう戻って来ないんじゃないだろうかと不安に駈られないことが。
大和くんがにやけた顔で他の女の人を見る時に、内心めちゃくちゃムカついているのに、それをスルーしないで、
「どこ見てんの?」
って睨んでしまえることが。そして、慌てふためく大和くんに余裕の笑みをかますことができることが。
たった1枚の紙切れのこと……なのにね。安心していられる。
別段変わったこともなく、結婚から一年余りが過ぎた。
その年はすごく暑い夏で、おまけにとんでもなく仕事が忙しかった。あまりの暑さと忙しさで、あの肉食恐竜の大和くんが、わりとあっさりとしたものしか受け付けなくなったほど。
―*-*-*-*-
「あっつ~、溶けそう」
「ほんと暑いね、でも、樹里ちゃんが暑がるのって珍しいわね」
私がそう言うと、野村さんがそう返した。
私は普段、そんなに暑がらないほうだ。真夏でもクーラーが効いている事務所でパソコンを操ってばかりの時は、大体長袖着てるくらいだし。
「なんか妙に汗かいてない?大丈夫?」
「ええ……」
ホントのこと言うと最近疲れやすくやたらに眠いし、胃の調子も悪い。
でも、結婚してから私はあまり薬を飲まなくなった。大和くんが結婚前に一旦別れようとした理由がある薬の後遺症だと聞いてから、私はどんな薬も気楽に飲めなくなったのだ。
たぶん、風邪薬や胃薬なんて飲んだって何もないにきまっているんだけど…ブレーキがかかってしまう。
そして、お昼休み。いつもならお弁当を作って持参するんだけど、今日はそれもかったるくって、たまにだから、冷たいお蕎麦でも食べようと外食することにしたのだ。
弁当なんかはなから持ってくる気のない若い女の子たちと一緒に、私は会社を出て炎天下の街に出た。
「うわっ」
むせ返る熱気に思わず声まで出る。あまりの暑さに、本当に溶けてしまいそうだ。
心なしか地面も歪んで見える。
……ってか、ホントに歪んでるよ、地面。
「山口さん(仕事では未だに旧姓で通している)どうかしました?」
「えっ、暑すぎて地面が歪んでる」
私は見たままを言ったつもりだった。
「地面が歪んでる? どっか凹んでました?」
でも、他の子にはそう見えていないらしい。1人の子が首を傾げてそう返した。
それに返事しようとした次の瞬間、私は目の前が真っ暗になっていた。そして私はそのままその歪んだ地面とオトモダチになっていたのだ。
「きゃぁ! 山口さん、しっかりして! チナ、119番!!」
その子が私を抱きかかえて、千夏ちゃんに救急車の手配を叫んでいる声が遠くのほうで聞こえる。その子は私を抱きかかえて叫んでいるのにだ。
私はそのまま救急車で病院に運ばれて……次に気がついた時には、ベッドに寝かされていた。
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