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結婚式狂想曲(国見智則視点)
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「許しませんったら、許しません!!」
(そんなこと俺に言われたってなぁ……)を、目の前で烈火の如く怒る少女-とは言え、成人しているので厳密に言えば少女とは言えないのだが、自分の子供たちとさして変わらないのでそう思ってしまう-に、国見智則は心の中で反論する。何故口に出さないかはカンタンだ。彼女-阪井琴子は、キー局局アナ、つまり言葉を生業にしている。智則が一言彼女の気に入らない事を言おうもんなら、それは3倍返し、いや5倍返しになって自分に戻ってくるだろう。それは別に痛くも痒くもないのだが、男としては地味に鬱陶しい。
「私は、変な虫から守ってちょうだいってあれほどお願いしたはずよ、国見さん。それが何でこうなるのよ。よりによってあんなオヤジ……」
「んなもん、当人同士の問題だろーが。もっと大人になろうぜ。
もっとも、オヤジとは聞き捨てならないな。そっちこそ分別の付かないガキんちょじゃないか」
そんな、琴子の言葉に、かみついたのは30代と思しき180cmはゆうにあるだろう、琴子と共に光一と志乃の結婚式の企画を申し出た男だ。
「国見さん、お久しぶりです」
「おお鷲津、今回はわざわざありがとうよ」
「成瀬さんのためなら、俺は地球の裏側からだってかけつけますよ」
そう笑って言う男に、琴子は下から見上げながら睨む。それを見ながら、
「こいつは鷲津優介」
智則はため息をつきつつ、琴子に優介を紹介する。
鷲津優介37歳。元はYUUKIの社員だった優介は7年前にイベント会社を立ち上げた。
優介が30歳で起業したとき、成瀬は得手の経理面でサポートしたのだ。おかげで無事仕事が軌道に乗ったと、優介は光一に並々ならぬ恩義を感じている。
「それで、こっちは……」
智則が琴子を紹介しようとすると、優介はヒラヒラと手を振り、
「知ってるよ、コットンだろ。BCGー銀河テレビの人気? お天気お姉さんだよな」
と何故か語尾を上げて、さわさわと琴子の頭を撫でた。
「売れてないって言いたいんですか? 私まだ入社一年目なんですから、有名なんかじゃないですよ。
ちょ、ちょっと何、人の頭撫でてるんですか!」
私、犬じゃないですからと、琴子は優介の手を振り払う。優介は、
「犬? 俺は、ベビーをあやしてるつもりだったが」
と言って、ニヤリと笑った。
「何ですって! 誰がベビーよ!! 私はもう立派に大人だわ」
それを聞いて琴子は真っ赤になって頬をひっぱたこうとするが、いかんせん158cmの琴子では身長が足りない。それでもとりあえずグーで優介のの胸元を殴った。しかし、この図体のデカい男には全く効いていないようだ。
「だいたい、成瀬さんの魅力が解んない奴なんか、ガキんちょで十分だ」
という優介に、
「あなたこそ、男に魅力だなんて、そっち系なの。まさか昔の恋人とか? で、振られて私にガン垂れてるの?」
琴子は負けじとそう返す。
「んな訳、ねぇだろ。じゃなきゃ、あんたのかわいいかわいいお友達と結婚なんかしない」
「ああそうね、ロリコンでしたものね」
「だーっ、ああ言えばこう言う、クソ女だな」
「あなたに言われたくないわ。その言葉そのままお返しします」
そしてついに2人は互いに背中を向けてしまった。結婚式は11月23日だぞ、お前らそれまでにちゃんと形に出来るのか?
智則はこれから先の茨の道を思って2人に気づかれぬようにこっそりため息を付いたのだった。
「もう、散々だったよ。ホントに予定通り結婚式までもってけるのかね……」
それを家に帰って、妻春香に言うと、春香は大笑いしながら、
「智ちゃんそれ、思いっきり子供のケンカじゃん。ほっときなさい、あんたが気を揉んでもバカ見るだけ。
大丈夫、ゆーすけ君も、琴子ちゃんもある意味プロなんだし、大好きな2人の幸せを壊すような真似は絶対にしないから」
と言って、智則に2人を突き放すように助言した。
2人きりにして本当に大丈夫かと内心不安に思いつつ、様子を見ることにした智則だったが……
「巨大卵焼きカットって、あり得ない!」
「別に、カットするのがケーキじゃなきゃならないっって法律なんかないんだろ。
成瀬さんと志乃ちゃんの馴れ初めが卵焼きだってんだから、その方が本人たちの思い出に残るだろーが」
光一と志乃が互いを意識するきっかけになったのが、弁当の卵焼きの味が同じだったからだと聞いて、ケーキカットならぬ卵焼きカットを提案する優介に琴子は猛反発。
「卵焼きなんかビジュアルがいまいちすぎるもの!」
「ビジュアルが思い出になるか!」
「何ですって!」
そしてまたケンカが始まってしまった。今回は卵焼きだが、手を変え品を変えて会えば必ずこうしてケンカになるのだ。どちらかに降りるように言っても負けず嫌いの2人だ。相手が降りるべきだと主張してどちらも譲らないことは目に見えている。
(俺、結婚式まで持つだろうか……胃も、髪の毛も……)
智則はハラハラしながらも、妻の助言に従って口出しせずに見守り続け……
前日までケンカし続けた2人は、当日、それがウソだったかのような連携を見せ、参列者が挙って、
「本当に良い結婚式だった」
と口を揃えて言うくらい、アットホームで暖かい式となった。
「ね、だから心配しなくて良いって言ったのよ」
と、帰りの電車の中でウインクしながら言う春香。だが、
「ああ、どうなるかと思ったがな。
これでやっと無罪放免だ」
と、しみじみ言う智則に、
「あら、それはどうかしらね」
と春香はそう言って不敵な笑みを浮かべた。
春香の言葉が現実となったのはその約半年後……
「ええーっ、鷲津と琴子ちゃんが結婚!!」
しかも、智則と春香に仲人を頼みたいと言うのだ。
(ああ、違うな)
思わず、智則はエイプリルフールかとカレンダーを見たほどだ。
「それにしたってお前等の縁結びの神は成瀬と志乃ちゃんだろ」
「それはそうなんですけど……」
「解ってるよ。出産直後の志乃ちゃんに頼む訳にいかないもんな」
志乃は今臨月。彼らの挙式当日には絶対に生まれているだろうが、列席はともかく、長時間拘束される仲人など、乳飲み子を抱えては難しい。
(ああ、なけなしのこいつともおさらばかな……)
仲人を引き受けた智則は、すっかり寂しくなってしまった自分の髪を思って深い深いため息を吐いたのだった。
(そんなこと俺に言われたってなぁ……)を、目の前で烈火の如く怒る少女-とは言え、成人しているので厳密に言えば少女とは言えないのだが、自分の子供たちとさして変わらないのでそう思ってしまう-に、国見智則は心の中で反論する。何故口に出さないかはカンタンだ。彼女-阪井琴子は、キー局局アナ、つまり言葉を生業にしている。智則が一言彼女の気に入らない事を言おうもんなら、それは3倍返し、いや5倍返しになって自分に戻ってくるだろう。それは別に痛くも痒くもないのだが、男としては地味に鬱陶しい。
「私は、変な虫から守ってちょうだいってあれほどお願いしたはずよ、国見さん。それが何でこうなるのよ。よりによってあんなオヤジ……」
「んなもん、当人同士の問題だろーが。もっと大人になろうぜ。
もっとも、オヤジとは聞き捨てならないな。そっちこそ分別の付かないガキんちょじゃないか」
そんな、琴子の言葉に、かみついたのは30代と思しき180cmはゆうにあるだろう、琴子と共に光一と志乃の結婚式の企画を申し出た男だ。
「国見さん、お久しぶりです」
「おお鷲津、今回はわざわざありがとうよ」
「成瀬さんのためなら、俺は地球の裏側からだってかけつけますよ」
そう笑って言う男に、琴子は下から見上げながら睨む。それを見ながら、
「こいつは鷲津優介」
智則はため息をつきつつ、琴子に優介を紹介する。
鷲津優介37歳。元はYUUKIの社員だった優介は7年前にイベント会社を立ち上げた。
優介が30歳で起業したとき、成瀬は得手の経理面でサポートしたのだ。おかげで無事仕事が軌道に乗ったと、優介は光一に並々ならぬ恩義を感じている。
「それで、こっちは……」
智則が琴子を紹介しようとすると、優介はヒラヒラと手を振り、
「知ってるよ、コットンだろ。BCGー銀河テレビの人気? お天気お姉さんだよな」
と何故か語尾を上げて、さわさわと琴子の頭を撫でた。
「売れてないって言いたいんですか? 私まだ入社一年目なんですから、有名なんかじゃないですよ。
ちょ、ちょっと何、人の頭撫でてるんですか!」
私、犬じゃないですからと、琴子は優介の手を振り払う。優介は、
「犬? 俺は、ベビーをあやしてるつもりだったが」
と言って、ニヤリと笑った。
「何ですって! 誰がベビーよ!! 私はもう立派に大人だわ」
それを聞いて琴子は真っ赤になって頬をひっぱたこうとするが、いかんせん158cmの琴子では身長が足りない。それでもとりあえずグーで優介のの胸元を殴った。しかし、この図体のデカい男には全く効いていないようだ。
「だいたい、成瀬さんの魅力が解んない奴なんか、ガキんちょで十分だ」
という優介に、
「あなたこそ、男に魅力だなんて、そっち系なの。まさか昔の恋人とか? で、振られて私にガン垂れてるの?」
琴子は負けじとそう返す。
「んな訳、ねぇだろ。じゃなきゃ、あんたのかわいいかわいいお友達と結婚なんかしない」
「ああそうね、ロリコンでしたものね」
「だーっ、ああ言えばこう言う、クソ女だな」
「あなたに言われたくないわ。その言葉そのままお返しします」
そしてついに2人は互いに背中を向けてしまった。結婚式は11月23日だぞ、お前らそれまでにちゃんと形に出来るのか?
智則はこれから先の茨の道を思って2人に気づかれぬようにこっそりため息を付いたのだった。
「もう、散々だったよ。ホントに予定通り結婚式までもってけるのかね……」
それを家に帰って、妻春香に言うと、春香は大笑いしながら、
「智ちゃんそれ、思いっきり子供のケンカじゃん。ほっときなさい、あんたが気を揉んでもバカ見るだけ。
大丈夫、ゆーすけ君も、琴子ちゃんもある意味プロなんだし、大好きな2人の幸せを壊すような真似は絶対にしないから」
と言って、智則に2人を突き放すように助言した。
2人きりにして本当に大丈夫かと内心不安に思いつつ、様子を見ることにした智則だったが……
「巨大卵焼きカットって、あり得ない!」
「別に、カットするのがケーキじゃなきゃならないっって法律なんかないんだろ。
成瀬さんと志乃ちゃんの馴れ初めが卵焼きだってんだから、その方が本人たちの思い出に残るだろーが」
光一と志乃が互いを意識するきっかけになったのが、弁当の卵焼きの味が同じだったからだと聞いて、ケーキカットならぬ卵焼きカットを提案する優介に琴子は猛反発。
「卵焼きなんかビジュアルがいまいちすぎるもの!」
「ビジュアルが思い出になるか!」
「何ですって!」
そしてまたケンカが始まってしまった。今回は卵焼きだが、手を変え品を変えて会えば必ずこうしてケンカになるのだ。どちらかに降りるように言っても負けず嫌いの2人だ。相手が降りるべきだと主張してどちらも譲らないことは目に見えている。
(俺、結婚式まで持つだろうか……胃も、髪の毛も……)
智則はハラハラしながらも、妻の助言に従って口出しせずに見守り続け……
前日までケンカし続けた2人は、当日、それがウソだったかのような連携を見せ、参列者が挙って、
「本当に良い結婚式だった」
と口を揃えて言うくらい、アットホームで暖かい式となった。
「ね、だから心配しなくて良いって言ったのよ」
と、帰りの電車の中でウインクしながら言う春香。だが、
「ああ、どうなるかと思ったがな。
これでやっと無罪放免だ」
と、しみじみ言う智則に、
「あら、それはどうかしらね」
と春香はそう言って不敵な笑みを浮かべた。
春香の言葉が現実となったのはその約半年後……
「ええーっ、鷲津と琴子ちゃんが結婚!!」
しかも、智則と春香に仲人を頼みたいと言うのだ。
(ああ、違うな)
思わず、智則はエイプリルフールかとカレンダーを見たほどだ。
「それにしたってお前等の縁結びの神は成瀬と志乃ちゃんだろ」
「それはそうなんですけど……」
「解ってるよ。出産直後の志乃ちゃんに頼む訳にいかないもんな」
志乃は今臨月。彼らの挙式当日には絶対に生まれているだろうが、列席はともかく、長時間拘束される仲人など、乳飲み子を抱えては難しい。
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