2 / 32
交際
しおりを挟む
(ヤバいわ、秀一郎さんってなんかヤバい。うわーっ、どうして断ろう)
秀一郎の見合いを終えた後、未来がどうやって断ろうかと思いめぐらしていたとき、祖父-上河原剛造からの着信を受ける。
「でかしたぞ。今、秀一郎君からぜひ結婚を前提としたお付き合いをしたいと言ってきた。
まぁ、未来なら断られんとは思っておったがな」
そういう剛造はまさに上機嫌を絵に描いた様子だ。
秀一郎は本気で未来を隠れ蓑にしようとしている。彼女はそう思うと、彼の無駄に整った顔思い出して、吐き気がしてきた。
だからといって、およそ50年越しの念願が叶った剛造の盛り上がりに水を注す勇気も気力もない。それに縦しんば未来が『彼には別に意中の女性がいる』と力説したところで、剛造は直接秀一郎から連絡を受けているのだ。未来の方がウソをついているようにしか聞こえない。
それにしても、そこまでして想いにフタをしなければならない相手とは一体誰なのだろう。未来の言葉に『それができるのなら、僕だってとっくにしている』
と言葉を荒げた位だから、その人は既に結婚しているか、あるいは亡くなっているかするのだろう。
そして、幾度かのデートを(とは言え、クラシック音楽や絵画の鑑賞など、未来には些かハードルの高いものが主だったが)重ね、両家の対面の日を迎えた。
「ごめんなさいね、ほのかも連れてくるつもりだったんだけど、どうしても用事があるってきかなくて」
「いえ、それは別に……ウチも同じですから」
頭を下げる夏海に、未来はそう答える。未来の妹明日香もまた、今日ここには来ていないのだ。因みにほのかというのは、秀一郎の双子の妹の名。
『あたしが結婚すんじゃないんだからさ、当日だけでもいいよね』
と言う明日香は今、受験まっただ中。センター試験を控えた追い込みの時期なので、無理強いはできなかった。すると、
「代わりと言っちゃなんだけど、私がきました。叔母の鷲津琴子です。
因みに、結婚式は私が仕切るので、後で要望聞かせてね」
妙子の隣に座った女性が、そう言って名刺を差し出す。そこには『コットンプランニング 鷲津 琴子』と書かれてあった。そして、その名前に意外にも食いついたのは、父雅彦。
「コットンって……もしかして銀河テレビの?」
「ええ。覚えてくださってるんですか? 嬉しい! 私、アナウンサーとしては2年くらいしか働いてないのに」
それも、ほとんどお天気だけだったと琴子は笑う。
琴子はイベント会社社長鷲津裕介と友人の結婚式をともにプランニングしたのがきっかけで結婚を機に引退、一児を出産してからそのイベント会社の共同経営者となった。現在はもう一人子供を儲け、二児の母である。
「あの頃、そのあなたのお天気コーナーを毎日見てから出勤してましたから、どこかでお見かけした顔だと思ってたんです」
「うわぁ、ありがとうございます」
しかし、予想外に広がった話に、
「琴子、今日はあなたのお席じゃないのよ」
と、妙子からすかさず苦言が入る。
「すいません。ちょっとしゃべりすぎちゃました。はーい、後は幸せなお二人にお返ししま~す」
それに対して琴子は、舌を出しつつ、かつてのアナウンサー口調でそう自分の話を〆め、後は結婚する二人の取材に専念した。
その中で、何か二人に言っておきたいことはないかと夏海に聞く琴子に、
「二人がが仲良くいってくれればそれで良いわ。
ただ、できれば孫は早く見たいわね」
と言う夏海。それを秀一郎はにこやかに聞いていたが、その瞳の奥が決して笑っていなかったのを未来は見逃さなかった。案の定二人きりになった途端、
「まったく……何もないって言いながら、一番ムリな要求をしてくれるよね」
と言って舌打ちしている。
「ま、とにかく結婚は決まったんだから、後は上手く考えるよ」
と言う秀一郎。一体何をどう上手くするというのだろう。
とまれ、結婚は本格的に進み出してしまった。周りの祝い言葉とは裏腹に、不安しか感じられぬ未来であった。
秀一郎の見合いを終えた後、未来がどうやって断ろうかと思いめぐらしていたとき、祖父-上河原剛造からの着信を受ける。
「でかしたぞ。今、秀一郎君からぜひ結婚を前提としたお付き合いをしたいと言ってきた。
まぁ、未来なら断られんとは思っておったがな」
そういう剛造はまさに上機嫌を絵に描いた様子だ。
秀一郎は本気で未来を隠れ蓑にしようとしている。彼女はそう思うと、彼の無駄に整った顔思い出して、吐き気がしてきた。
だからといって、およそ50年越しの念願が叶った剛造の盛り上がりに水を注す勇気も気力もない。それに縦しんば未来が『彼には別に意中の女性がいる』と力説したところで、剛造は直接秀一郎から連絡を受けているのだ。未来の方がウソをついているようにしか聞こえない。
それにしても、そこまでして想いにフタをしなければならない相手とは一体誰なのだろう。未来の言葉に『それができるのなら、僕だってとっくにしている』
と言葉を荒げた位だから、その人は既に結婚しているか、あるいは亡くなっているかするのだろう。
そして、幾度かのデートを(とは言え、クラシック音楽や絵画の鑑賞など、未来には些かハードルの高いものが主だったが)重ね、両家の対面の日を迎えた。
「ごめんなさいね、ほのかも連れてくるつもりだったんだけど、どうしても用事があるってきかなくて」
「いえ、それは別に……ウチも同じですから」
頭を下げる夏海に、未来はそう答える。未来の妹明日香もまた、今日ここには来ていないのだ。因みにほのかというのは、秀一郎の双子の妹の名。
『あたしが結婚すんじゃないんだからさ、当日だけでもいいよね』
と言う明日香は今、受験まっただ中。センター試験を控えた追い込みの時期なので、無理強いはできなかった。すると、
「代わりと言っちゃなんだけど、私がきました。叔母の鷲津琴子です。
因みに、結婚式は私が仕切るので、後で要望聞かせてね」
妙子の隣に座った女性が、そう言って名刺を差し出す。そこには『コットンプランニング 鷲津 琴子』と書かれてあった。そして、その名前に意外にも食いついたのは、父雅彦。
「コットンって……もしかして銀河テレビの?」
「ええ。覚えてくださってるんですか? 嬉しい! 私、アナウンサーとしては2年くらいしか働いてないのに」
それも、ほとんどお天気だけだったと琴子は笑う。
琴子はイベント会社社長鷲津裕介と友人の結婚式をともにプランニングしたのがきっかけで結婚を機に引退、一児を出産してからそのイベント会社の共同経営者となった。現在はもう一人子供を儲け、二児の母である。
「あの頃、そのあなたのお天気コーナーを毎日見てから出勤してましたから、どこかでお見かけした顔だと思ってたんです」
「うわぁ、ありがとうございます」
しかし、予想外に広がった話に、
「琴子、今日はあなたのお席じゃないのよ」
と、妙子からすかさず苦言が入る。
「すいません。ちょっとしゃべりすぎちゃました。はーい、後は幸せなお二人にお返ししま~す」
それに対して琴子は、舌を出しつつ、かつてのアナウンサー口調でそう自分の話を〆め、後は結婚する二人の取材に専念した。
その中で、何か二人に言っておきたいことはないかと夏海に聞く琴子に、
「二人がが仲良くいってくれればそれで良いわ。
ただ、できれば孫は早く見たいわね」
と言う夏海。それを秀一郎はにこやかに聞いていたが、その瞳の奥が決して笑っていなかったのを未来は見逃さなかった。案の定二人きりになった途端、
「まったく……何もないって言いながら、一番ムリな要求をしてくれるよね」
と言って舌打ちしている。
「ま、とにかく結婚は決まったんだから、後は上手く考えるよ」
と言う秀一郎。一体何をどう上手くするというのだろう。
とまれ、結婚は本格的に進み出してしまった。周りの祝い言葉とは裏腹に、不安しか感じられぬ未来であった。
0
あなたにおすすめの小説
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どんなあなたでも愛してる。
piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー
騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。
どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか?
※全四話+後日談一話。
※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。
※なろうにも投稿しています。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる