Cascade~行為の代償~

神山 備

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交際

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(ヤバいわ、秀一郎さんってなんかヤバい。うわーっ、どうして断ろう)
 秀一郎の見合いを終えた後、未来がどうやって断ろうかと思いめぐらしていたとき、祖父-上河原剛造かみがわらごうぞうからの着信を受ける。
「でかしたぞ。今、秀一郎君からぜひ結婚を前提としたお付き合いをしたいと言ってきた。
まぁ、未来なら断られんとは思っておったがな」
そういう剛造はまさに上機嫌を絵に描いた様子だ。
 秀一郎は本気で未来を隠れ蓑にしようとしている。彼女はそう思うと、彼の無駄に整った顔思い出して、吐き気がしてきた。
 だからといって、およそ50年越しの念願が叶った剛造の盛り上がりに水を注す勇気も気力もない。それに縦しんば未来が『彼には別に意中の女性がいる』と力説したところで、剛造は直接秀一郎から連絡を受けているのだ。未来の方がウソをついているようにしか聞こえない。
 それにしても、そこまでして想いにフタをしなければならない相手とは一体誰なのだろう。未来の言葉に『それができるのなら、僕だってとっくにしている』
と言葉を荒げた位だから、その人は既に結婚しているか、あるいは亡くなっているかするのだろう。
 そして、幾度かのデートを(とは言え、クラシック音楽や絵画の鑑賞など、未来には些かハードルの高いものが主だったが)重ね、両家の対面の日を迎えた。

「ごめんなさいね、ほのかも連れてくるつもりだったんだけど、どうしても用事があるってきかなくて」
「いえ、それは別に……ウチも同じですから」
頭を下げる夏海に、未来はそう答える。未来の妹明日香もまた、今日ここには来ていないのだ。因みにほのかというのは、秀一郎の双子の妹の名。
『あたしが結婚すんじゃないんだからさ、当日だけでもいいよね』
と言う明日香は今、受験まっただ中。センター試験を控えた追い込みの時期なので、無理強いはできなかった。すると、
「代わりと言っちゃなんだけど、私がきました。叔母の鷲津琴子わしずそうこです。
因みに、結婚式は私が仕切るので、後で要望聞かせてね」
妙子の隣に座った女性が、そう言って名刺を差し出す。そこには『コットンプランニング 鷲津 琴子わしずそうこ』と書かれてあった。そして、その名前に意外にも食いついたのは、父雅彦。
「コットンって……もしかして銀河テレビの?」
「ええ。覚えてくださってるんですか? 嬉しい! 私、アナウンサーとしては2年くらいしか働いてないのに」
それも、ほとんどお天気だけだったと琴子は笑う。
 琴子はイベント会社社長鷲津裕介と友人の結婚式をともにプランニングしたのがきっかけで結婚を機に引退、一児を出産してからそのイベント会社の共同経営者となった。現在はもう一人子供を儲け、二児の母である。
「あの頃、そのあなたのお天気コーナーを毎日見てから出勤してましたから、どこかでお見かけした顔だと思ってたんです」
「うわぁ、ありがとうございます」
しかし、予想外に広がった話に、
「琴子、今日はあなたのお席じゃないのよ」
と、妙子からすかさず苦言が入る。
「すいません。ちょっとしゃべりすぎちゃました。はーい、後は幸せなお二人にお返ししま~す」
それに対して琴子は、舌を出しつつ、かつてのアナウンサー口調でそう自分の話を〆め、後は結婚する二人の取材に専念した。

 その中で、何か二人に言っておきたいことはないかと夏海に聞く琴子に、
「二人がが仲良くいってくれればそれで良いわ。
ただ、できれば孫は早く見たいわね」
と言う夏海。それを秀一郎はにこやかに聞いていたが、その瞳の奥が決して笑っていなかったのを未来は見逃さなかった。案の定二人きりになった途端、
「まったく……何もないって言いながら、一番ムリな要求をしてくれるよね」
と言って舌打ちしている。
「ま、とにかく結婚は決まったんだから、後は上手く考えるよ」
と言う秀一郎。一体何をどう上手くするというのだろう。
 とまれ、結婚は本格的に進み出してしまった。周りの祝い言葉とは裏腹に、不安しか感じられぬ未来であった。
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