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地獄への入り口
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ほのかはそれ以上未来に話しかけることはなく、結婚式は滞りなく終わった。披露宴も親族席は一番の下座だ。芸能人にも匹敵する位の招待客のあるこの披露宴会場では、意図してほのかが高砂まで来なければ顔すら見えない。そのまま恙なく披露宴も終えると、二次会へ。
驚いたことにそこにほのかはいなかった。明日の朝早くヨーロッパに発つので、もう帰ったという。ヨーロッパ行きは嘘ではないだろうが、たぶんそこには兄と自分のことを祝いたくないというのもあるのだろうと未来は思った。実際の所、未来は彼女から『おめでとう』の一言すら言われていない。
それでも未来は、それは双子特有の互いを同化しあっているものの延長だと思っていた。ずっと一緒にいたために、互いがいないという事実を認められないでいるだけなのだと。そしてこのヨーロッパ旅行は、そのことに踏ん切りを付けるための傷心旅行なのだと。しかし、未来のその予想は最悪の形で裏切られる。
翌朝、いやもう昼にもなろうかという時間、未来たちが空港に行くと、そこに早朝の飛行機に乗っているはずのほのかがまだいたのである。しかも、彼女は未来たちと同じ飛行機に乗ってくるではないか。未来たちが向かう予定なのは、普段の喧噪から離れてのんびりしたいと秀一郎が希望した南の島、ヨーロッパとは緯度も経度も全く違う所だ。
「ふふふ、どうしてって顔ね。言ったでしょ、秀は私のものだって」
ほのかは引き攣る未来の顔色を見ながら、そう言って広角を上げる。
「たとえお飾りだって、秀と二人きりで一週間も過ごすなんて許せないわ」
だからと言って、兄夫婦の新婚旅行に付いて来るというのはどうだろう。挙式自体が海外で行われたのなら、そのまま一緒に家族で観光ということもあろうが、普通に日本で挙式した新婚旅行に妹同伴などあり得ない。大体……
「ヨーロッパに行くはずだったんですよね。写真とかお土産とかどうするつもりなんですか」
ヨーロッパなど、普通なら滅多に行けるところではないのだ。仕事で行くのでもないのに、そこから全くの空手で帰るなんてあり得ない。するとほのかは、少し驚いた表情をして、
「心配してくれるの? おめでたいわね。私が何も準備せずにここに来る訳がないじゃない。写真はちゃんと同い年の女の子を雇って撮らせているわ。ただ、風景だけじゃ怪しまれるから、何枚かは私を合成で入れるつもりだけど。
それにね、お土産の手配も済ませてあるわ。
実は私の方が旅行期間は2日長いの。その2日間でヨーロッパ各地の空港を効率的に回るわ。それまでに空港に届けられるようにもう、手配はできているのよ」
と用意周到に練られた新婚旅行同伴のシナリオを得々と語った。そして、
「ああ、それから税関を出たらあなたはほのかね。私たちとは別の部屋を取ってるからそっちに行ってよね」
とさらっと自分と入れ替わるように言う彼女に未来は目を瞠った。
確かに税関を抜けてしまえばパスポートはあまり必要ではない。特に、国内利用もあるホテルなどは、チェックインにパスポートは必要ないが、堂々と部屋を交換するという発想はどこから出てくるのだろう。ほのかの驚きの発言に心かき乱されてしまった未来は、ほのかの、
「心配しないで、あなたの部屋だけ特別にグレードを落としたりしてないから。私もそこまで意地悪じゃないもの。
お互い、南の島を満喫しましょう」
と言った後、手を振る。その際少し離れてから、
「ちゃんとあなたも退屈しないようにしてあげてるからね」
と薄笑いしながら付け加えていたことを未来は聞き逃していた。
驚いたことにそこにほのかはいなかった。明日の朝早くヨーロッパに発つので、もう帰ったという。ヨーロッパ行きは嘘ではないだろうが、たぶんそこには兄と自分のことを祝いたくないというのもあるのだろうと未来は思った。実際の所、未来は彼女から『おめでとう』の一言すら言われていない。
それでも未来は、それは双子特有の互いを同化しあっているものの延長だと思っていた。ずっと一緒にいたために、互いがいないという事実を認められないでいるだけなのだと。そしてこのヨーロッパ旅行は、そのことに踏ん切りを付けるための傷心旅行なのだと。しかし、未来のその予想は最悪の形で裏切られる。
翌朝、いやもう昼にもなろうかという時間、未来たちが空港に行くと、そこに早朝の飛行機に乗っているはずのほのかがまだいたのである。しかも、彼女は未来たちと同じ飛行機に乗ってくるではないか。未来たちが向かう予定なのは、普段の喧噪から離れてのんびりしたいと秀一郎が希望した南の島、ヨーロッパとは緯度も経度も全く違う所だ。
「ふふふ、どうしてって顔ね。言ったでしょ、秀は私のものだって」
ほのかは引き攣る未来の顔色を見ながら、そう言って広角を上げる。
「たとえお飾りだって、秀と二人きりで一週間も過ごすなんて許せないわ」
だからと言って、兄夫婦の新婚旅行に付いて来るというのはどうだろう。挙式自体が海外で行われたのなら、そのまま一緒に家族で観光ということもあろうが、普通に日本で挙式した新婚旅行に妹同伴などあり得ない。大体……
「ヨーロッパに行くはずだったんですよね。写真とかお土産とかどうするつもりなんですか」
ヨーロッパなど、普通なら滅多に行けるところではないのだ。仕事で行くのでもないのに、そこから全くの空手で帰るなんてあり得ない。するとほのかは、少し驚いた表情をして、
「心配してくれるの? おめでたいわね。私が何も準備せずにここに来る訳がないじゃない。写真はちゃんと同い年の女の子を雇って撮らせているわ。ただ、風景だけじゃ怪しまれるから、何枚かは私を合成で入れるつもりだけど。
それにね、お土産の手配も済ませてあるわ。
実は私の方が旅行期間は2日長いの。その2日間でヨーロッパ各地の空港を効率的に回るわ。それまでに空港に届けられるようにもう、手配はできているのよ」
と用意周到に練られた新婚旅行同伴のシナリオを得々と語った。そして、
「ああ、それから税関を出たらあなたはほのかね。私たちとは別の部屋を取ってるからそっちに行ってよね」
とさらっと自分と入れ替わるように言う彼女に未来は目を瞠った。
確かに税関を抜けてしまえばパスポートはあまり必要ではない。特に、国内利用もあるホテルなどは、チェックインにパスポートは必要ないが、堂々と部屋を交換するという発想はどこから出てくるのだろう。ほのかの驚きの発言に心かき乱されてしまった未来は、ほのかの、
「心配しないで、あなたの部屋だけ特別にグレードを落としたりしてないから。私もそこまで意地悪じゃないもの。
お互い、南の島を満喫しましょう」
と言った後、手を振る。その際少し離れてから、
「ちゃんとあなたも退屈しないようにしてあげてるからね」
と薄笑いしながら付け加えていたことを未来は聞き逃していた。
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