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実は国際級の犯罪者?
「ありがとうございました!!」
最初に応対してくれた人はもちろん、和光さん、中村さん、果ては呉服部門の人まで深々とお辞儀する中、マイケルさんの車は駐車場を滑るように走り出した。そして、そこを出てしばらく一般道を走った後、はぁーっと大きく息を吐いた。そして、
「素敵だ。本当によく似合っている」
と目を細めながら言ってから、ぷっと吹き出した。それ見て、私は、
「ウソつき」
と言ってマイケルさんを睨んだ。
どうせ本当は全然似合ってないって思ってるんでしょ。解ってますよ、チビ(それでも同世代の中では、そんなに低くないのよ)で童顔の私には、こんな大人のパンツスーツなんて似合いませんよーだ。するとマイケルさんは慌てて、
「ウソじゃないさ。もちろん、今まで着てた着物も本当によく似合っていたけど、何て言うのかな……落ち着きすぎてるって言うのかな」
と取り繕う。でも、それって暗に私が童顔だってことを肯定しただけ。フォローに全然なってません! 私の表情が硬いまま返事もしないので、マイケルさんは、
「ごめんごめん、笑ったちゃったのは更紗ちゃんのせいじゃないから。僕、実はあそこ苦手なんだよね、ほんとデパートって疲れる。でも、女性用の服を売ってるとこなんて他には知らないしさ」
と言い訳を始める。
「苦手なら行かなきゃよかったじゃないですか。婦人服を売ってるとこなんて、デパートじゃなくても、それこそ上野にだって、浅草にだって、巣鴨にだってありますよ」
それにデパートでだって、あんな外商みたいなとこじゃなきゃ、もっと買いやすいですよ。でも、マイケルさんは、私の台詞の若干の棘にも全く気づかず、
「そりゃあるだろうけど、僕、女性の服なんて買ったことないもん
でも、更紗ちゃんってすごいよね。あの着物、収納用の紙だけもらって、たったと自分で畳んじゃうし」
と、暢気に私のヨイショを始める。
「畳紙(たとうがみ)です。畳む紙って書いて畳紙」
マイケルさんみたく、半分イギリスの血は入ってませんからね。100% ネイティブ日本人だし、呉服屋の孫娘をなめんなよ、小学生の時の浴衣から畳み方はママからしごかれてるんだから。
『きちんと畳んでおかないと、着物の価値が下がる』
って、そりゃもう煩いのよ。マイケルさんは、それを聞くと、
「へぇ、畳紙っていうの。畳う紙、で畳紙。たとうしとは言わない。あ、そうか、『し』って音読みだから……
あ、じゃぁ、こんな展開なんかも面白いよね」
と、ぶつぶつと訳の分からないことを言い出し、
「ねぇ、更紗ちゃんこれからカラオケ行かない? ネッカフェのペアシートじゃ、更紗ちゃんはやることないだろうし、変にパソ使うと足つくかもしれないもんね」
と私をカラオケに誘った。そう言えば、マイケルさんは何かから逃げてたんだっけ。
でも、ネッカフェのパソで足がつくって何。実は国際級の犯罪者か。あ、だからデパートで普通に買い物できなかった? いやいや、国際級の犯罪者は外商のコネとか持ってないでしょ。
私がそれに返事しないでいると、しばらくしてマイケルさんはある有名なカラオケボックスのチェーン店に車を停めてダッシュボードを開けると、
「更紗ちゃん、これ持っててくれる?」
と携帯ゲーム機のようなもの(だけど、ケースがそれっぽくなかった)を取り出して私の膝に乗せた。そして、もうそれがお決まり事のように私をお姫様だっこすると、そのカラオケボックスの中に入っていった。
最初に応対してくれた人はもちろん、和光さん、中村さん、果ては呉服部門の人まで深々とお辞儀する中、マイケルさんの車は駐車場を滑るように走り出した。そして、そこを出てしばらく一般道を走った後、はぁーっと大きく息を吐いた。そして、
「素敵だ。本当によく似合っている」
と目を細めながら言ってから、ぷっと吹き出した。それ見て、私は、
「ウソつき」
と言ってマイケルさんを睨んだ。
どうせ本当は全然似合ってないって思ってるんでしょ。解ってますよ、チビ(それでも同世代の中では、そんなに低くないのよ)で童顔の私には、こんな大人のパンツスーツなんて似合いませんよーだ。するとマイケルさんは慌てて、
「ウソじゃないさ。もちろん、今まで着てた着物も本当によく似合っていたけど、何て言うのかな……落ち着きすぎてるって言うのかな」
と取り繕う。でも、それって暗に私が童顔だってことを肯定しただけ。フォローに全然なってません! 私の表情が硬いまま返事もしないので、マイケルさんは、
「ごめんごめん、笑ったちゃったのは更紗ちゃんのせいじゃないから。僕、実はあそこ苦手なんだよね、ほんとデパートって疲れる。でも、女性用の服を売ってるとこなんて他には知らないしさ」
と言い訳を始める。
「苦手なら行かなきゃよかったじゃないですか。婦人服を売ってるとこなんて、デパートじゃなくても、それこそ上野にだって、浅草にだって、巣鴨にだってありますよ」
それにデパートでだって、あんな外商みたいなとこじゃなきゃ、もっと買いやすいですよ。でも、マイケルさんは、私の台詞の若干の棘にも全く気づかず、
「そりゃあるだろうけど、僕、女性の服なんて買ったことないもん
でも、更紗ちゃんってすごいよね。あの着物、収納用の紙だけもらって、たったと自分で畳んじゃうし」
と、暢気に私のヨイショを始める。
「畳紙(たとうがみ)です。畳む紙って書いて畳紙」
マイケルさんみたく、半分イギリスの血は入ってませんからね。100% ネイティブ日本人だし、呉服屋の孫娘をなめんなよ、小学生の時の浴衣から畳み方はママからしごかれてるんだから。
『きちんと畳んでおかないと、着物の価値が下がる』
って、そりゃもう煩いのよ。マイケルさんは、それを聞くと、
「へぇ、畳紙っていうの。畳う紙、で畳紙。たとうしとは言わない。あ、そうか、『し』って音読みだから……
あ、じゃぁ、こんな展開なんかも面白いよね」
と、ぶつぶつと訳の分からないことを言い出し、
「ねぇ、更紗ちゃんこれからカラオケ行かない? ネッカフェのペアシートじゃ、更紗ちゃんはやることないだろうし、変にパソ使うと足つくかもしれないもんね」
と私をカラオケに誘った。そう言えば、マイケルさんは何かから逃げてたんだっけ。
でも、ネッカフェのパソで足がつくって何。実は国際級の犯罪者か。あ、だからデパートで普通に買い物できなかった? いやいや、国際級の犯罪者は外商のコネとか持ってないでしょ。
私がそれに返事しないでいると、しばらくしてマイケルさんはある有名なカラオケボックスのチェーン店に車を停めてダッシュボードを開けると、
「更紗ちゃん、これ持っててくれる?」
と携帯ゲーム機のようなもの(だけど、ケースがそれっぽくなかった)を取り出して私の膝に乗せた。そして、もうそれがお決まり事のように私をお姫様だっこすると、そのカラオケボックスの中に入っていった。
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