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マイケルさんの生い立ち
危篤状態って、マイケルさんが死んじゃうかもしれないの? 私はキュッと胸が締め付けられたようになって、体から力が抜ける。ああ、立ってなくて良かった。
「すいません、少しお話をさせて頂くだけのつもりできましたが、月島さんをこのままお連れしてもよろしいでしょうか。もしかしたらしばらくかかるかもしれないですが」
幸太郎さんがそう言って社長に頭を下げる。でも、しばらくかかるって……そうよね、症状が落ち着くまでは時間がかかるはずだわ。決して幸太郎さんがお葬式まで想定しているわけじゃないよね。
「ああ、ウチの方は構いません」
それに対して社長はそう即答した。
「で、でもそれじゃミュートスの納期が」
「ミュートスのは月島がメイン張ってるだけであって、お前一人でやってる訳じゃない」
そりゃそうだけど……
「あ、あの、差し出がましいようですが、ミュートスというと、ミュートス工業のことですか?」
それを聞いた幸太郎さんが社長にそう聞く。
「ええ、ミュートス工業ですが、それが何か」
それに対して、社長がうなづきながらそう言うと、
「それでしたら、あちらの専務は私の舎弟(ゴホン)……いや、旧知の仲ですので、少しくらいなら納期の融通はつけさせます、もといお願いできます」
幸太郎さんは、そう言って、ミュートスに口添えする(というにはちょっと相応しくない単語が若干混じっていたような気もするけど)とまで言ってくれた。それを聞いた社長は、
「いや、そこまでお気遣い頂かなくても」
と、幸太郎さんに言った後、私に向かって、
「月島、行って来い。行かなければ、持ち直してもそうじゃなくてもきっと後悔するぞ。
それにな、上の空での仕事は事故の元だ。ウチみたいな小さな会社は、ムダな金も人も置いとける余裕はないんだからな」
と言った。確かにそうかもしれない。今の私の精神状態ではきっと今日は仕事にならないだろう。行って、その目でマイケルさんの無事を確認しなきゃ。
「は、はい……行ってきます」
私はそう言って、深々と頭を下げる幸太郎さんに続いて会社を出た。
駐車場に着くと、幸太郎さんは黒のボックスタイプの車の助手席のドアを開けて、
「その足では乗りにくいかもしれませんが、後ろでもやはり同じだと思うので」
と言った。そう言われて後ろの座席を見ると、運転席の後ろにはチャイルドシートが装着されている。小さな布のおもちゃも置かれていた。幸太郎さんは私を支えて車に乗せると、自分も乗り込んで走り出した。
途端に、カーオーディオから童謡が流れる。
「奏のCDが入れっぱなしだった」
幸太郎さんは慌ててボリュームをゼロにした。
「別に良いですよ」
「そうですか?」
「気分が和みます」
私がそう言うと、幸太郎さんはまたボリュームをさっきより少し落としたくらいにまで戻した。
「親父はね、小さい頃いじめられっこだったんですよ」
それから幸太郎さんは、ぽつぽつとマイケルさんのことを話し始めた。
「喘息持ちだった親父は小さくてひょろっひょろで、そばかすだらけね、目だけが光ってるような子供だったんですよ。
『お前の顔は日本人離れしてるんじゃなくて、人間離れしている』
よくそう言われていたそうです。
気弱な親父は、3つ年上の姉、嫁の母親の絵美奈と、後に嫁の父親になる幼なじみの紀文(のりふみ)以外とは口も利けないようなそんな子だったそうです。
そんな親父は現実ではない世界、本やアニメなどに逃げ場を求めました」
マイケルさんがいじめられっこだったなんて信じられないな。でも、昔はハーフということだけでいじめられることもあったみたいだし。ただ、本やアニメが好きなことは別に悪いことじゃないんじゃない? 逃げるって、何かヤな言い方だな。そう思ったけど、私は口を差し挟まずに幸太郎さんの話の続きを聞いた。
「思春期を迎えてみるみるその容姿が整っても、親父の心は小さないじめられっこのままだったんです。
ちょうどそのころ、タイミング良くというのか悪くというのか、祖父の事業が成功し、櫟原は飛躍的な成長を遂げました。甘いマスクと、大会社の御曹司というステータス。
幼い頃とは打って変わってモテるようになった事に一番ついて行けなかったのは、当の親父自身でした。
大体、そういうのは本当に親父の外見だとか地位だとかに惹かれている者が大半でしたから、親父も適当にあしらっていたのですが、一人だけ、華子さんという女性だけは違っていました。
ちょうど生みの母を失ったばかりの親父の心をしっかり支えてくれる優しい女性で、親父は真剣に結婚を考えていたようです。
しかし、妻の死をきっかけに一層仕事人間と化してしまった祖父は次々に事業を拡げ、二人は会うこともままならぬようになっていきました」
やっぱり、そんな人いたんだ。そうよね、外見だけを見る人ばかりじゃないもの。そうは思っても、私は胸の奥の方がちょっぴり痛かった。
「そして、ある日突然、華子さんは別れを切り出しました。
『もう待つだけの日々はいやだ。自分だけを見てくれる人の所にいく』
と。もちろん、親父だって止めました。
『もう少し待ってほしい。今の仕事が片づいたら父親に話すから』
と。でも、華子さんから返ってきたのは、
『あんたその年で「ビューティー戦士ムーンレディ」だって? キモいよ。あんたがお金持ちだと思って私、今まで何とか合わせてたけど、もう限界。オタクのお守りなんてもうコリゴリだわ』
という、今までの優しい彼女からは考えられない手のひらを返したような言葉でした」
「ひどいっ、その人マイケルさんのこと騙してたの!」
あきれた、お金目当てだなんて最低っ!
「その言葉に傷ついた親父は華子さんと別れ、祖父と共に仕事三昧の日々を送るようになったのです。
実はその頃、さる代議士のお嬢さんが親父を気に入り、華子さんに身を引くように強要していたこと。華子さんもその方が親父のためになると自分から身を引いたことが判るのはずっと後の話です。
結局、親父はその代議士の娘との縁談もゲイだと偽のカミングアウトをして自分の殻に閉じこもってしまいますが」
……なんて、寂しい話なのかしら。それじゃぁ、結婚もできないよね。ん? で、でもちょっと待って? その話って……
「映画化された『コーラルブルー』じゃないですか」
確かに原作はマイケルさんだけど、それ小説じゃないですか。
「ええ、親父(主人公の圭のように)は死んでないし、本当はゲイではなく、自分のオタク趣味を誇張して相手を引かせて破談に持ち込んだり、代議士ではなく、銀行の頭取のお孫さんだったり。人物が特定されないように巧く脚色されてますが、これ親父の実話から生まれた作品です。親父は華子さんに謝罪の意味も込めて、あの時彼女がどんな気持ちでいたのかを、彼女の気持ちになりきって書いたものなんですよ」
「華子さん、文句言ってこなかったですか」
自分がネタにされて。
「『ありがとうと』言ってくれたそうですよ。今更だけど、相手にバレないかと心配もしてくれたそうです」
ホントに優しいいい人だったのね。
「それで元の鞘には収まらなかったんですか」
「事の真相を聞いたのが、華子さんの(もちろん別の男性との)結婚式ですからね。親父が『コーラルブルー』を発売したのがその18年後です」
そ、それじゃムリだね。
「その……それじゃ華子さんはともかく、頭取さんがなんか言ってこないんですか?」
「あれから25年以上経つんです。頭取はもうとうに引退されておられるし、当のお嬢さんも別の方と結婚して久しいですし、自分だと特定される要素がなければ敢えて『藪から蛇』を突っつき出したりしませんよ」
そんなものかしら。あれは自分のことなのよなんて、ミーハーにいえる種のエピソードじゃないけどね。
「着きましたよ」
そうして、マイケルさんの昔話をしている間に、私たちはマイケルさんが運ばれたという病院に着いた。無事でいてほしいな。私は玄関の前でゴクリと唾を飲み込んだ。私の表情をまじまじと見た幸太郎さんは、
「ああ、お連れして良かった。
すいません、怒らないでくださいね。
シャイで不器用な親父がああまでしてきっかけをつかもうとしたんです。息子としては是が非でも今度は成就してやりたいと思うじゃないですか。
過去のことは気になるかもしれませんが、生理的にいやじゃなければ、改めて月島さん、親父をお願いします」
と、さわやかな笑顔で意味不明なことを言って、病院の中に入っていったので、私は首を傾げながら後に続いた。
「すいません、少しお話をさせて頂くだけのつもりできましたが、月島さんをこのままお連れしてもよろしいでしょうか。もしかしたらしばらくかかるかもしれないですが」
幸太郎さんがそう言って社長に頭を下げる。でも、しばらくかかるって……そうよね、症状が落ち着くまでは時間がかかるはずだわ。決して幸太郎さんがお葬式まで想定しているわけじゃないよね。
「ああ、ウチの方は構いません」
それに対して社長はそう即答した。
「で、でもそれじゃミュートスの納期が」
「ミュートスのは月島がメイン張ってるだけであって、お前一人でやってる訳じゃない」
そりゃそうだけど……
「あ、あの、差し出がましいようですが、ミュートスというと、ミュートス工業のことですか?」
それを聞いた幸太郎さんが社長にそう聞く。
「ええ、ミュートス工業ですが、それが何か」
それに対して、社長がうなづきながらそう言うと、
「それでしたら、あちらの専務は私の舎弟(ゴホン)……いや、旧知の仲ですので、少しくらいなら納期の融通はつけさせます、もといお願いできます」
幸太郎さんは、そう言って、ミュートスに口添えする(というにはちょっと相応しくない単語が若干混じっていたような気もするけど)とまで言ってくれた。それを聞いた社長は、
「いや、そこまでお気遣い頂かなくても」
と、幸太郎さんに言った後、私に向かって、
「月島、行って来い。行かなければ、持ち直してもそうじゃなくてもきっと後悔するぞ。
それにな、上の空での仕事は事故の元だ。ウチみたいな小さな会社は、ムダな金も人も置いとける余裕はないんだからな」
と言った。確かにそうかもしれない。今の私の精神状態ではきっと今日は仕事にならないだろう。行って、その目でマイケルさんの無事を確認しなきゃ。
「は、はい……行ってきます」
私はそう言って、深々と頭を下げる幸太郎さんに続いて会社を出た。
駐車場に着くと、幸太郎さんは黒のボックスタイプの車の助手席のドアを開けて、
「その足では乗りにくいかもしれませんが、後ろでもやはり同じだと思うので」
と言った。そう言われて後ろの座席を見ると、運転席の後ろにはチャイルドシートが装着されている。小さな布のおもちゃも置かれていた。幸太郎さんは私を支えて車に乗せると、自分も乗り込んで走り出した。
途端に、カーオーディオから童謡が流れる。
「奏のCDが入れっぱなしだった」
幸太郎さんは慌ててボリュームをゼロにした。
「別に良いですよ」
「そうですか?」
「気分が和みます」
私がそう言うと、幸太郎さんはまたボリュームをさっきより少し落としたくらいにまで戻した。
「親父はね、小さい頃いじめられっこだったんですよ」
それから幸太郎さんは、ぽつぽつとマイケルさんのことを話し始めた。
「喘息持ちだった親父は小さくてひょろっひょろで、そばかすだらけね、目だけが光ってるような子供だったんですよ。
『お前の顔は日本人離れしてるんじゃなくて、人間離れしている』
よくそう言われていたそうです。
気弱な親父は、3つ年上の姉、嫁の母親の絵美奈と、後に嫁の父親になる幼なじみの紀文(のりふみ)以外とは口も利けないようなそんな子だったそうです。
そんな親父は現実ではない世界、本やアニメなどに逃げ場を求めました」
マイケルさんがいじめられっこだったなんて信じられないな。でも、昔はハーフということだけでいじめられることもあったみたいだし。ただ、本やアニメが好きなことは別に悪いことじゃないんじゃない? 逃げるって、何かヤな言い方だな。そう思ったけど、私は口を差し挟まずに幸太郎さんの話の続きを聞いた。
「思春期を迎えてみるみるその容姿が整っても、親父の心は小さないじめられっこのままだったんです。
ちょうどそのころ、タイミング良くというのか悪くというのか、祖父の事業が成功し、櫟原は飛躍的な成長を遂げました。甘いマスクと、大会社の御曹司というステータス。
幼い頃とは打って変わってモテるようになった事に一番ついて行けなかったのは、当の親父自身でした。
大体、そういうのは本当に親父の外見だとか地位だとかに惹かれている者が大半でしたから、親父も適当にあしらっていたのですが、一人だけ、華子さんという女性だけは違っていました。
ちょうど生みの母を失ったばかりの親父の心をしっかり支えてくれる優しい女性で、親父は真剣に結婚を考えていたようです。
しかし、妻の死をきっかけに一層仕事人間と化してしまった祖父は次々に事業を拡げ、二人は会うこともままならぬようになっていきました」
やっぱり、そんな人いたんだ。そうよね、外見だけを見る人ばかりじゃないもの。そうは思っても、私は胸の奥の方がちょっぴり痛かった。
「そして、ある日突然、華子さんは別れを切り出しました。
『もう待つだけの日々はいやだ。自分だけを見てくれる人の所にいく』
と。もちろん、親父だって止めました。
『もう少し待ってほしい。今の仕事が片づいたら父親に話すから』
と。でも、華子さんから返ってきたのは、
『あんたその年で「ビューティー戦士ムーンレディ」だって? キモいよ。あんたがお金持ちだと思って私、今まで何とか合わせてたけど、もう限界。オタクのお守りなんてもうコリゴリだわ』
という、今までの優しい彼女からは考えられない手のひらを返したような言葉でした」
「ひどいっ、その人マイケルさんのこと騙してたの!」
あきれた、お金目当てだなんて最低っ!
「その言葉に傷ついた親父は華子さんと別れ、祖父と共に仕事三昧の日々を送るようになったのです。
実はその頃、さる代議士のお嬢さんが親父を気に入り、華子さんに身を引くように強要していたこと。華子さんもその方が親父のためになると自分から身を引いたことが判るのはずっと後の話です。
結局、親父はその代議士の娘との縁談もゲイだと偽のカミングアウトをして自分の殻に閉じこもってしまいますが」
……なんて、寂しい話なのかしら。それじゃぁ、結婚もできないよね。ん? で、でもちょっと待って? その話って……
「映画化された『コーラルブルー』じゃないですか」
確かに原作はマイケルさんだけど、それ小説じゃないですか。
「ええ、親父(主人公の圭のように)は死んでないし、本当はゲイではなく、自分のオタク趣味を誇張して相手を引かせて破談に持ち込んだり、代議士ではなく、銀行の頭取のお孫さんだったり。人物が特定されないように巧く脚色されてますが、これ親父の実話から生まれた作品です。親父は華子さんに謝罪の意味も込めて、あの時彼女がどんな気持ちでいたのかを、彼女の気持ちになりきって書いたものなんですよ」
「華子さん、文句言ってこなかったですか」
自分がネタにされて。
「『ありがとうと』言ってくれたそうですよ。今更だけど、相手にバレないかと心配もしてくれたそうです」
ホントに優しいいい人だったのね。
「それで元の鞘には収まらなかったんですか」
「事の真相を聞いたのが、華子さんの(もちろん別の男性との)結婚式ですからね。親父が『コーラルブルー』を発売したのがその18年後です」
そ、それじゃムリだね。
「その……それじゃ華子さんはともかく、頭取さんがなんか言ってこないんですか?」
「あれから25年以上経つんです。頭取はもうとうに引退されておられるし、当のお嬢さんも別の方と結婚して久しいですし、自分だと特定される要素がなければ敢えて『藪から蛇』を突っつき出したりしませんよ」
そんなものかしら。あれは自分のことなのよなんて、ミーハーにいえる種のエピソードじゃないけどね。
「着きましたよ」
そうして、マイケルさんの昔話をしている間に、私たちはマイケルさんが運ばれたという病院に着いた。無事でいてほしいな。私は玄関の前でゴクリと唾を飲み込んだ。私の表情をまじまじと見た幸太郎さんは、
「ああ、お連れして良かった。
すいません、怒らないでくださいね。
シャイで不器用な親父がああまでしてきっかけをつかもうとしたんです。息子としては是が非でも今度は成就してやりたいと思うじゃないですか。
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